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*水曜の朝、午前三時

水曜の朝、午前三時
蓮見 圭一
翻訳家であり名の知れた詩人でもあった物語の主人公四条直美は、一九九二年の秋、癌で亡くなった。四十五歳の若さだった。彼女は娘のために四本のテープを残す。そこで語られているのは、砕け散ったひとつの恋、もしかしたらありえたかもしれない、もう一つの人生へのせつなくなるような想いだった。

時代は一九七〇年、大阪万博のあった年だ。直美は反対する親と許婚を残して、万博のホステスとして大阪へ旅立つ。そこで運命の人、臼井に出会うのだ。二十三歳だった。
若き日の直美と病棟で過ごす四十五歳の直美が交互に描かれていく。
この主人公の直美を受け入れられるかどうかは、好みが分かれるかもしれない。幼い頃から優秀で自信家であり、自分の意思を貫きながら生きる女性。母となってからも彼女にはお酒とタバコの匂いがつきまとった。いわゆる型にはまった女性ではない。
意志が強く、沸き立つ感情が行動に結びつく人である。
強い人、なのだろうか。
傷つくことを恐れてただ幸運が巡ってくるのを待っている、そんな彼女ではない。チャンスを得るには痛みの危険も覚悟しなければと思っている。
闘病生活の中で直美はある時夫に退院を願う。幼くして死んでいく子供たち、嘆きに耐える親の姿、彼女は胸が掻きむしられる思いから、退院を願ったのだ。でも、「そのほうが楽だというのなら」という夫の言葉を反芻する。そして過去、目先の苦しみから逃れようとしたことが、後に自分を苦しめていると思いその場に踏み止まるのだ。
強くみえる直美の心の内には、脆さが同居しているように思えてならなかった。あえて強風に顔を向けて歩いていくような姿がそこにある。

相手が好ましいだけの理由では好きにならない。それ以上のものを求めていた直美は、同じく万博の仕事に携わる臼井と出会う。
臼井はどことなく他人と一線を引いているような人だった。それは彼が抱えるものに原因するのだろうと、後になってわかる。激しく惹かれ合った二人だけど、関係は唐突に終わりを向える。ほんと突然なんだもの。恋の絶頂期に昇りつめたと思ったら急降下するこの展開、その訳にはびっくり。

差別には怖れの感情が潜むことを、ホラー小説として見事に描いてみせた作品に、小野不由美の『魔性の子』があった。本作品で書かれている差別はもっと社会性を帯びている。恋愛においての枷として個人が背景に抱えるものを、それが容易な問題でないとして、果たして越えられるか。考えさせられた。

もしかしたらありえたかもしれない、もう一つの人生。どこかで間違った道を選んでいることなんてたくさんあり過ぎるだろうと思う自分。なにしろ方向オンチだからなぁ。
もう一つの人生では一緒にいたかもしれない臼井を思い、直美が呟く言葉がせつなく響く。その言葉に込められた気持ち、どれほど恋しい人だったのだろう。テープはそこで終わる。

文章は淡々としている。読みながら泣けるということもなかった。けれども読み終わり時が立つにつれ、直美の言葉、生きることや自分の想いにひたむきだった姿が、じんわりと効いてくる。
感じる恋愛小説ではなく、考えさせられる恋愛小説だった。
図書館で借りたのは単行本だが、文庫にもなっている。実は本屋で文庫が山積になっていて、買おうか迷ったのだ。先週図書館に行ったら折り良く見つけたので借りて読んだ。こういうのは嬉しい。

小説の舞台となっている大阪はちょうど去年行った土地でもある。直美が歩いたように、私も友人に案内してもらって大阪の街を歩いた。お勧めはされなかったけれど通天閣にも行った。本を読みながらあの時の空気を懐かしく思い出していた。

(2006年5月31日読了)
| ■は行の作家■ | 21:00 | comments(2) | trackbacks(1) | | |

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♯ コメント

雪芽さんこんにちは。
はじめての作家さんって誰が読んでいるのかよくわからないですね〜。TBありがとうございました。
>感じる恋愛小説ではなく、考えさせられる恋愛小説だった。
ほーんと、確かにそうですね。色々と考えて、結局単純に直美のように行動的に、でも後悔しないように生きていこうと考えたのであった・・・(なぜか語り口調)
大阪近くなりましたが、なかなか行く気になれないんですよ。。。でも京都はまあまあよく行ってます!!
| やぎっちょ | 2007/09/18 7:11 PM |
やぎっちょさん、こんばんは。
考えることも大事だけど、動かなければ始まらないですものね。
一歩を踏み出すのって躊躇してしまうことも。
怖さとか、緊張とか、いろいろ。
でも、後悔のないように生きなくちゃって、
そんなことをこの本を読むと強く思いますね。

京都によく行かれるんですか。
わあ、いいなぁ。過去の歴史を重ね合わせながら、
京都の路、路を歩いてみたいものです。
北海道からはかなり遠くて。
あ、行動行動、だった。
| 雪芽 | 2007/09/18 11:02 PM |

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