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*「アフターダーク」 村上春樹

アフターダーク
アフターダーク
村上 春樹
時計の針は深夜零時少し前を指している。章が変わるごとにアナログ時計の針は闇に深く分け入り、闇を貫いて始まりの時へと刻々と針を進めていく。
“真夜中から空が白むまでのあいだ、どこかでひっそりと深淵が口を開ける。”
深夜零時から明け方までの7時間あまりを、夜が持つ静寂さに満ちた文章で描いている。
三人称で語られるというのも、村上作品としては珍しいことだ。
読者の視点となる「僕」がいない。
都会を上空から俯瞰して眺める視点は、ある一点に焦点を合わせ下降していく。ファミレスで熱心に本を読む浅井マリ。彼女には姉がいた。「眠り姫」のように昏々と眠り続ける浅井エリ。第三者である視点は、それは読者である私たちの視点でもあるが、観察者としてふたりの姉妹の姿を交互に追い続ける。ひとりは夜の街に目覚め、もうひとりは自分の部屋のベットで眠り続ける。

マリは深夜の街で幾人かの人に出会い、ちょっとした出来事にも遭遇する。
体温や基礎代謝レベルがもっとも下降する時間、肉体的に活性化した状態からは遠いところで目覚めている人や、ネオンという仮想の光を纏っている街の風景は、独特の存在感を持っている。
言葉少なだった彼女が、見知らぬ相手に心の奥にある重たいものを話せたのは、死に近しい深い夜が抱える空気のせいだったかもしれない。マリとコオロギの会話が印象深かった。
“どこかで深淵が口を開ける”とは、人の心の深淵を意味するのだろうか。
バンド青年高橋に話した姉妹のエレベーターでの出来事も、物語の中で重要なポイントなのだろうと思うし、マリだけでなくコオロギも高橋も自分のことを口にしている。夜が打ち明け話をしたい気分にさせるのか。
そんなことがあったからだろうか、物語の夜が終わろうとする頃のマリは、少なくとも始まった時よりは心を軽くしたように見える。

白川、この人物がよくわからないが暴力的なものの象徴なのか?、がコンビニに置いていった携帯。携帯から漏れてくる言葉が呪縛のようだった。日常ありふれた小さな携帯が繋ぐのが、いつやってくるかわからない、必ず訪れるだろう落とし穴の闇というところに怖さがある。

エリの部屋のTV。
突然画像を映し出すTV画面は怖い。一瞬なにかのホラー小説かと思ったくらいだ。違うのはあちらから出てくるのではなく、取り込まれること。考えてみると余計怖い気もするが。「顔のない男」はエリの中にある恐怖を表しているのだろうか。彼女は何に捕らえられてしまったのか。何に捕らえられて眠るのか。

全体的にマイナー系の映画を観ているような感覚だ。冒頭の俯瞰視点から個別に焦点を合わせ、最後はまた都市を俯瞰する視点を入れる。個としての人を捉える視点があり、個の集合体である群集をひとつの生命体のように捉える視点がある。
第三者的に突き放した描写のためか、作中の温度は低い。

いつものように村上春樹の文章は読むとスルスルと読める。だからといって理解できるかというと、それは別の問題だ。読んだものへ解釈を試みようとすると、身動きできなくなる。縦切りでも横切りでも斜め切りでもよいから、自分なりのすっきりしたオチがつかないかと思うが、ふと考えてしまう。わかったような気にならない。
学生の頃、課題製作で深夜から明け方まで起きていることが多かった。だからこの物語の時間帯は馴染み深く、読んでいるとその頃が懐かしく思い出される。夜が色を濃くしていく。闇が空気に溶け入る。静寂が満ちる。自分だけが存在しているような感覚。やがて薄明が闇を押し流して、音が溢れ出していく。この移ろいが好きだった。大袈裟にいうと、日常に生還した気分になる。
当時を思う懐かしさもあってか、なんとはなしにこの本が持つ雰囲気が好きだと思える。
『ファイブスポット・アフターダーク』って聴いたことない、と思うけど、どんな曲なんだろう。

(2006年10月21日読了)
| 村上春樹 | 16:59 | comments(6) | trackbacks(4) | | |

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♯ コメント

つい最近文庫になりましたね。
ハードを持ってますが未読です。
最初だけちこっと読んでやめちゃいました(爆)
春樹さんを読みはじめる時は
心の準備とゆっくりした時間が必要なので
タイミングがあわないと駄目だったりします。
哲学的な言葉も言い回しも多いし
海辺のカフカでは
随分頭をひねりましたよ(笑)
が、春樹さんを読むのはやめられません。
| 弥勒 | 2006/10/22 11:38 PM |
弥勒さん、こんばんは!
ハードカバーで持っているんですか?
それでもって未読と。
その昔、「ねじまき鳥クロニクル」をハードで買い、1巻目で挫折しました。
去年「海辺のカフカ」を読んだ勢いで再挑戦したら、スルリと読めましたが、理解不能なところが多くて(ふう)
村上ワールドに入るには準備が必要ですね。
わかります。
文章は難しくないけれど、何度暗喩の海に溺れそうになったことか^^;
でも、読むと引き込まれる。
だから、読んでしまうんですよね。
| 雪芽 | 2006/10/23 9:04 PM |
こんばんは。
雪芽さん。
私は、その昔、「ねじまき鳥クロニクル」を読んで、エーエ、こんな本もありなのと至って感動し、私的に第何次かの読書ブームに至っています。
しかし、「海辺のカフカ」は、持っているのですが、まだ読んでいません。
エッセイは取り付きやすくおもしろいですよ。
| モンガ | 2006/10/24 11:17 PM |
モンガさん、こんばんは!
「ねじまき鳥〜」が第何次が読書ブームのきっかけというのが面白い。
それだけインパクトがあったということですね。
村上さんは常に新しいところを目指すというか、
新規の試みに挑戦している作家だなという印象です。
エッセイは特に「村上朝日堂」が好きでした。
あれを読むとスパゲッティを作りたくなるんですよ。
本を片手にね!
蕎麦屋でビールもしてみたいけど、未挑戦です。
| 雪芽 | 2006/10/26 10:39 PM |
雪芽さんこんにちは♪
「僕」がいないの、読み終わってしばらく経つまでわかってませんでした・・・(汗)
たしかにこの本は「マイナー系の映画を観ているような感覚」でしたね。「視点」中心だったからかな。映像にしたらあまりおもしろくないような気もしますが・・・。
村上春樹さんの本はあちきの場合理解しようとせず感覚で読んでます。なんて簡単な本なんだろう(不遜)とヘラヘラ読めるんですけどぉ★
| やぎっちょ | 2007/12/20 4:05 AM |
やぎっちょさん、こんばんは。
「僕」いないんですよ〜
村上さんは俺ではなく僕なんですよね。
読んでいる時はどんな不思議な世界でもなんなく読めてしまいます。
でも、ブログに感想を書こうと思うと、う〜んとなる^^;
村上さん後期(といっていいのか)の作品では『海辺のカフカ』と『ねじまき鳥クロニクル』が好きなんですよ。
とくにカフカに出てくるナカタさんがよいのですねぇ。
機会があれが読んでみてくださいね。
ただし、どちらも長編です。
| 雪芽 | 2007/12/21 8:36 PM |

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