本や映画の感想、日々の雑感などを徒然に書いております
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*「アヒルと鴨のコインロッカー」

「一緒に本屋を襲わないか」
大学生活を前に、引っ越し先のアパートの隣人川崎から、椎名は本屋襲撃の手伝いを頼まれる。目的は一冊の広辞苑。
隣人からのなんとも奇妙な申し出に戸惑う椎名。そこには二年前から続くある物語が隠されていた。ふとしたきっかけから物語に迷い込んだ椎名は、かくしてモデルガンを手に本屋の裏口に立つのだった。
現在と二年前を描いた章が交互に進行していく。現在1を読むと現在2が読みたくなり、現在2の前には二年前1があって続きの二年前2が読みたくなる。というわけで読み出すと自然と先へ先へと読み続けたくなる。上手い具合に出来ていると感心。
現在の章に出てくるのは大学生になったばかりの椎名、本屋襲撃を誘ったアパートの隣人川崎。
二年前の章に出てくるのはペットショップに勤める琴美と、彼女と同居しているブータン人のドルジ、琴美の元彼川崎。
終盤、二年前に起こった出来事が現在と結びついた時、思わず最初に戻って、本屋を襲わないかという川崎と椎名の遣り取りを読み返してみる。知るということは、同じひとつの風景に違う光があたること。
落として粉々に散った硝子のコップ。散らばった破片が逆スローモーションで再生されていく映像をみるようだった。コップには溢れるばかりに、せつなさを秘めた物語が満たされている。散りばめられた伏線が見事に繋がっていく、これは作者伊坂幸太郎の得意とするところなのだろうか。
読み終わって、琴美とドルジ、そして川崎の三人がとてもやるせなく思えてしまった。
三人の物語に絡む、動物虐待という陰惨な事件が持つざらついた感覚が、異物のように喉の奥で引っかかって消えない。昔の人が闇に対して感じていた恐怖、畏怖といったものを失ったといわれる現代社会で、生身の人間の奥に潜む闇がとって変わったように顕在化してくる。闇が深い。

「神様を閉じ込めに行かないか?」
そうか、タイトルにはそういう意味があるのね。(これは読まねばわからない。気になる人は一読を)
それにしても最後まさか彼までが。そんなあっけなく逝っていいのか。いいのか、いいのか、いいのか……(リフレインしちゃうよ、もう)
結末はやるせなくあるが、それだけでなく風が吹き抜けるような印象も残った作品だった。なにも物語の中でボブ・ディランの『風に吹かれて』が鳴っていたから、ではない。ドルジを通じて度々語られるブータン人の死生観のせいかと思う。
本当に信じていいんだろうな、ドルジ?不安と願望の入り混じった川崎の言葉が宙を漂っている。

オマケ
現代と二年前、共通して出てくるペットショップの店長麗子。バスの中で啖呵をきる姿が気持ちよかった。
ちょっと優柔不断なところのある頼りなさげな椎名君、彼と『陽気なギャングが地球を回す』の登場人物との繋がりもわかって、こんなところは同じ作者によるちょとしたお楽しみで嬉しかった。

(2006年6月8日読了)
| 伊坂幸太郎 | 21:40 | comments(8) | trackbacks(7) | | |

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♯ コメント

雪芽さん、こんにちわ。
雪芽さんの感想を読んで、この作品を読んだときに気持ちが鮮やかによみがえりました。
とにかくひたすら哀しいという気持ちを覚えていたのですが、
>それだけでなく風が吹き抜けるような印象も残った作品だった。
そうなんです!それ、それがありました。それがまたやるせないんですけどね。
リフレインしちゃう気持ちわかります(しみじみ)。
| june | 2006/06/11 11:32 AM |
juneさん、こんばんは〜
登場人物の会話とか、本屋を襲撃なんて突拍子もないこととか、表面的には明るい色調なんですけどね。
だから最後に来て余計哀しさが感じられたのかな。
哀しい余韻は残りますけど、この感じは好きですねぇ。
伊坂さんの本はまだほとんど手付かずだから、
他の作品も読むのか楽しみ!
| 雪芽 | 2006/06/11 8:07 PM |
雪芽さん こんにちは
雪芽さんの感想を読んでトライしてみました!
読後感の感触?は同じような気持ちになりましたよ!でも・・・琴美がキライでした。ドルジがかわいそうだっ!!
(何言ってるのかわからないと思いますので、よければ本文のほう読んでくださいね)
河崎はいいキャラでとってもスキだったけど、残念な感じでしたね。伊坂さんの微妙な交錯点でつながりを持たせながらストーリーを進める感じが読者にとっても優しいなと感じた一冊でした!
| やぎっちょ | 2006/07/09 6:00 PM |
やぎっちょさん。
あ、そうなんですか、この感想を読んで?
それは嬉しいです。
琴美嫌われてる〜^^;
過去と現在ふたつの世界がひとつに重なって、
ひとつの物語になった時、いっきに焦点が合って、
その瞬間が目が覚めるようでした。

| 雪芽 | 2006/07/10 12:52 AM |
椎名君は「陽気なギャング〜」にもなにか関わりがあるんですね!?とっても楽しみです。
次はなにを読もうかなと思っていたので。
読後はなんだか寂しい気持ちになりました。2年後になにも知らない椎名が生きてる、この現在に、、その2年前にはなにも悪いことしてない子がいなくなって、別に椎名が悪いわけではないけど、その無念さが寂しかったです。
| じゃじゃまま | 2007/09/06 11:28 AM |
じゃじゃままさん、お返事遅くなりすみません。
椎名君、「陽気なギャング〜」に出てきますよ!
伊坂さんの作品はそんなことがちらほらあるようですが、私も未読が多いのでこれからのお楽しみなんです。
遣り切れない、不条理な過去の出来事ですね。
平行して語られる時間が繋がった時、なんともいえない痛ましさを感じました。
どの登場人物の視点で物語を読むかによっても、受け止め方が違うでしょうね。
| 雪芽 | 2007/09/08 9:00 PM |
雪芽さん、こんばんは(^^)。
なんか、非常に納得のいかない終わりというか・・・。
なんかね〜、琴美が、ダメだぁ〜!!
チンピラな若者に捨て台詞吐くな!襲われたら警察行け!車の前に飛び出すな!
2年前と現在が交錯して、ピタッとおさまる物語構成は、すごく良かったんですが。
| 水無月・R | 2008/01/15 11:00 PM |
水無月・Rさん、こんばんは。
琴美がダメっていうのはやぎっちょさんと同じですねぇ。
彼女の行動はどうもな、と思っちゃいますよ。
納得出来ない、すっきり収まらない、心に引っ掛かりが残ってしまう。
だから余計いつまでも忘れられない作品になっています。
物語の構成力には唸りました。上手いですよね。
| 雪芽 | 2008/01/17 10:36 PM |

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アヒルと鴨のコインロッカー
アヒルと鴨のコインロッカー 現実感のない登場人物たち、そこで交わされる現実感のない会話・・。なのにぐいぐい引き込まれてしまいました。2年前と現在の話が交互に語られるのですが、現在の語り手である「僕」の視点で、現実味がないのに妙に魅力的なキャラクター
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| 日々是 もりちえ | 2006/06/15 4:45 PM |
アヒルと鴨のコインロッカー 伊坂幸太郎
アヒルと鴨のコインロッカー ■やぎっちょコメント これは、ミステリーと読んでいいのかな?? 伊坂さんの謎って、この本に限らず、 「一緒に物語を進んでいけばひとつひとつわかりますからね」 的なテンポがスキです。 「さあ、どうよ、君どこら辺でわかるよ」
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アヒルと鴨のコインロッカー 作者: 伊坂 幸太郎 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2003/11/20 メディア: 単行本 アヒルと鴨のコインロッカー大学入学前、引っ越し先のアパートの隣人(かなりの美形)の第一声が「本屋を襲わないか」だった。何も知らなかっ
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| じゃじゃままブックレビュー | 2007/09/06 11:24 AM |
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