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*「雷の季節の終わりに」 恒川光太郎

雷の季節の終わりに
 雷の季節の終わりに
 恒川 光太郎
 角川書店 (2006/11)




 
デビュー作の『夜市』を読みたいと常々思いつつ、買うでもなく借りるでもなく時が過ぎていくうちに、書店に並ぶ新刊を目にした。前作同様、目を引く美しい色合いの装丁である。2作目に急かされるようにして、2冊まとめて購入してみた。まだ1冊もこの作者の本は読んでいない。自分としては思い切った買い方だが、好みに合わないかもしれないとは考えなかった。実際読んでみると、まさにどんぴしゃりな本だった。

現世から隠れて存在する小さな町・穏で暮らす少年・賢也。彼にはかつて一緒に暮らしていた姉がいた。しかし、姉はある年の雷の季節に行方不明になってしまう。姉の失踪と同時に、賢也は「風わいわい」という物の怪に取り憑かれる。風わいわいは姉を失った賢也を励ましてくれたが、穏では「風わいわい憑き」は忌み嫌われるため、賢也はその存在を隠し続けていた。賢也の穏での生活は、突然に断ち切られる。ある秘密を知ってしまった賢也は、穏を追われる羽目になったのだ。風わいわいと共に穏を出た賢也を待ち受けていたものは―?
「BOOK」データベースより
穏(おん)には春夏秋冬の他に、冬と春の間に雷季と呼ばれる季節がある。海のほうからやってくる雷は2週間ほど穏に留まり、その間町の人々は家から出ない。
空を走る雷の閃光が人々の心にもたらすのは、人智を超えた力の存在であるのだろう。天の雷神を想像し、または怨霊の祟りが起こす怪異であり。穏の人々は古い世界の浄化と考えた。

雷の季節にはよく人が消える。それはもう仕方がないんだ。

なぜ消えるのか。どこへ消えるのか。
後々、「鬼衆」の存在が語られ、浄化という真の意味を知る時、穏という場所へのイメージが一転する。伝説や習慣に隠された共同体の仕組み。特定の人間のみが知る穏の秘密からは、平穏の穏であるはずの町が持つ暗部がみえてくる。
穏の存在する理由、穏が尊ぶ血の継承、特殊な才能を持つ者への偏重、逆に持たない者への軽重に、もぞもぞと収まりどころのない感覚が湧き上がる。

主人公賢也の姉はこの雷季の季節に突如姿を消す。
雷鳴に誘われ、穏という特殊な場所にすんなり入っていける冒頭からして、なかなか魅力的な世界観が展開する。
前半で印象に残ったのは死者の門を見張る「闇番」、大渡さんと賢也の交流。風わいわいと呼ばれる不思議な鳥。
「東京ウォーカー」NO26に恒川さんのインタビューが載っている。お化けを“わいわい”と呼ぶ地方があり、風のお化けだから風わいわいなんだそうだ。

途中賢也視点から茜という少女の視点に変わる。場所も穏ではなく現代社会。最初は戸惑うが、これが見事に繋がっていくのだ。後半は因縁の対決が展開する。絡まる糸を手繰り寄せるごとく、出会うべくして出会った者達。異なる世界のエピソードをひとつの世界にまとめていく構成力の巧みさは、『風の古道』に共通している。
なんらかの理由によって旅に出る少年、この場合は逃避行であるが、待ち受ける困難、試練に立ち向かい生還、という流れは成長ものの王道に思えるが、賢也の場合はそういう話ではないのだな。賢也を変えていくのは…、ともかく雷の季節は終わり、新しい季節がきたようではある。

ところで気になるのは大学生早田浩司の存在だ。
彼の正体はいつ明かされるんだろう。ただの脇役キャラにしては謎めいている。いまかいまかと期待にわくわくしながら読んでみたものの、あら、肩透かしですか、そうですか。楽しみにしていたのに(ガックシ)

怪奇幻想的なホラーが好きだという作者。これからもどんどん美しく幻想的な世界を描いていって欲しいとお願いしたい。
好きですからね〜、こういう話。

(2006年12月3日読了)
| 恒川光太郎 | 16:00 | comments(20) | trackbacks(11) | | |

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♯ コメント

お化けのことを「わいわい」と呼ぶ地方が実際にあるんですね〜〜
恒川さん独自の呼び方だと思ってました。
風のお化けとするよりも「風わいわい」の方がしっくりきますよね。
早田浩司は私も気になります!
彼は一体何ものなんでしょうね?
| エビノート | 2006/12/10 7:32 PM |
穏とゆう小さなコミュニティの設定や
風わいわいなど魅力的な部分が多くて
一気読みでした!!
茜目線になった時は
かなり戸惑いましたが
ラストでガッツリ結ばれて
やられた!と思いましたね(笑)
伏線はりまくりで
まんまと引っ掛かった感じとゆうか。

大学生の彼、なんだったんでしょう…
肩透かしをくらったって表現はピッタリです。
結局わからずじまいだったのがちょっと残念。
| 弥勒 | 2006/12/10 11:30 PM |
こんばんは、雪芽さん。
もう北海道は、白一色の雪の世界なんでしょうか。
この作品も幻想的で読んでいて情景を想い浮べました。
現実の世界、異次元の世界、何かありそうだが、どんなもんでしょうか。でも、読んで良かったです。
| モンガ | 2006/12/11 12:22 AM |
エピノートさん、「風わいわい」っていう響きが楽しいですよね。
お化けなんですけど、でも姿は鳥みたいだし。
雷季とか、穏とか、闇番、墓町、恒川さんが生み出す言葉に想像力が膨らみます。
早田青年は天上家に連なる人かとも思ってみたけど、謎を残して北海道に去っていきました。
ん?もしかするとご近所にいたりして?
| 雪芽 | 2006/12/12 10:58 PM |
弥勒さん、こんばんは。
『夜市』を読んで恒川さんにすっかりハマり、もちろん次の日には『雷の季節の〜』の一気読みでした。
もっとこの方の本が読みたいのに、読む本がないのが寂しいですよ。
最後にきてガ〜っとまとめ上げてくる力、すごいですね。思わぬところが繋がってくるのだから、納得、脱帽でした。
作者にやられたな〜って思うけど、やられたな〜と思う本に出会えたことに、やった〜
| 雪芽 | 2006/12/12 11:10 PM |
モンガさん、こちらは一面雪世界に突入です。
他の季節と生活はさほど変わらないけど、白く覆われた風景を見ていると、異界に迷い込んだ気分になることもあるんですよ。ずんずん雪に埋もれていく感じです。
この本の中ではこちら側に来た時も、目には見えない階層があったりして、SFを読んでいるような不思議な世界でした。

| 雪芽 | 2006/12/12 11:17 PM |
この本は最近いろいろなブログで紹介されていて、気になっているのです 笑 表紙のデザインもそそられますね!! 図書館の予約状況を見ると・・・ 気長に待つか、購入するか、どちらかにしろと、言われているような気がします 苦笑
| yori | 2006/12/14 9:39 PM |
yoriさん、こんばんは!
そそられますよね。
表紙が買って買ってと誘ってくるんです。
誘惑に負けて買ってしまいました^^;
借りるのは難しそうですか?
待つか、買うか、さてどちらになさるのでしょう。
なかなか魅力的な世界なんですよ。

| 雪芽 | 2006/12/15 11:01 PM |
ようやっと読むことができました。あの青年の存在は本当に気になります。穏の物では無い事は確かでしょう。
こちら側の人間でありながら、向こう側の「見える」存在。そうなると夜市や風の古道に出てきた人物と繋がりそうな気がして余計に気になるのです。
茜と賢也と穏まで連れて行った商隊はおそらく夜市にも関わりのある人々でしょうし、恒川さんの中では全ては一つなのかも知れませんね。
| たまねぎ | 2007/01/07 6:16 PM |
たまねぎさん、こんばんは。
別々に存在していいながら、どこかで繋がっている世界。
あの不思議な青年も、世界の境目を超えていける人なのかと考えると、短篇長編合わせてもまだ数少ない恒川さんの世界が広がっていくように感じられます。
次はまだかな〜
| 雪芽 | 2007/01/08 7:01 PM |
私も早田さんのこと、どこかで読み落としていたかと、気になってました。
みなさんがわからないということは、結局は肩透かしだったということでしょうか。

お化けのことを「わいわい」と言うところがあるのですね。
チョコレートコスモスに続き、雪芽さんのところで豆知識が増えました♪
| june | 2007/01/08 10:42 PM |
juneさん、こんばんは!
カッコよく暴れるだけ暴れていなくなってしまいましたね。
構成力の巧みな恒川さんがうっかりなんてなさそうだし、
なにかあるんじゃないかって深読みしたくなりました。

へ〜と思ったことはつい書きたくなってしまいます(笑)
| 雪芽 | 2007/01/10 10:15 PM |
ついに図書館の予約を待って、読んでしまいました 笑
早田君もそうですが、詩織さんもあやしいです 笑
確かに次作への伏線かもしれませんね!!
| yori | 2007/03/05 10:43 PM |
yoriさん、こんばんは。
ついに、ついに(って大袈裟ですが)読まれたんですね。
あとで感想拝見しに伺わなくちゃ。
詩織さんもあやしいですね。
なんだかあやしい人ばかりだ。
世界と世界がどこかで繋がっているような恒川作品なので、
また別の作品で出会えるかもしれませんね。
直接出てこなくても、どこかで息づいている感というのがあるのは好きです。
| 雪芽 | 2007/03/06 9:03 PM |
「夜市」から恒川さんハマってる私ですが、いつも短編なので念願の長編、堪能しました。
でも盛りだくさんにしすぎて、最後中途半端になってしまいましたね、ページ数足りない感じ。
トバムネキと謎の大学生、彼らが出てくるなら、もっと早い段階で、もっと読みたいですね。
大学生の正体気になります。どこかで出てくることを期待します。
| じゃじゃまま | 2008/01/14 5:06 PM |
じゃじゃままさん、こんばんは。
恒川さんの「夜市」を読んだ時の衝撃度は大きかったです。
私もそれからすっかりファンに。
初の長編もよかったですね。
文章の美しさ、独特の世界観は素晴らしい!
そう、どうせならもっともっと読みたかったというのもあります。
大学生は謎ですね。何者だろう。
またどこかで会える日を楽しみに待ちましょう。
| 雪芽 | 2008/01/15 10:07 PM |
こんばんは。
細かい描写も抜かりなく、想像しながら読み進めるのが楽しかったです。
表現が素敵で伏線の回収も鮮やかでした。
早田浩司、気になります。

トラックバックさせていただきました。
| 藍色 | 2008/02/05 4:13 AM |
藍色さんへ
恒川さんのイメージ豊かな言葉に乗ってどこへ運ばれていくのか。
想像する楽しさがありますね。
ほんと早田浩司は何者だったのでしょう。
いつもTBありがとうございます(^.^)
| 雪芽 | 2008/02/09 9:41 PM |
雪芽さん、こんばんは(^^)。
今回も、美しく寂しく、そして怖ろしい物語でしたね。恒川さんの描く「侘び・寂び」のある異界は、とても心惹かれます。
ああ!私も早田については疑問に思ったのに、ブログにかくの忘れちゃった!いずれ、早田に絡まる新しい物語が描かれるのでしょうか。だといいなぁ。
| 水無月・R | 2008/02/22 10:46 PM |
水無月・Rさん
恒川さんの描く異界にはなにかしら郷愁めいたものを感じて、思わず踏み込んでいきたくなるんです。
危ない感情かもしれません、汗
美しさ、怖さ、いろんなものが入り混じって鮮やかにひとつの世界となっている。
魅力的ですね。
早田は謎です。どこかで再会できればいいですね!
| 雪芽 | 2008/02/24 5:19 PM |

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