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*「青空の卵」 坂木 司

青空の卵
青空の卵
坂木 司
どうして卵なんだろう。綺麗に並ぶ表紙の卵を見ながら思った。
時がくれば内側から殻を突き破って、いっぱしのひよことしてこの世の空気に触れるであろう命。然しながら、それまでは卵という世界が命にとってのすべてである。その場所以外に世界が存在することなど知らぬげに、卵は完璧な世界として命を守ってくれる。コツコツコツと、内側から自らの意志で世界を壊し、外と繋がっていくのか。あるいは外側かわの力によって世界を知るのか。
「青空の卵」に登場する坂木司(作者と同じ名前なのはなにか意味があるのか)には、自称ひきこもりの友人・鳥井真一がいる。中学時代の酷い苛めがきっかけでひきこもりがちになり、現在は家でできるプログラマーの仕事を選んで外出しようとしない鳥井を、坂木はなんとか外へ連れ出そうと努力している日々だった。
そんなふたりの身近で起こる事件ともいえないような日常の謎を、鳥井の鋭い観察力が解き明かしていくという、5つの短編集。
ミステリーという趣きよりも、なにかに囚われてがんじがらめになっている心や、本人が気づかずにいる気持ちを解いていくという話の展開である。

ひきこもりとはいうけれど、完全に家に閉じ篭もっているわけではない。坂木がせっせと通って鳥井を近くのスーパーまで連れ出しているし、話が進むにつれ、少しは遠くへも外出する(いやいやながらせざるおえない)機会が増えてくる。
このシリーズで特徴的なのは、ひとつの話で生まれた人間関係が途切れないことにある。顔馴染みの人間がどんどん増えて、他の話の中にも顔を出す。鳥井自身は外へ出たがらなくても、彼の部屋には坂木以外にもけっこう訪れる人間が多い。度々彼の部屋が謎解きの場所となるからでもある。なんせ外出嫌いの鳥井なので、相手を呼びつけるのだ。こう書くとかなり失礼な奴のように聞こえるが、う〜ん、どう考えても否定しようがないな(笑)
他に読む楽しみのひとつは鳥井お手製の料理だろう。飲み物ひとつとってもこだわりのある彼の作る料理は、すこぶる美味しそうだ。

部屋の主である鳥井は誰であろうと態度はでかいし、言葉遣いはぶっきらぼう、お世辞にもかわいいとはいえない。一方の坂木はひとがよく、感動したり悲しかったりと理由は違えどとにかく涙もろい。何事にも揺るがない鳥井を唯一揺るがせるのが坂木であり、坂木の涙だ。ふたりはよく泣く。坂木の涙のスイッチが他の人より入り易いのだから、当然鳥井も泣く。男ふたりよく泣いている。男ふたりと書いたが、この時ふたりは痛みのトラウマを抱える少年時代に戻ってしまう。鳥井は坂木に依存し、坂木は鳥井に依存している。負った傷を越えられるまで、何度でも過去に立ち戻ってしまうのだろう。
ふたりの過度な日常生活の密着度ぶりは、いささかこそばゆい気がして仕方なかったが、続編を読んでいくうちに納得した気分になる。だが、いまの時点ではまだまだこそばゆいままだ。

閉じられた鳥井の世界に、坂木だけでなく他者としての外界が入り込んでくる。鳥井と坂木を取り巻く繋がりは、なんだか温かい。
鳥井と坂木は謎を解き明かし、人の心のこわばりを解放してやるのだが、一番それが必要なのは君たちふたりじゃないのかと思ってしまう。

鳥井にはインターネットで全国銘菓を取り寄せる趣味がある。
複雑な家庭環境から、家族が集まっての団欒での風景を体験したことがない憧れがそうさせるのだ。

生きていく上での幸福は、誰かとわかちあう記憶の豊かさにある

甘いもの好き?単に銘菓マニアなのか?と考えた鳥井の行為には、案外哀しい意味があったのである。

(2006年11月22日読了)
| 坂木 司 | 23:13 | comments(4) | trackbacks(4) | | |

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♯ コメント

こんばんは!
脇役が脇役としてだけではなくて、この物語にはなくてはならない存在として描かれているのが良いですよね。
どんどん繋がってゆく関係というのがステキです。
そして、数々の料理!
フレンチトースト食べたい〜
カレー食べたい〜
となってしまいました。
全国の銘菓も思わず取り寄せしたくなりますよね。
| エビノート | 2006/11/30 9:36 PM |
こんばんは〜、エピノートさん。
脇役もひとつのファミリーの一員みたいで存在感ありますね。
友達の友達はみな友達だ状態になってる。
人の心の痛みが展開に大きく関係しているだけに、膨張する鳥井の宇宙に漂う美味しい料理の匂いと、人の繋がりには癒されます。
料理作っている人は全然癒し系じゃないけど(笑)
あれもこれも食べたくなりますね〜
今回は北海道のお菓子もいくつか出てきたので、思わず買いに走りたくなりました。
文庫3巻目には鳥井家料理レシピと全国銘菓お取り寄せリストまで載っているんですよ。
| 雪芽 | 2006/12/01 11:34 PM |
こんばんは。

ぼくも、この二人の関係がくすぐったいというか、ちょっぴり異常じゃないのかと、心配しながら読みました。
3巻目になると、だいぶ、違和感がなくなりましたけどね。

ぼくは初対面の人がこちらに丁寧語を使わずに話しかけてくると、それだけで、ムッとしてしまうので、鳥井のような傍若無人な人間とは、絶対に親しくなれそうもありません。

そんな彼を受け入れてくれる人々に囲まれているということは、鳥井はそれだけでも幸せな人間ではないかと思います。

3巻のレシピを参考に、妻に料理を作るようにお願いしていますが、なかなか実現しません。
| touch3442 | 2006/12/02 12:21 AM |
こんばんは。
touch3442さんのブログでお薦め頂いてから、
読むまでにずいぶん時間がかかってしまいました。
疲れたかなぁと思う時でも、スルっと話の中に入っていけました。

私も鳥井タイプの言葉遣いの人はどうも苦手です。
自然と回避してしまいそう。
でも、周りの人達はちゃんとわかって、
彼のことを受け入れてるし、
栄三郎さんなんて上手をいってますからね。
家族との食卓は叶わなかったけれど、
仲間との食卓の場は彼に幸せな記憶を与えてくれますね。

奥様もこのシリーズのファンでしたよね。
touch3442さんのお願い、実現しますように!
| 雪芽 | 2006/12/02 10:08 PM |

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青空の卵 〔坂木司〕
青空の卵 ≪内容≫ 外資系の保険会社に勤める坂木司の友人、鳥井真一はひきこもりだ。 坂木は身近で起こった奇妙な出来事を語って聞かせ、鳥井の関心を外に向かせようとする。 果して謎を解くことで、鳥井は飛び立つことができるだろうか。 (出版社/著者からの
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