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*「沈黙」 古川日出男

沈黙
沈黙
古川 日出男
沈黙、そうだ本のタイトルは沈黙だったと突然のように思ったのは、読み終えて少し間を置いてからだった。唐突に沈黙という言葉が肥大する。何故沈黙なんだ?
ルコと称される音楽を追い求めて膨大なレコードを蒐集し、「音楽の死」と題された11冊のノートを遺して逝った大瀧修一郎。遺されたレコードとノートの迷宮に深く沈潜し、修一郎の痕跡を辿りながら徐々にルコと重なり合っていく秋山薫子は、やがて根源的な悪である人間の闇と対峙することになる。
デビュー作『13』では色彩を、2作目となる本書では音楽を、3作目の『アビシニアン』では(未読だが)文字が鍵となるらしい。
膨大なレコードに針を落とす薫子の周りにはいつも音が満ちていたが、物語の中ですっと沈黙の時が降りた場面があったことを思い出す。
物語は重層的に流れる。
アフリカで生まれ、ヨーロッパを巡り形成される、ルコの成立ちから変遷。
薫子の母方の祖母の嫁ぎ先、大瀧家の血族に関する歴史。
失踪を繰り返す弟・秋山燥(アキヤマヤケル)
第1部は薫子が同居することになる屋敷に住む大伯母大瀧静の兄で、修一郎の父・大滝鹿爾を描いているが、いつの間にか引き込まれる。引きずり込まれるといったほうがふさわしいほどの握力を感じる。作者の筆致が持つ握力の強さのままに読んでいってしまうのだ。
続く2部以降は薫子視点で話は進むが、後半修一郎と視点が重なっていく部分、物語に加え精神構造まで重層的になってくるものだから、ますます複雑になる。
生存のための音楽を見出し、根源的な悪との対峙に決然と臨む薫子の姿に、読む緊張感も知らず知らず高まる。
これだけで808枚にも及ぶ物語が埋め尽くされているとしたら、いくら物語りに物語を投じ、読者を引き付けるに充分な構成力のある作者の作品としても、読むのに息の切れることだったろうと思う。

温度も色も変えて物語を流れる、静、薫子、猫との二人と一匹の屋敷での生活の描写が、穏やかで温かく幸せな気持ちにさせてくれる。
極々普通の暮らしぶりに、季節が溶け込んでいる。料理教室の仲間と集って手料理を皆で作り、お月見に興じる。

月を眺め賞して、意識は地上を忘れた。

いいな〜、こんな境地に遊びたいものだね。
二人は忙しい師走の準備に計画を立て一緒にこなし、お正月はのんびりと過ごす。ありふれた日々の生活なんだけど、気持ちが弛緩していく雰囲気が素敵なのだ。まるで警戒心を解いてだらんと伸びをしている猫みたいでもある。
生活を美しいものにしているのは、静さんなのだと思う。旧い屋敷を静かに成仏させてやりたいと願う彼女の思い。寄り添うように薫子がいて、薫子に寄り添うように猫がいる。もうひとり、すっかり静さんファンの私がいる。

薫子の弟・秋山燥は小学生の時にひとりで鍾乳洞に入り、発見された時には弟でないものになっていた。本書には燥の物語もあるのだ。彼が見た闇。美しい面差しの少年に成長した燥だが、闇は深い。底なしに深い。燥が抱える闇の恐ろしさに反して、彼が薫子にお姉ちゃんと言うその幼い言葉のアンバランスが、切ないものに感じた。

咀嚼しずらい部分もあったけど、読んでしまうのが古川日出男であり、いまとても気になっている作家のひとりだ。
「沈黙」も「アビシニアン」も重版未定でほとんど絶版状態にある。保存再読用に2作品が入った文庫は購入したが、単行本の「アビシニアン」は猫の表紙が秀逸。何度見ても、か、かわいい!読む時は図書館で借りて単行本で読みましょ。

(2006年10月28日読了)
| 古川日出男 | 23:02 | comments(0) | trackbacks(0) | | |

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