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*「ホテルカクタス」 江國香織

ホテルカクタス
ホテルカクタス
江國 香織
ホテルカクタスという名の古いアパートに住む、数字の2ときゅうりと帽子の物語。

ホテルではなくアパート。なのにホテルカクタスと名がついている。その謂れについては明かされない。元は実際ホテルであったのかもしれない。大家さんの酔狂からついた名とも考えられる。風変わりな名。違和感がほんの少し戸口を開く。
ごく小さな中庭があって、たいていそこに黒猫が寝そべっている。玄関ホールの床は黒と白のタイル貼。鉄の蛇腹戸のついたエレベーター。古い外国映画のワンシーンに紛れ込んでしまったかのようだ。
ここはなにか違う。たぶん違っている。
アパートは3階建てで、1階の角には数字の2が、2階の角にはきゅうりが、3階の角には帽子が住んでいて、三人は友達だという。2階のきゅうりの部屋に夜集まって、めいめい飲み物を飲みながら、ひと時を過ごす。
なんだか不思議ではないか?違和感がさらに大きく扉を開けている。2ときゅうりと帽子はほんとうに2ときゅうりと帽子なのか、それとも。そのままでいい。数字の2は2だし、きゅうりはきゅうり、帽子は帽子なんだろう。同じくホテルカクタスの一室に住む住人同士という括りの中で、三人は奇妙な名のアパートの空間に違和感なく溶け込んでいく。

「いつでも手に入る、ということが大事なんだ」と、数字の2は言う。いつでも……、変わることのない安定を好む数字の2らしい言葉。三人が過ごした季節の移ろいと同じく、すべては移ろっていくものだ。手の内に止めたいと願う大切な瞬間も、儚く過去へ飛散してしまう。
三人でいることが自然のことになり、終わりはないように思い、そんなこと考えもせず、忘れていても、気づけば現実として押し迫ってくる。この本は、忘れていることを思い出させてくれる。なにが大切かってことを考えさせてくれる。深刻になり過ぎずにという点もほどよい。
三人を包む時間の流れはとってもゆるやかで、夜更けの静寂を思わせる。静かな独りの時を選んで読むのにぴったりくる。

三人は恋もする。競馬場。夏の旅行もあった。友を持つ喜びも味わう。
「世の中に、不変なるものはないんだ」と、他のふたりより少し長く生きている帽子は知っている。2のような考えを信条としている者もいれば、きゅうりのように何事も気にしない質の者もいる。違う三人が出会って、同じ時を過ごす。移ろいの先で待っているものは。
先の先の曲がりくねった先で、どんちゃん騒ぎする三人がいると想像してみると、それは楽しい光景だ。だけど、はっきりとはわからない。後は野となれ山となれ、未来は帽子の口癖に任せよう。

ページの途中途中にある挿画が素敵!
不思議と言えば、不思議な話だ。だって出てくるのが数字の2、きゅうり、帽子となれば、なに?でしょ。でも、こういう設定は嫌いじゃない。
思い出したことがひとつ。昔読んだ外国の小説のテイストに似ている。その本もシュールな話だったけど、なんというタイトルだったろうか。本の帯に騙されたと読んでみて思ったことだけは記憶している。逆にいいほうへ騙されたと思うこともあるし、だから本読みは止められない。そういう意味でも、実にスリリングでもあるわけだ、読書は。
これも図書館本。

(2006年7月9日読了)
| ■あ行の作家■ | 22:49 | comments(4) | trackbacks(0) | | |

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♯ コメント

雪芽さん、こんばんは(^o^)/
江國さんはこんな本も出されていたんですね。
最近、ぱったりと読まなくなってしまいました。
ゆっくり時間が流れるってわかります。
その感じ、好きです。
後、2ときゅうりと帽子の3人は人間ですか??(^_^;)
シュールだー(笑)
| 弥勒 | 2006/07/11 12:28 AM |
雪芽さん
↑弥勒さんと同じく、最近ぱったり読まなくなりました。
江國さんのワールドも文章も独特ですよね。その中でもこの本はまた違うのかな。
騙される喜びを知ると(?)やはり読書はやめられませんね〜♪
| やぎっちょ | 2006/07/11 1:32 PM |
弥勒さん、こんばんは〜
2ときゅうりと帽子は言葉のまんまだと思うんですよ。
まあ、深いことは気にしない、気にしない(笑)
ゆらゆらと心が揺れる少しだけせつない寓話なんですから。
三人でいるシーンて、や、やっぱり不可思議な図だ。
江國さんてこんな感じなのかなぁ。
それともこれが異色なのかな。
初読みでした。
| 雪芽 | 2006/07/11 11:30 PM |
やぎっちょさん、こんばんは!
江國さんは人気の作家さんなのでしょうね。
現代女性作家の本はほとんど読んでこなかったので、
いまいろんな作家さんに初めましての状態を、
楽しんでいるところです。
この本はファンタジー色が強い作品でした。
これだけでは江國さんのカラーがわからないので、
他のも読んでみましょ、って思ってます。

| 雪芽 | 2006/07/11 11:41 PM |

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