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*「訪問者」 恩田陸三年前、近くの湖で不審な死を遂げた朝霞千沙子と、千沙子に育てられた映画監督峠昌彦の急死、ふたつの死に係る謎。嵐に閉ざされた山荘と死体。 警告文にあった真の訪問者はいったい誰なのか。 すごく恩田さんらしい作品というか、珍しく最後まで破綻なく読み切れた作品というか、サクサクっと読める仕上がりになっている。 まるで舞台劇を観ているような感覚に陥る部分もあって、玄関のベルが鳴る度に洋館にいる者たちの間に起こる不安感、これはどこかでと考えてみたら美内すずえの『ガラスの仮面』に出てくる舞台だと思い至る。五つのつぼ、次々と訪れる訪問者とマヤ演じるジーナの話だったような。 緊張と弛緩、恩田さんのこの作品も緩急のつけ方が上手くて、引きの強さに手を引かれいっきに読んでしまった。 軽めのミステリーを読みたいときにはいいと思う。 2009年7月5日読了 *「ブラザー・サン シスター・ムーン」 恩田 陸3人の登場人物がそれぞれの視点で自分達の大学生活を振り返る本作。4年間が社会へ出る前の猶予期間、インターバルであることを彼らは充分にわかっている。もちろんそれなりの不安はあるし、苛立ちのようなものもないわけではない。 とはいえ、繊細な脆さは高校時代を描いた作品より薄まっているようにみえた。ひとり社会の大海へ泳ぎ出す距離が、実感として測れるほどに近くに迫っているからなのだろうか。夢想より現実感が増していく。リアルさをどこかで受け入れつつある、もう子どもじゃいられない。 青春小説である。でも、『夜のピクニック』の香りを期待して読むと、肩透かしをくらった気分になるのではと思う。 ねえ、覚えてる? 空から蛇が落ちてきたあの夏の日のことを―― *「不連続の世界」 恩田 陸そういえばこの本に先立って読んだ恩田さんの本のタイトルが『きのうの世界』だった。意識して選んだわけではないが、世界続きになった。世界シリーズじゃん!内容はまったく関連性がないものの、妙な符合の一致が面白かった。 不連続の世界に戻ろう。 ちょっと不思議だな、怖いよね、なんだろう、気にかかる、目の前に転がってきたささやかな謎。遣り過ごしてもいい、踏みつけてもかまわない(痛い〜)、手に取るかは自分次第。命や生活を脅かす切迫した問題ではないが、多聞は拾ってみる。 この多聞という男の在り様が面白い。周りの人物評を借りると、彼は開かれた状態であり、世間のどこにも属さない、通り過ぎるだけの人間ということなのだ。この特異性が発揮されたのが『月の裏側』だろうか。といっても音楽ディレクターという生業をこなし、社会にもちゃんと適合している。どこか飄々とし、表面的には窺い知ることのできない、多聞の特異な色が物語りに潜む怖さと調和している。 五つの短篇はどれも外れなしで、面白かった。恩田さんの短篇というと、長編の為の習作みたいな位置にある作品もあるが、本書はみっちりとした短篇が並んでいる。 度々名前があがる『月の裏側』は、多聞初お目見えの作品であるが、未読でもまったく問題はない。前後がどちらになったとしても、両方合わせて読むとなおよしである。ひたひたと沁み込んでくる恐怖、物語に浸透する水分量の多さが好きなので、『月の裏側』はお薦めしたい作品ではある。 *「木洩れ日に泳ぐ魚」 恩田 陸木洩れ日に泳ぐ魚 恩田 陸 単行本: 263ページ 中央公論新社 (2007/07) 魚のように水の中を泳ぎたい。どんなにか気持ちがいいだろう。押し寄せる夏の熱気が肌にまとわりつくのが煩わしい。本を手にした時、これはきっと涼やかな話に違いないと思っていた。水を欲する魚のような気分のいま読むにはうってうけの本、だろうと。 (恩田さんの本にさわかや系ってあったっけ?) 一組の男女が迎えた最後の夜。明らかにされなければならない、ある男の死。それはすべて、あの旅から始まった――。運命と記憶、愛と葛藤が絡み合う、恩田陸の新たな世界 *「蒲公英草紙―常野物語」 恩田 陸蒲公英草紙―常野物語 恩田 陸 文庫: 273ページ 出版社: 集英社 (2008/5/20) 恩田陸を読もう!と前に読書目標に掲げたことがあるが、自分への掛け声だけでさっぱり進んでいない。久しぶりの恩田本は常野の人々を描いた「蒲公英草紙」である。文庫の表紙に一目惚れだった。黄色く染まった蒲公英野原がどこまでも続いている。子供の頃、こんな風景はどこにでもあった。あの夏の日の、あの季節だけの、こそばゆく眩しい時間。いまは記憶の中にだけ存在する。 にゅう・せんちゅりぃへと船を漕ぎ出そうとする時に感じる期待と不安。蒲公英草紙を紡ぐ峰子の脳裏に去来するひと夏の出来事。それはお屋敷の聡子様と不思議な能力を持つ春田一家の物語だった。 懐かしく切ない傑作ファンタジー *「黒と茶の幻想」 恩田陸黒と茶の幻想 (上)黒と茶の幻想 (下) 恩田 陸 彰彦が提案した旅のテーマは『非日常』 学生時代の仲間である彰彦、節子、蒔生、梨枝子の四人は、Y島へと向う。日常を離れ、美しき謎と過去を思索する旅。四十歳を目前に控える彼らの記憶には、いまだ消えずに残るひとりの女性がいた。硬質で、人形のような美しさを持つ梶原憂理。 過去に置き去りにされていた謎がひとつ、またひとつと目を覚ます。Y島のホテルで、J杉のある山深い森の中で、四人の奥深くに眠っていた謎の戒めが綻び、真実が過去と現在を結び合わせていく。 やがてくる旅の終わり。しかしいま旅は始まったばかりだ。彼らは森に向う。Y島の森、我が身に抱える自分さえすべてを知る由もない深い深い森へと。 *恩田陸を読もう!タイトルは恩田陸を読もう!自分、とう意味あいです。 恩田陸は好きな作家さん。ただ、読んだ本となるとまだまだヒヨコの領域。 それで作品発表年代順に読もうと考えていたのだけど、 や〜めた! 文庫はほとんど購入してあるとはいえ、単行本は図書館頼み。 されど人気者の恩田陸、借りる順番待ちも大変そうではありませんか。 なので気ままに、読みたい本をつまみ食いの感覚で読んでみることに。 この記事の内容は既読本の感想にリンクさせたりして適時更新。 以下は作品リスト。たくさんあるな〜 *「チョコレートコスモス」 恩田陸恩田 陸 文句なく面白かった!!!(点数評価をしていないので、す・ご・い、という気持ちを込めて感嘆符みっつ付けてみた) 頭の先から尻尾の最後まで、しっかり餡の詰まった鯛焼きのようだ。たまに尻尾まで餡子が入り切っていないことがある。途中までは興奮するくらい面白いのに、最後にきて失速したり、終わりがドタバタと性急だったり。それまでが面白いだけに、喰い足りなさは、読み足りなさに繋がる。 この本は最後まで美味しい。いや、面白い。 *「黄昏の百合の骨」恩田 陸 周りから密やかに『魔女の家』と囁かれる洋館白百合荘。水野理瀬は亡くなった祖母の遺言を果たすため、留学先のイギリスから戻ってくる。残された遺言は、自分が死んでも理瀬が半年以上ここに住まない限り、家は処分してはならないというもの。祖母が意図したこととは何か。 洋館に咲く濃密な百合の香り、同居する義理のおば梨南子と梨耶子姉妹、洋館の二階に住む妖精の話、猫の死、少年の失踪、物語上に点在する複数の謎。中でもとりわけ重要な謎と思われるのがジュピター。果たしてジュピターとは何を意味するのか。 *「麦の海に沈む果実」 恩田陸麦の海に沈む果実 恩田 陸 これは、私が古い革のトランクを取り戻すまでの物語である。 北の大地の東、国内最大級の湿原が広がる。灰色の風景の中、水野理瀬を乗せた列車は走り続ける。向う先にあるのは、もとは修道院だった全寮制の学園。 湿原の中の要塞を思わせる青の丘にあるその学園に、理瀬は二月最後の日の転入生として足を踏み入れる。 二月最後の日にやって来た転入生。学園の生徒達にとってそのことの意味は大きい。 何故なら此処は「三月の国」、三月以外の転入生は破滅をもたらすといわれているからだった。 | 1/2PAGES | >>
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