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*「黒と茶の幻想」 恩田陸

 黒と茶の幻想 (上) 黒と茶の幻想 (下)
黒と茶の幻想 (上)黒と茶の幻想 (下)
恩田 陸
彰彦が提案した旅のテーマは『非日常』
学生時代の仲間である彰彦、節子、蒔生、梨枝子の四人は、Y島へと向う。日常を離れ、美しき謎と過去を思索する旅。四十歳を目前に控える彼らの記憶には、いまだ消えずに残るひとりの女性がいた。硬質で、人形のような美しさを持つ梶原憂理。

過去に置き去りにされていた謎がひとつ、またひとつと目を覚ます。Y島のホテルで、J杉のある山深い森の中で、四人の奥深くに眠っていた謎の戒めが綻び、真実が過去と現在を結び合わせていく。
やがてくる旅の終わり。しかしいま旅は始まったばかりだ。彼らは森に向う。Y島の森、我が身に抱える自分さえすべてを知る由もない深い深い森へと。
一部・利枝子、二部・彰彦、三部・蒔生、四部・節子と四つのパートに分かれ、章ごとに視点を変えて語られていく。

学生時代からの友人という、気心の知れた仲間ならではの会話の応酬は、よく見掛けるグループ旅行の雰囲気。そこへ他愛もない会話にみせて、相手から言葉を引き出す罠を仕掛けてみたりと、恩田陸の書くこういう会話はやはり面白く読んでしまう。
馬鹿話に笑い転げていた時代があったことが懐かしく思える。

表面的な和やかさの下には、意外と複雑な心理が隠されているのが徐々に明らかにされていく。昔恋人同士だった利枝子と蒔生。ふたりを基点に、各々が抱く感情が絡まり合う。さらに四人だけではなく、彰彦の姉紫織、利枝子の親友だった憂理までもが複雑に係ってくるのだ。
屈折した愛情、というのが読んで思ったこと。
誰かを好きだという思いが、実はその誰かを好きな第三者への間接的な愛情だったりする。この物語に出てくる人間達は、かなり屈折率の高い愛情を意識してか、または無意識に抱いている。
人間なかなか素直に真っ直ぐとはいけないものなんだな。普通そうなんだろうけど、この物語の心理的相関図は、J杉の根のごとく地下で絡まりあっているようだものね。

過去の記憶として登場する梶原憂理は、『麦の海に沈む果実』に登場した少女のその後の姿。彼女が大きく係った出来事が、和気藹々とした雰囲気に潜む緊張感のもとであり、いつ均衡が破られるのかということにも興味引かれながら読んだ。
梶原憂理を巡る謎が、物語を覆う大切な美しき謎であるのだろう。
小ネタの謎ではホテルの三夫人の沈黙の訳はほんわかさ加減が、ホームに立つ紫の着物の夫人に対して展開された節子のメロドラマ的解答は、笑えるという点で好きだった。

彼らの過去から甦った美しき、かつ残酷な謎。
この旅が十年早かったら、森を抜けた彼らの姿はまた違ったものになっていたかもしれない。社会生活という日常に自分の根をしっかりと張る彼らの現在の立ち居地がある。
村上春樹の『海辺のカフカ』での森の存在がそうであったように、森に入り森を抜け出ることは再生の象徴と捕らえてよいのだろうか。本書の場合再生とは、過去を流し去ることではなく、受け入れることの中にこそあったように思うけどどうだろう。

(2006年7月2日読了)
| 恩田陸 | 21:40 | comments(2) | trackbacks(0) | | |

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♯ コメント

おお〜!!雪芽さん、読まれたんですね。
う〜ん、深いなあ、雪芽さんの感想。
>心理的相関図は、J杉の根のごとく地下で絡まりあっているようだものね
うんうん、そうですね、複雑で繊細で、屈折した愛情が絡まっていましたね。
憂理のことで均衡が破られる・・瞬間を思ってドキドキしながら読みましたよ、私も。
節子のメロドラマ的解釈は、ほっとさせてくれるシーンでしたね。こういうふっと笑ってしまうシーンと、ドキドキのシーンの。使い方が上手いですよね。
過去を受け入れての再生・・・消し去ったり否定したりじゃなく、受け入れての再生。そこに深くて力強いものを感じましたね。

| 瞳 | 2006/07/12 11:38 PM |
瞳さん、この本は長いけどいっきに読めてしまいますね。
四人のお喋りは冗長気味のところもあるけど、
たあいもない会話を楽しめてしまうのが恩田さんです。
ドキドキしたり、ふっとした笑いの出るシーンと、
ほんと上手いですよね。
最後に利枝子が本音ともつかない本音を蒔生に言うのを読んで、
土壇場にくると女は強いわと思ってしまいました。

恩田さんの本、次は「像と耳鳴り」にする予定です。
瞳さんのお話にあった曜変天目の話が読みたくて。
お茶に注目ですね
| 雪芽 | 2006/07/13 10:57 PM |

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