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*「家守綺譚」 梨木香歩

家守綺譚
家守綺譚
梨木 香歩

日常にこぼれ出る豊饒な気配
花は人を恋、水は友を招く
それは、ついこのあいだ、
ほんの百年すこし前の物語。


文庫の帯に並ぶ言葉を読んだだけで、予感めいたものを感じてしまう。自分はきっとこの本の世界を気に入るに違いない。そう確信する気持ちの根拠はなんだと問われても答えようがないのだが、ただただそう思ったのだ。

物書きを志す綿貫征四郎は、学生時代の親友であった亡き高堂の父から、庭つき池つき電灯つき二階屋の家守を頼まれる。
移ろいゆく四季の折々に邂逅するのは、草、花、鳥、獣はいうのおよばず、小鬼、河童、人魚、竜、竹の精、と亡き友…。日常と異界が交じり合う風景に佇む、私こと綿貫征四郎の家守としての日々を、潔く簡潔な美しい日本語で紡ぎ出す。
目次には、左右見開きにずらりと植物の名。
一瞬植物図鑑かと見紛うばかりに、28もの草木の名が並ぶ。
ひとつひとつはほんの数ページ程の短い話であり、静かに流れゆく季節の風情を、急がずゆっくりと味わいながら読んだ。読み始めたのは先週の初めであるから、いつになくのんびりとした読書だった。早々に読みきってしまうのがもったいなくて、いつまでも行間を漂っていたい気持ちだった。
当然そんなわけにはいかない、わかっている。
征四郎だってかの地のカイゼル髭の誘いにこう答えていた。私には、まだ来るわけにはいかない事情が、他にもあるのです。家を、守らねばならない。友人の家なのです、と。
そうだ、それぞれやるべきことがあるはず。と思って現実の風に身をさらせば、寒い〜、現実の風は厳しい。

やっぱりもう少しこの物語の中にいましょ。
最初に出てくるサルスベリの話が凄い。庭のサルスベリの木が懸想している相手というのが、誰あろう征四郎なのだ。嵐に乗じて二階屋に迫ってくる姿は迫力で、怖いかといえばそうでもなく、かえってあまりのことに読んでいて可笑しさがこみ上げてきたものだ。
なんといってもすべてを飄々と受け入れてしまう征四郎の存在がある。
湖でボートの事故により亡くなった友人高堂が、突然掛け軸から現れても、どうした高堂のひと言である。相手は親友とはいえこの世の者ではない。再会の第一声がどうした高堂とは、出るほうも、出られるほうも驚きが薄い。語る側の征四郎がこんなであるから、目の前で怪異が起ころうと、怖さは感じない。

日常にあたり前のように滲み出してくる異界のモノたち。異形や変事が自然と人々の心に溶け込んでいた時代。ほんの百年すこし前の日本はこうであったのだろうか。見える風景、見えない風景、どこに置き忘れてきたのだろう。

前に読んだ「西の魔女が死んだ」もとても好きでいい作品だと思ったが、それ以上にこの本はもっともっと愛おしい世界を抱えていて、文庫になったのを幸いに、鞄に忍ばせて持ち歩きたいとさえ思う。ふと帰りたくなる場所、それくらい大好きな作品だ。
だから単行本が出た時から読みたかった本だけど、買えずにいるうちに文庫になって、ずっと手元に置いていつでも読めるというのがことのほか嬉しい。

(2006年10月17日読了)
| 梨木香歩 | 22:30 | comments(19) | trackbacks(8) | | |

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♯ コメント

行間を漂っていたいって、わかります!
これを読んでいると、本当にこの世界にずっといたい!って思ってしまいますよね。
他の方のブログで見たんですが、この文庫、
カバーをはずしてもすてきなんですよ。
新潮文庫の葡萄の絵とあっているんです。
| | 2006/10/18 5:40 PM |
こんばんは〜、juneさん(?ですよね)
あ〜、いいですよね、とってもいいですよねこの本。
私も溺愛しちゃいます。
文庫はずっとカバーを外して読んでいたのに、
なんて迂闊、そうですね葡萄ですね!
まったく気づきませんでした。
本の最後が葡萄で新潮文庫の葡萄の絵とぴったり。
自分では気づかないことを教えて頂ける、
これもブログのいいところです。
| 雪芽 | 2006/10/18 9:30 PM |
うわっ!すみません。
名前を入れ忘れてしまいました!
私とわかってくださってよかったです^^
| june | 2006/10/19 8:49 PM |
大丈夫です、すぐにjuneさんだってわかりましたよ〜
| 雪芽 | 2006/10/21 10:55 PM |
うわ、嬉しい。
私も昨日読んだばかりなんです。文庫になって嬉しいですよね。
そうそう、この帯の言葉、なんて素敵なんでしょうか。
物語の中にいたい・・その気持ちわかります。
なんていうんでしょう、すべてのものがいっしょになってその世界が出来ている・・愛しいですね。
なにが出てきても・・みんな悠然としてるんですよね(笑)

日本語ってこんなに美しいんだ・・と再認識もしました。
| 瞳 | 2006/10/22 10:19 AM |
うわ〜、瞳さんもこの本読まれたんですね。
昨日ですか。同じ頃に読むなんて嬉しい偶然です。
これを読むと、さすが八百の神々がいる日本という国だなって思いました。
明治から昭和初期にかけての作家達が使っていたような文章の、言葉の響きが美しくてうっとり。
大好きな1冊になりました。
いまはこの本に登場した綿貫の友人が出てくる本を読んでいるんですよ。
こちらも面白いです。
| 雪芽 | 2006/10/22 5:39 PM |
雪芽さん。お久し振りです。そちらは寒いですか?私もこの本少し読みかけてますが、旧き良き日本的な独特の世界が良いですね。私は河童とゴローが好きです。
| 菱沼 | 2006/10/22 7:10 PM |
おはようございます。
私にしては珍しく早めに感想UPしましたので、
TBさせていただきました。
村田さんのお話も面白そうですよね。私も読もうと思っています。
今は「春になったら苺を摘みに」を読んでいます。
| 瞳 | 2006/10/23 7:51 AM |
菱沼さん、お久しぶりです。
寒いですよ〜、今朝の最低気温は2度でした。
日中でも12,3度というところ。
お鍋の恋しい季節です。
岡山はまだ暖かいのでしょねぇ。

この本、いま読みかけですか。
菱沼さんはどのあたりにいるのかしら。
ゴローと河童いいですね。
私は高堂と話がしてみたいと思いましたよ。
| 雪芽 | 2006/10/23 8:53 PM |
あら、早い。感想upされたんですか?瞳さん。
それはぜひお邪魔しなくちゃ!
「春になったら苺を摘みに」ってタイトルがいいですね。
それも読んでみたいなぁ。
梨木さんの本はけっこう文庫化されているので、
手に入り易いのも嬉しいですね。
| 雪芽 | 2006/10/23 9:10 PM |
征四郎に懸想するサルスベリ、なんだかすごく愛おしいです。
「西の魔女・・・」もそうだったけど、梨木さんの世界は、現代のせわしない生活の中で忘れている「何か」を、しっとりと思い出させてくれるみたいです。
| hoy. | 2006/10/29 10:51 PM |
hoy.さん、こんばんは。
主題となっているのは違っても梨木さんの本を読むと、
「何か」大切なものが必ずみつまりますね。
そんなふうに思うと、hoy.さんもサルスベリに懸想される、かも?
| 雪芽 | 2006/10/29 11:08 PM |
では、近くの公園のサルスベリの滑らかな樹肌を毎日撫でさすってみようかな?
うーん、でも受け入れられる自信はないですね(笑)
| hoy. | 2006/10/29 11:49 PM |
雪芽さん、こんばんは!
嗚呼〜雪芽さんのレビュー拝見して雪芽さんの文章にうっとりです。
本当にいつまでもたゆたっていたいですよね。
先日から私は行きつ戻りつしていますです。
古き良き日本、という言葉がこんなにもしっくりくる作品、出会えて良かったです。
何だがもっと自然や動物や大気というものを感じ取らないと、と改めて思いました。
『村田エフェンディ滞土録』も読みたいー、です。
| リサ | 2006/10/30 10:22 PM |
hoy.さん
スルリとした感触の肌をスリスリと…
と、思わず想像してしまいました^^;
思うが片恋
思い合うが相愛
植物と人となれば究極の悲恋ですね。
そんな恋はめったにできるものではありませんぞ。
けしかけてる?(笑)
| 雪芽 | 2006/10/31 9:01 PM |
リサさん、こんばんは〜♪
こんなにもたくさんの本ブロガーさん達を虜にしてしまうなんて、凄い!
たまには忙しいが口癖の日常から脱出して、
本の中です〜っと深呼吸したい気分です。
『村田エフェンディ滞土録』の村田君がかわいく愛おしい存在なんですよ。
もう、ぎゅっ!ってしてあげたい。
読んでみて欲しい本です、ぜひぜひ。
| 雪芽 | 2006/10/31 9:20 PM |
こんばんは、雪芽さん。
何か、久しぶりな感じですが、雪なんか、もうないんでしょうか。
この本は、良いですね。
ゆったりした時間の流れ、植栽・草花の息遣いが聞こえてくる感じでした。
| モンガ | 2007/03/10 7:50 PM |
雪芽さん
こんにちは♪
オススメしてくださってありがとうございました。読み終えました!この本は本当に和的で美しくってキラキラしていてステキな本でした。現代小説ではありそうでないですよねぇ。
ほんと異形や変事が自然に溶け込んでいる世界って素敵だと思います。当たり前にこうやって共存できる世界があったら素敵でしょうねぇ★
| やぎっちょ | 2007/06/09 4:02 PM |
やぎっちょさん、こんばんは♪
梨木さんの描写する和の美しきことに魅了され、もうほんと大好きな本なので、ステキと感じて読んで頂けてよかったです。
自然と共存するには、人間は便利さを求め過ぎたのかもしれませんね。
この作品の世界には戻れないけど、日本人の血の中にある拠り所としても、大切にしたい世界観です。
| 雪芽 | 2007/06/09 6:00 PM |

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