本や映画の感想、日々の雑感などを徒然に書いております
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*「冷たい校舎の時は止まる」 辻村深月

冷たい校舎の時は止まる (上)冷たい校舎の時は止まる (中)冷たい校舎の時は止まる  (下)
冷たい校舎の時は止まる (上) (中) (下)
辻村 深月
講談社 (2004/7/6)

まずなにより惹かれたのは本の表紙。
上・中・下と三冊並べると、物語の舞台となる校舎の絵になる仕掛けで、そこに雪の結晶が散りばめられている。雪の結晶好きとしては思わず手に取ってみたくなる本だったのだ。
ある雪の日、学校に閉じ込められた男女8人の高校生。どうしても開かない玄関の扉、そして他には誰も登校してこない、時が止まった校舎。不可解な現象の謎を追ううちに彼らは2ヵ月前に起きた学園祭での自殺事件を思い出す。しかし8人は死んだ級友の名前が思い出せない。死んだのは誰!?誰もが過ぎる青春という一時代をリアルに切なく描いた長編傑作。 第31回メフィスト賞受賞。
「BOOK」データベースより
ちょうどこの本を読んでいた頃、尽きることも果てることもなく雪が深々と降り続いていたものだから、本の世界と現実がリンクしているような錯覚を感じながら読んだ。

ある場所に集まった登場人物達が外界との接触を断たれ、その状況の中で事件が起こる。ミステリーの定番ともいえる設定の舞台に作者が選んだのは学校。多くの生徒達が集まる学校を、男女8人の生徒が孤立して閉じ込められる場所に出来るものなのか。
ここではSF的手法が使われていて、読みながら思い浮かべたのが、ル・グィンの『コンパス・ローズ』に収録されている「欲望の通路」だった。と書いても読んでいる人は少ないのではないかと思うので、ネタバレの心配はないと思うが。
深々と降り止まない雪、閉ざされた空間となった学校、止まった時間、思い出せない記憶、不可思議な状況設定に読みたい心がくすぐられる。

全体を覆う謎とともに物語の進行に伴い、8人の生徒の過去や心情が一人称でそれぞれに明かされていくことになるが、繊細な心理描写は巧いと思った。
伏線も細かく張り巡らしてある。読後に思わず前のページを読み返し、記憶のひとつひとつを符合させてみて、なるほどなぁと感心してしまった。

菅原の過去として語られる『ひまわりの家』の話はせつない。後に知るのは、記憶に留まるその出来事が、いかに彼にとって重いものであったかということだ。ラストの菅原の姿には、ずっと抱き続けた思いが集約されているようだ。
それと終盤において彼が『ホスト』に取った躊躇ない行動は、もうそのまま漫画のヒーロー並だった。菅原は美味しいこところを持っていくなぁ。

8人の中でヒロイン的存在の辻村深月の性格が、あまりに弱くてなんでも自分を苛む方向へ傾いていく。その度合いが異常なまでに強いのでちょっと疑問だったが、終盤でようやく何故かということが理解出来る。
それでもなぁと思ってしまうのは、なんだかんだいって彼女が常に守られる位置にあるからだ。深月を取り巻く他の7人は幼馴染みの鷹野を始めとして、文化祭の時のクラス委員も勤めたいわばクラスの中心的存在。クラス委員長、副委員長、ずば抜けた成績の特待生、ちょっと不良ぽいけどカッコ良くと、絵に描いたように注目度の高い集団だ。深月はそんな彼らからいつも気にかけてもらい、ガードされているようにみえる。
もちろんだからといって、深月が仲の良かった春子から受けた痛みが軽減されないのはわかる。それでも春子の虚勢は悲しく映るし、こっちのほうもキツイだろうなと思ってしまった。
また作者と同じ名前の登場人物がヒロインポジにあるのは違和感ありだった。

不可思議な状況設定、閉塞感、次は誰がという恐怖心、揺れ動く年代が抱える苛め問題を含む複雑な人間関係や心情、なかば幻想的で意外な展開をみせながら、細やかな心理描写が際立つ作品だと思った。

登場人物で好きだったのが菅原と梨香の“ワルモノ”(梨香曰く・笑)コンビ。
梨香がんばれ!と物語の未来にエールを送ろう。

2006年12月27日読了
| 辻村深月 | 16:50 | comments(4) | trackbacks(2) | | |

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♯ コメント

雪芽さん
こんにちは。
そうそう。雪芽さんがね、読んでいたと思って記事探したんですけど見つからなかったんですよ。あれ、勘違いかなと思っていたらやはり読まれていましたね!見逃してました。
単行本は上中下の3巻で、文庫が上下巻って珍しいパターンですね〜★(内容のことなんも書いてないや。てへ)
| やぎっちょ | 2007/09/13 10:39 AM |
やぎっちょさん、こんばんは。
実は自分でもどこに分類したか忘れてました^^;
探しずらいのでカテゴリー分け考え直さなくては。
この本は表紙買いでした。
3冊並んで校舎の形になっているのを本屋で見て気になって。
単行本というかノベルズだからかもしれません、文庫2冊。
それからちょい悪はけっこう好きですよ〜
だから菅原君も好きなんです(笑)
| 雪芽 | 2007/09/13 9:41 PM |
深月に自分と同じ深月という名前を与えてしまう所や、その分身をああやって追い詰めてしまうあたりは、辻村さんの持つ痛々しさというか潔癖さを表しているように感じました。善くも悪くも強く出ているなと。
ところで『コンパス・ローズ』という本は未読なのですが、偶然か雪芽さんのところと同じ名前なんですね。
| たまねぎ | 2007/09/24 1:09 AM |
たまねぎさん、こんばんは!
このデビュー作からの作者が持つ潔癖さ痛々しさは、いまだに残っているように最新作を読んでも思いました。
それが魅力でもあるんでしょうね。
そして読みたく思う理由でもあります。
痛々しい、辛い部分もある、でも敢えて読む。
自分はM系でしょうか?(笑)

コンパス・ローズは偶然でもなんでもなく、大好きなル・グィンの本の題名から頂戴したものです。
本の感想を中心とするブログの名前としては、解かりづらいのが難です^^;
| 雪芽 | 2007/09/24 6:43 PM |

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冷たい校舎の時は止まる 辻村深月
冷たい校舎の時は止まる(上) 冷たい校舎の時は止まる(下) ■やぎっちょ書評 著者が登場人物になる小説って、珍しくはないかもしれないけど最近ではとんと見かけません。 読みはじめて最初「凍りのくじら」でも感じたんだけど、表現の言い回しがなんか若いと感じた
| "やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書!! | 2007/09/13 10:33 AM |
冷たい校舎の時は止まる  辻村深月
あの人は言った。「私は夏の終わりがくるたびに、恋の終わりを思いだすのかしらね」と。夏が来れば思い出すのが、はるかな尾瀬と遠い空なら、夏が過ぎれば思い出すのは、いつかの恋と遠い海。ああ愛と青春のバラッド。そんなわけで夏の終わりに青春恋愛小説を読むのだー
| 今更なんですがの本の話 | 2007/09/24 12:09 AM |
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