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*「パレード」 川上弘美

パレード
パレード
川上 弘美
時間が通り過ぎていく。振り返ると懐かしい場所、懐かしい出来事、懐かしい人の顔が浮んでくる。それは本の中の人であっても同じこと。言葉が伝えようとする感情の襞をなぞり、同じ風景を見た。とっても近くいたように思えた。現世に在る人でも、自分の世界に息づいていない人達はたくさんいる。そう考えればセンセイとツキコさんは、確実に自分の中に息づいている存在だといえるのではないか。
『センセイの鞄』の外にある、私達の知らないセンセイとツキコさんの時間。ツキコさんがセンセイに物語る子どもの頃の話。まどろむある夏の午(ひる)さがり、ツキコさんの言葉の響きと、センセイの手の温もりに、ふんわりと包み込まれるような気がする物語。
センセイがそうめんを茹で、味とりどりの薬味を揃えていく合間に交わすふたりの会話で、いっきに時間が引き戻される。言葉の掛け合いが相変わらず楽しく可笑しくて、だってあたりまえと言われるかもしれないけれど、『センセイの鞄』のセンセイとツキコさんのままなんだもの。懐かしく、変わらない雰囲気に気持ちが和む。読者が知ることのない時間の中でも、きっと二人はこのようにして、限られた時を愛おしく感じながら、淡々と過ごしていたのではないかと思えるのだ。

ツキコさんの昔の話には二人の天狗が出てくる。きれな赤い色をした天狗だ。この天狗たちがとびきりかわいい。しかもマーガリンが好きときてる。天狗って和物の生き物じゃなかったのか?と思ったが、マーガリンを舐めている姿がかわいく想像されるので、気にしないことにしよう。天狗だってマーガリンくらい食べたいのだ。
不思議な生き物は天狗だけではない。あなぐま、ろくろ首、砂かけばばあも出てくる。登場人物たちの間でごく普通に語られると、読むほうも違和感がない。生き物の境界を越えて一緒に存在してしまうのが、いかにも作者ならではな気がする。

いじめの話も出てくる。憑かれている子ども達の心がすさむと、天狗も元気をなくすし、憑いているものたちもすさんで、教室全体が荒れた雰囲気になる。きっとすごく繊細な部分で憑くほうも憑かれるほうも繋がっているんだろう。

子どもは境界を行き交う。
生と死を行き交う。この世と異界を行き交う。
ツキコさんの昔の話は、子どもの心が持つ柔らかな世界に満ちている。醸し出される不思議な空気が好きだ。
天狗はいつからいなくなったのだろう。
たぶん大人の領域は赤い天狗の住み分じゃないのだろう。

なにはともあれ、センセイとツキコさんにまた会えて、それだけでほんわか温かい。

(2006年12月10日読了)
| 川上弘美 | 22:39 | comments(10) | trackbacks(6) | | |

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♯ コメント

この天狗は良かったです〜。この話は大好きだな。ツキコさんとセンセイに絡めなくても、独立したお話でもよかった気がしますが、一緒になっているから余計に読んでしまうというのはあるかもしれませんね。
天狗とか出てきても周囲の反応が「あ、出たんだ」的普通感の空気が好きでした。
| やぎっちょ | 2006/12/16 1:20 AM |
雪芽さん、こんにちわ。
この世界、柔らかであたたかですごく好きです。
うとうとと昼寝をしながら眠りに足を引っ張られていく時の
ちょっと不安な感じも思い浮かべたんですが
>子どもは境界を行き交う。
 生と死を行き交う。この世と異界を行き交う。
この感じ、すごくわかります。
その頃の記憶が天狗のすんなり受け入れてしまうのかも。
| june | 2006/12/16 11:22 AM |
やぎっちょさん、こんにちは!
天狗の話は独立した話として読んでも面白いですね。
天狗がとにかくかわいい〜
でもおっしゃるように、まったり流れていく日常のひとこまに溶け込んでいるから、「昔の話」として読めてよいのかも。
夏に読んだら、読了後いそいそとそうめん茹でていたことでしょう。
| 雪芽 | 2006/12/17 11:50 AM |
juneさん、こんにちは!
>眠りに足を引っ張られていく時のちょっと不安な感じ
う〜ん、ほんとそう、言われてみてはたと気づきました。
眠りに落ちていく時もふたつの狭間にあって、なんか心もとない感じがしますね。
短いけどうまい具合に出来ているなぁと感心。
子どもの頃はもっと世界が曖昧だったような気が。
川上さんの小説を読むと、いろんなものが違和感なく住んでいた子どもの頃の世界を思い出します。
| 雪芽 | 2006/12/17 12:24 PM |
雪芽さん、こんばんは!
これはすっごく温かくて懐かしくて素敵な作品。
子供の頃のあの研ぎ澄まされた感性がいつの間にか
消えてしまい、本当にいつから見えなくなったのだろうか、
と思うことがあります。
大人になるっていろんなものを落としていってしまうのですね。
久しぶりにまたセンセイとツキコさんに会いたくなりました。
| リサ | 2006/12/17 8:18 PM |
雪芽さんo(^-^)oこんばんは♪雪芽さんのブログでみて今日図書館で借りてきました♪来年まで借りられるので積ん読本も含めゆっくり読みたいと思ってます。
| 菱沼 | 2006/12/19 11:14 PM |
リサさん、こんばんは!
大人になると感性の視力が鈍るのでしょうか。
歩いてきた道にはきっと落し物ごろごろ転がってますね。
でも、もうそこへは拾いにいけないんですよね〜(悲)
そのぶん、いまだからこそわかる楽しみを、
ひとつひとつ見つけていくのもいいですね。
たまに読み返してみて、子ども心を思い出すのもいいかなって思った本でした。


| 雪芽 | 2006/12/21 11:12 PM |
菱沼さん、こんばんは!
図書館本でも来年までならゆっくり読めそうですね。
本自体は薄いのですぐ読めてしまうでしょうけど。
ちょっと不思議だけど、ちょっと悲しいような、ちょっとまどろむようなお話で、とっても好きな作品です。
| 雪芽 | 2006/12/21 11:36 PM |
ぬくぬく。
センセイとツキコさんの相変わらずの雰囲気。
あのお二人なんですよね。
「センセイの鞄」は読了してから随分立ちますが
「パレード」であぁ久し振りだなぁって
ゆるゆると心が和みました。
また会えて幸せです。
天狗たち可愛いですよね♪
| 弥勒 | 2007/01/11 11:55 PM |
ほんとセンセイとツキコさんの世界に触れると、
ぬくぬくとした気分になりますよね、弥勒さん。
またどこかで後姿でもいいから会えないかしら。
かわいい天狗たちもよかったですね〜
だけどツキコさんの昔語りは、ちょっぴり悲しい風味が効いて、
辛い薬味のようにヒリヒリと心が痛みます。
| 雪芽 | 2007/01/16 9:14 PM |

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