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*「アラビアの夜の種族」 古川 日出男

 アラビアの夜の種族〈1〉 アラビアの夜の種族〈2〉 アラビアの夜の種族〈3〉
〈1〉〈2〉〈3〉
古川 日出男
聖遷暦1213年のエジプト。読む者を捕らえて離さず破滅に導くという奇書『災厄の書』を探し出したことを、奴隷アイユーブは主人のイスマーイール・ベイに告げる。ナポレオンのエジプト侵攻を食い止めるため、その本をナポレオンの元へ送ろうというのだ。
カイロの片隅で、夜ごと語り部ズームルッドによって語られる物語は、能書家によって書き写され、美しい写本となっていった。
物語は聴きたいと願う者の前に姿を現す。夜の帳の奥深く、夜ごと語られる物語。語る者と聴く者、夜の種族である彼らの中で物語は命を与えられる。
第55回日本作家推理協会賞及び第23回日本SF大賞受賞。

連日の暑さにはいささか辟易しないわけではない。それでも文句と愚痴を百万語並べるよりは(誰に対して?)、灼熱の暑さが覆う砂漠の物語を読むにはうってつけとばかり、本書に没入したのはよかったかもしれない。50度の暑さに比べれば涼しいくらいだろう。
う〜ん、いやそうでもなかったかな。やっぱり暑いです(笑)
ちょうど休みだったので週末いっき読み。
溢れるばかりの言葉の豊饒、流砂のように形を変える極彩色なイメージの氾濫。文章の濃密さに圧倒されつつ、その濃ゆさの連続に途中食傷気味な感じもあったけど、物語性の力とでもいうのだろうか、なんとか最後まで飽かず読み切った。

まずナポレオンが侵攻しようとしている聖遷暦1213年のエジプトがある。ここが現在地点。この地を実質支配しているのが23人の知事から成るベイ集団。ベイといいながらも元は奴隷。支配的奴隷についての成り立ちは興味深い。またベイはそれぞれ奴隷を所有していて、主人公アイユーブはイスマーイール・ベイの若くして才を認められた筆頭執事という位置にある。主人から絶対の信頼を寄せられているアイユーブ。彼の存在も最後まで謎に包まれている。この点も読み進める力になっていたと思う。一番興味をそそられたのは実はアイユーブだった。

ひとまず彼のことは置いておくとして、ズームルッドが語る砂の年代記に登場するのは妖術師アーダム、ファラー、サフィアーンの3人。
夜のしじまを満たすように、波乱に満ちた挿話が語られていく。文庫本にしても3冊、長い長い物語の大半はこの3人の挿話が占めている。物語の中に物語がある。読み手はもう1人の夜の種族として、ズームルッドの言葉に耳を傾けることになる。
徐々に迫り来るナポレオン艦隊への危機感が膨らみ、聖遷暦1213年のエジプトと、砂の年代記は緊張のクレイマックスへ向う。どこまで広がっていくのだろうと思っていた挿話の大海原、この場合は大砂漠か、は見事にひとつの結末を向え収束する。めでたし、めでたし、たぶん誰にとっても、となるわけだ。
そして、アイユーブ。彼の存在の意味が解かれた時、二重構造になっていた物語がひとつになって読めてくる。『災厄の書』の真の意味が浮かび上がるという仕掛けだ。
破滅の道を歩むのは誰なのか。

物語は語られることで、読まれることで何度でも甦り、聴き手や読み人の中で生き続けるということだろうか。

挿話に登場する人物達の物言いなんだけど、これって敢えてこういう書き方なんだろうか。蛇神にしても人間くさいというか。これでいいんですの?なんか戸惑っちゃうし、あまりの軽い物言いに、どうしても笑っちゃいますわ。ここは素直に笑っておけばいいのね?と自分に何度か確認しつつ、読み進めることになる。
本書には美形なお人が数多く出てくる。奴隷アイユーブ、語り部ズームルッド、ファラーにサフィアーン、皆どんだけ美貌なの!?って思うくらいの美貌らしい。そんな美形揃いの物語にあって、対極にある醜を一身に負っているのがアーダム。あまりの醜悪な外貌に誰からも見捨てられていたのだから。最後に救いがなかったわけでもないので、一応彼もめでたしということでよかった。

本書を楽しめるかどうかは語られる挿話を楽しめるかどうかにある。言葉の豊潤と猥雑さが入り混じった濃密な文章空間から生み出される、もうひとつのアラビアンナイト。時間の許す方はご一読を!

(2006年8月13日読了)
| 古川日出男 | 17:45 | comments(8) | trackbacks(3) | | |

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♯ コメント

あ、なんだか面白そう。
千夜一夜物語のアラビヤーンな雰囲気は大好きなので、読んでみたくなっちゃいました、うん。
ではまた!
| hoy. | 2006/08/15 7:37 PM |
雪芽さん
こんばんは〜。
奴隷の研究は最近少ししたのですが、支配的奴隷は知らないです。興味湧きますねー。ナポレオンも出てくるし。あー勉強しないといけないこといっぱい。。。
長編はでも、手が引けてしまいます。今のところなんとか一日一冊ペースを守っているので、逆にそれがストレスになったりなんかもするけど・・・。
本とブログのバランスが難しいなぁと思う今日この頃です。。。
| やぎっちょ | 2006/08/15 11:01 PM |
はい、なかなか面白く読めますよ〜
確かhoy.さんは千夜一夜物語読んでましたよね。
そんなあなた様には、ぜひアラビヤーンなこの本、
お味見して頂きたいな、って。
いまは文庫になったのでよりいっそうお徳です。
私は古川日出男という作家もまったく知らず、
タイトル買いです。
夜の種族、素敵な響き、うっとり、
(本の前でしばし呆けている姿を想像しちゃだめですよ)
といった具合でした。
| 雪芽 | 2006/08/16 11:01 PM |
こんばんは!
奴隷研究までなさっているとは、方向性が多様すぎてやぎっちょさんて謎。
ナポレオンは登場しますが、まあ刺身のツマのようなものです。

一日一冊だと長編はキツイですね。
ブログに感想書かなければもっとたくさん読めるのに。
読むべきか、書くべきか、それが問題だ。
ただ、読むのはひたすら内に向う作業だけど、
ブログは外へ向けて繋がっていく作業なので、
こうしてコメントし合ったりと楽しい部分もあって、
今日も感想を書くのであった。
(最後は小説風←やぎっちょさんのを拝借)
| 雪芽 | 2006/08/16 11:16 PM |
こんばんは。
蛇神の威厳の欠けらもない物言いには腰が砕けそうになってしまいました。
ドゥドゥ姫に憑依してファラーと対面した後などは、さすがにプッと声に出して笑ってしまう始末。
しかも文中でしっかりオイオイと突っ込みも入っているのですから、これまたたまりませんでした。
| たまねぎ | 2006/09/07 1:05 AM |
たまねぎさん
夜の種族という言葉だけでもううっとりしてたので(笑)、
あのくだけた口調にはびっくり!
あれそうか、こんな感じなのねぇと。
語り部が聴き手を引き込む手法としては上手いですね。
その突っ込み、思わず笑わってしまいました。
| 雪芽 | 2006/09/08 9:57 PM |
雪芽様こんばんは!
遅まきながらシッカリ読ませていただきました。
「千夜一夜」は岩波文庫の旧かなづかいで読んだので、「あのくだけた口調」にはメッチャ新鮮なオドロキがあったけれど、アラビヤーンな雰囲気はキッチリ醸し出されてて楽しめました。
あとがきの「仕掛け」にはしっかり騙されましたが、それもまた、よき哉。
ではまた!
| hoy. | 2006/09/26 8:50 PM |
hoy.さん、アラビヤーンな世界からお帰りなさい。
この前のお江戸参りで神田古書街を歩いた時、「千夜一夜」見かけました。旧かなづかいで読むのって難しそう。
くだけた口調というのも、語り部が紡ぎ出す物語だからこそと言えるのかもしれませんね。思い切り楽しい読書体験でした。
あとがき、う〜んやられた!って感じです(笑)
| 雪芽 | 2006/09/26 10:08 PM |

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古川日出男【アラビアの夜の種族】
いつだったか、夜中に目がさめて、なんとなくテレビをつけたらドキュメンタリー番組をやっていた。 ある職人の話。残念なことに、その人には技術があっても商才がない。お金がなくて材料を買えないのだ。でも品物をつく
| ぱんどら日記 | 2006/08/20 11:55 AM |
アラビアの夜の種族  古川日出男
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| 今更なんですがの本の話 | 2006/09/07 1:07 AM |
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