本や映画の感想、日々の雑感などを徒然に書いております
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*「ナイロビの蜂」

ナイロビの蜂〈上〉ナイロビの蜂〈下〉
ナイロビの蜂〈上〉ナイロビの蜂〈下〉
ジョン ル・カレ
ナイロビの英国高等弁務官事務所に勤める外交官ジャスティンは、庭いじりをこよなく愛する中年男だ。礼儀正しく誠実な人柄で知られている。そんな彼のもとに、突然、最愛の妻テッサが、咽喉を掻き切られて全裸で発見されたという知らせが飛びこんだ。人類学者リチャード・リーキーの発掘現場に向かう車中で、何者かに襲われたのだ。静かな怒りとともにジャスティンは、真相解明に立ちあがる。
(「BOOK」データベースより)


本書の原題「THE CONSTANT GARDENER」は、いつも変わらず穏やかでガーデニングをこよなく愛する、主人公ジャスティンの人となりを端的に表していると思う。「ナイロビの蜂」のほうはといえば、読んでみるとその意味が実によくわかる。とても象徴的だ。

およそ怒りや激情とは無縁のジャスティン・クエイル。彼の若き妻テッサは怖れを知らず、信念の為にはどんな行動をすることも辞さない情熱的な女性。
事件の残虐性、奔放なテッサの行動が憶測を呼び、同行者であったアフリカ人医師とのスキャンダルまでも飛び出すが、ジャスティンのテッサへの絶対的信頼は揺るがない。これが見事なまでに揺るがない。騒動の渦中でじっと静かに時を待つ。
ジャスティンが警察官の尋問に答えて語る二人の出会いは印象深い。二人の気持ちが結びつくまでの描写がいい。というか好き。
ジャスティンは代理を勤めた講義で、聴講者のテッサに出会う。若く美しく攻撃的な彼女の質問と応酬するジャスティン、他の聴講者とのバランス関係の変化。熟練した外交官としての巧みな応酬で優位に立つものの、逆に窮地に落ちることになったテッサを庇う。「あなたはわたしを守ってくれた。これからもずっと守ってくれる?」というテッサの問いに、きっと最善を尽くすと答えたジャスティン。食事をしながらの何気ない二人の会話だ。妻を失った時、ジャスティンは彼女を守ってやれなかったこと、一緒に住みながら互いの領分へ分け入らない、距離を置いていたことを後悔する。

テッサの旅の目的はなんだったのか。
彼女が追求しようとしていたこととは。
ジャスティンは残された文書、パソコンのデータから謎を探り始める。そこに見え始めたのは巨大製薬企業が絡む陰謀だった。静のジャスティンが動へと転じ、世界各地にテッサの足跡を辿りながら、陰謀を解き明かさんとするあたりのサスペンスは、読んでいてぐいぐい引き込まれる。

アフリカを舞台とした製薬市場の恐るべき現実を追求していくジャスティンの旅は、テッサとの距離を埋める旅、彼女を失った喪失感が深い愛に満たされていく旅でもあった。
個人を越えたところにある企業の利益追求に潜む巨悪と、限りなく個人に属する愛が二重奏のようになってストーリーが進む。この部分が見事に調和している。
最後にジャスティンは妻終焉の地で、完全に彼女の運命を、そして愛を理解し、二人はひとつになる。彼が見た光景とは。

内容としてはかなり重いテーマを扱っている。
試験薬の人体実験、本国では認可されない薬が売られたり、高額であったり、命に係るものが市場論理で動く実態。
ラブストーリーとしても向えた結末はかなり重い。重いが命を賭してまでの愛は長く余韻が残りそうだ。

(5月12日読了)
| 推理・ホラー・冒険 | 22:42 | comments(4) | trackbacks(4) | | |

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♯ コメント

うわ、雪芽さん、しっかりと原作も読まれたのですね。

原題は「THE CONSTANT GARDENER」ですか〜!意外な感じがしましたが・・そういう意味だったのですね。
雪芽さんのレビュー読んで、ますます読みたくなりました。
映画を先に見ようかな・・最近シネコンは回転(?)早いですからね〜(苦笑)

サスペンスとラブストーリーが上手く調和しているようですね、楽しみです。

| 瞳 | 2006/05/15 6:06 PM |
瞳さん、こんばんは。

そうなんです、アカデミー賞授賞式を観ていて、
この映画の主演がレイフと知り、公開前に読もうと買ったはいいけど、積読本になっいて、慌てて読みました。
本は映画とは違った面白さでしたよ。
映画はさっさと観に行かないと観そびれてしまうことが多くて、気づいたら終わってる^^;

| 雪芽 | 2006/05/15 10:59 PM |
こんばんは。初めまして。
弊ブログへのトラックバック、ありがとうございました。
こちらからもコメントとトラックバックのお返しを失礼致します。

僕はジョン・ル・カレ氏の作品を初めて読ませて頂きましたが、時間の限られた映像作品以上に登場人物や社会的な背景などに一層の深みを感じさせられた長篇小説でした。
そして、J.L.カレ氏の他作品も読んでみたいと思っております。

また遊びに来させて頂きます。
今度共、よろしくお願い致します。
ではまた。
| たろ | 2006/05/16 10:43 PM |
たろさんお越し頂いてありがとうございます。
私もル・カレさんの小説を読むのはこの作品が初です。
他の作品も面白そうですよね。
小説では夫婦としての関係性も、無き妻の残した謎を追っていく過程、社会背景、人間関係まで、長編な分充分に筆を尽くして書かれていたように思いました。
小説と映画の一番の違いとして感じたのは、異性のことも含めてジャスティンのテッサに対する信頼度かなって。
信頼といういい意味での無関心、距離を埋める、それがジャスティンのあの行動に繋がったかもしれません。

たろさん、また遊びにいらして下さると嬉しいです。
こちらこそどうぞよろしくお願いします。
| 雪芽 | 2006/05/17 9:13 PM |

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♯ トラックバック

???Τ??? ???
こんばんは。 一日雨降りの火曜日です。 今日は本について。 『 ナイロビの蜂 ( THE CONSTANT GARDENER ) 』 ジョン・ル・カレ ( JOHN le CARRE ) 加賀山  卓朗 訳 ( 文庫本 ‘03年 (株)集英社 ) ナイロビの英国高等弁務官
| ** Paradise Garage ** | 2006/05/16 9:05 PM |
ナイロビの蜂
なかなか見応えのある作品ではあったと思います。けれど、評判のような傑作かということになると疑問も少々...。 英国外務省の一等書記官、ジャスティンは、スラムの医療設備の改善に取り組む仕事の関係で、ナイロビの空港からロキに向かう妻のテッサを見送ります
| 日っ歩〜美味しいもの、映画、子育て...の日々〜 | 2006/05/20 8:18 AM |
ナイロビの蜂
 この作品を、妻の死にまつわる疑惑を調査する社会派サスペンスとみるか、亡き妻との思いを綴る恋愛映画とみるか、見解は分れるでしょう。  自分は
| シネクリシェ | 2006/05/27 7:51 AM |
映画のご紹介(133) ナイロビの蜂
ヒューマン=ブラック・ボックス -映画のご紹介(133) ナイロビの蜂-「きっかけは、妻の死」 「たどり着いたのは、妻の愛」 とは名キャッチだね。 原題はThe constant gardener(「いつも庭いじりしている人」みたいな
| ヒューマン=ブラック・ボックス | 2006/05/27 8:01 AM |
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