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*「13」 古川日出男

13
13
古川 日出男
まず読み始める前に本のページをパラパラと捲ってみた。空間を埋め尽くす文字が視覚を威圧する。本を見開きにするとちょうどこんなふうに、■■、整然と並ぶ文字列が左右に四角い塊として目に映る。はぁ、これを読むのか。400字詰め原稿枚数1111枚。最初は読んでも読んでもページが進まない。
迷宮に迷い込んでしまったのか。
それはある意味当たっている。溢れる言葉と描写の緻密さ。言葉の向こうに作者が意図した世界が広がっていく。本書は作者のデビュー作だという。『アラビアの夜の種族』を読んだ時に感じた、独自の世界観を生み出す濃密な描写力というのは、デビュー作にしてすでにあったのかと驚く。
作者古川日出男は書き続けている。最近の作品はまだ読んだことがないので、その後の変遷はわからない。現時点ではとにかく濃密、濃いという印象の作家だ。読んだのが2作品とも長編だったせいもあるけど、読むには体力、気力のある時にじゃないと力負けしそうだ。

本の内容はというと、神を映像に収めることに成功したという男の話だ。
あれ、珍しく短い内容紹介になってしまったか。でも、不可視の存在である神を映像に、ということは“神が視える”ということだ。それだけで読んでみようかなという気にさせられる、でしょ?
本書は2部構成。第1部は主人公橋本響一の生い立ちから始まり、ザイールでの体験が物語の中心となる。第2部はアメリカが舞台。しかもハリウッド。ふたつにどんなふうに繋がっていくのか。

響一は左目だけに色覚障害を持っていた。
色覚検査で幼い響一は、自分の左目は他の人には見えないものが見えるのだということを知る。不可視なものが見える、このことは知能も色彩感覚も早熟の天才響一を絵画に向わせ、運命的に出合った魂の兄弟ジョ族ウライネが住むザイールへと向わせる。

森が色を生んだ。俺たちの目に視える色彩というものをな。

サル学の学者である叔父関口の言葉のとおり、響一は森で色を深めていく。

森に住むジョ族の間で禁忌の場所とされる『入らずの森』で響一が体験するひとつの死と再生の描写は圧巻だ。外部からの客人としてでなく、ジョ族に伝承されるバチカンバの神話を、共同体の一員として生きる者にしか許されない、神秘的な再生なのだと思う。

本書は響一の物語とともにもうひとつ、ローミというジョ族とは別な部族の少女の物語部分の展開もある。やがて響一とローミは邂逅することになるのだけど…
少女と13の係り、誤謬の連鎖、ガブリエル、黒い聖母マリアの千年王国。そもそも千年王国は13の認識票を持つひとりの男の夢想、せつなる希望に始まる。
13、本の表題でもある13はジュウサンとそのまま読む。第1部のタイトルは13であり、第2部は13の章からなり、その最後は13 13´で終わる。13は物語の中にあって暗示的だ。

第2部はがらりと趣が変わる。メインタイトルはすべての網膜の終わり。ハリウッドのある映画人によって映画が作られようとしていた。天使が出てくる話だ。天使もまた不可視の存在だ。人の目には見えない天使が主人公の映画だ。
天使が出てくる映画といえば、ヴェンダース監督の『ベルリン天使の詩』というのがあった。天使の視点で進行する時はずっとモノクロで、ひとりの天使が人間に恋をして人間になった時、彼の視点からの画面は鮮やかな色が満ちる。

第1部が色に出会い、魂の兄弟に出会い、いろんなことを内面に吸収し、ザイールで成長していく響一少年の成長を追う話であるとすれば、第2部は大人になった響一が、自分が見つけた、或いは見たものを外部に向けて表現していこうとする、未来の予感を含んだ話になっている。
第1部からリンクするように、黒い聖母マリアの千年王国の結末も語られている。偶然が重なったことによる悲劇、それがローミの物語であり、黒く美しき聖母マリア、ローミの話はせつない。
展開としては第1部のほうが躍動的で面白く読んだ。

(2006年8月25日読了)
| 古川日出男 | 00:43 | comments(0) | trackbacks(0) | | |

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