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*「僕たちは歩かない」 古川日出男近年の作品を読んだことがなかったので、古川さんといえば濃密な文章が紡ぎ出す豊饒な物語性を持つ作家というイメージがあった。おいおい順番に作品を読んでいきたいと思っていたのだけど、図書館に行ったらたまたまこの本があった。こんな嬉しい偶然は逃す手はない。 22時22分22秒、雪。終電は僕たちを乗せ、走り出す。世界が化石になる前に、“あちら側”にたどりつけ。疾走する言語と肉体、遊戯する物語。古川日出男の新境地意欲作。 *「沈黙」 古川日出男沈黙 古川 日出男 沈黙、そうだ本のタイトルは沈黙だったと突然のように思ったのは、読み終えて少し間を置いてからだった。唐突に沈黙という言葉が肥大する。何故沈黙なんだ? ルコと称される音楽を追い求めて膨大なレコードを蒐集し、「音楽の死」と題された11冊のノートを遺して逝った大瀧修一郎。遺されたレコードとノートの迷宮に深く沈潜し、修一郎の痕跡を辿りながら徐々にルコと重なり合っていく秋山薫子は、やがて根源的な悪である人間の闇と対峙することになる。 デビュー作『13』では色彩を、2作目となる本書では音楽を、3作目の『アビシニアン』では(未読だが)文字が鍵となるらしい。 膨大なレコードに針を落とす薫子の周りにはいつも音が満ちていたが、物語の中ですっと沈黙の時が降りた場面があったことを思い出す。 *「13」 古川日出男13 古川 日出男 まず読み始める前に本のページをパラパラと捲ってみた。空間を埋め尽くす文字が視覚を威圧する。本を見開きにするとちょうどこんなふうに、■■、整然と並ぶ文字列が左右に四角い塊として目に映る。はぁ、これを読むのか。400字詰め原稿枚数1111枚。最初は読んでも読んでもページが進まない。 迷宮に迷い込んでしまったのか。 それはある意味当たっている。溢れる言葉と描写の緻密さ。言葉の向こうに作者が意図した世界が広がっていく。本書は作者のデビュー作だという。『アラビアの夜の種族』を読んだ時に感じた、独自の世界観を生み出す濃密な描写力というのは、デビュー作にしてすでにあったのかと驚く。 作者古川日出男は書き続けている。最近の作品はまだ読んだことがないので、その後の変遷はわからない。現時点ではとにかく濃密、濃いという印象の作家だ。読んだのが2作品とも長編だったせいもあるけど、読むには体力、気力のある時にじゃないと力負けしそうだ。 本の内容はというと、神を映像に収めることに成功したという男の話だ。 あれ、珍しく短い内容紹介になってしまったか。でも、不可視の存在である神を映像に、ということは“神が視える”ということだ。それだけで読んでみようかなという気にさせられる、でしょ? *「アラビアの夜の種族」 古川 日出男〈1〉〈2〉〈3〉 古川 日出男 聖遷暦1213年のエジプト。読む者を捕らえて離さず破滅に導くという奇書『災厄の書』を探し出したことを、奴隷アイユーブは主人のイスマーイール・ベイに告げる。ナポレオンのエジプト侵攻を食い止めるため、その本をナポレオンの元へ送ろうというのだ。 カイロの片隅で、夜ごと語り部ズームルッドによって語られる物語は、能書家によって書き写され、美しい写本となっていった。 物語は聴きたいと願う者の前に姿を現す。夜の帳の奥深く、夜ごと語られる物語。語る者と聴く者、夜の種族である彼らの中で物語は命を与えられる。 第55回日本作家推理協会賞及び第23回日本SF大賞受賞。 連日の暑さにはいささか辟易しないわけではない。それでも文句と愚痴を百万語並べるよりは(誰に対して?)、灼熱の暑さが覆う砂漠の物語を読むにはうってつけとばかり、本書に没入したのはよかったかもしれない。50度の暑さに比べれば涼しいくらいだろう。 う〜ん、いやそうでもなかったかな。やっぱり暑いです(笑) ちょうど休みだったので週末いっき読み。 溢れるばかりの言葉の豊饒、流砂のように形を変える極彩色なイメージの氾濫。文章の濃密さに圧倒されつつ、その濃ゆさの連続に途中食傷気味な感じもあったけど、物語性の力とでもいうのだろうか、なんとか最後まで飽かず読み切った。 | 1/1PAGES |
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