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*「螺鈿迷宮」 海堂尊

螺鈿迷宮
 
 螺鈿迷宮

 海堂 尊
 角川書店 (2006/11/30)
 単行本: 389ページ



乳白色に浮ぶ淡い虹の輝き。誰が想像しよう、固く閉じられた貝殻の内側に虹を見ることを。
外側からでは窺い知ることのできない真実。見極めるにはどうすればいい。内側に入り込んでその眼で見ればいい。ただそれだけのこと。のはずが、そこには深い迷宮が待っていたのだ。

バチスタ・スキャンダルから一年半。幼馴染みの新聞記者・葉子から「碧翠院桜宮病院に潜入できないか」という依頼を受けた天馬大吉は、留年を繰り返し、医学の道を断念するのも時間の問題な東城大学・医学生。潜入先の桜宮病院は終末期医療の先端施設として注目される反面、経営上の黒い噂も絶えない。天馬はボランティアとして通ううちにある疑問を感じるようになる。
「この病院は、あまりにも人が死にすぎる」
今回の話のメインとなる天馬大吉。強運な名前の持ち主の人生はこれまでアンラッキーの連続。病院に潜入してからも、坂を転がり落ちる勢いで不運が彼を見舞う。不運の原因を作ったのは、あの噂の氷姫こと姫宮。そう、隠し玉姫宮ついに登場す!、なのである。
姫宮って案外、なのねとか、姫宮って意外と、なのねとか、想像していた姫宮像との違いにやや戸惑う。戸惑うだけならまだよかったのだけど、とんでもない不器用さに最初ちょっとイライラ、続いてまたかとイライラ、こんなにも苛々が募っていくキャラも珍しい。行動はぶきっちょでも、超人的記憶力はさすがに白鳥の部下というべきか。あれ?という感じで読んだ姫宮だったが、次は慣れてもっとしっくりくるかもしれない、と思っておこう。

通称でんでん虫と呼ばれる碧翠院桜宮病院。天馬大吉が踏み込んでしまったのは、真実迷宮だったのかもしれない。
ただの病院というには異質な雰囲気が漂う空間。医者も患者も、空間の一部であるものすべてが色を纏い幻想的ですらある。解剖され、臓器だけ残された夥しい屍体の眠る場所さえ、生々しさに反して幻想に取り込まれていくようだ。
なにが行なわれているかを探るうち、天馬が知ることになったのは、過去から甦る重い真実だった。こんなふうに自分の預かり知らぬところで、誰かの悲しみに係っていることが起こるという現実。
桜宮病院長の銀獅子こと桜宮巌雄が、それこそ燻し銀とでもいう存在感で、そのせいかまたしても白鳥の存在感が薄いように思った。『チーム・バチスタの栄光』では、無敵のロジカルモンスターぶりを発揮して、明解に切り込んでいく突出したキャラであったところが面白かったのだ。それが前回、今回とこじんまりとした活躍という印象しか残らないのが惜しい。
とはいえ、物語全体としては個性の強いキャラ達や、人の縁が悲しく結ばれたが故に起こった事の顛末、最後の最後にきたどんでん返しなどは面白かった。とくに最後は次回作に続きそうな終わり方で気になる。

僕の脳裏に、チューブで雁字搦めにされた祖母の顔を浮ぶ。あれこそ医療の現実。あの光景は果たして、人の生の最後の姿として、ふさわしかったのだろうか。

天馬が祖母の最期に感じた医療への不信感に、『病院で死ぬということ』の著者・山崎章郎医師の姿が重なる。山崎医師は自分が感じた疑問を契機に、ホスピスを作ることを目指した。銀獅子が天馬に穿った一撃は、因縁めいた感情を越え、同じ医療を志した先輩としての一撃であったのかもしれない。天馬もやっと自分が目指すべき医療の道に真摯に向き合いそうだし。
ここで扱われている終末期医療について、すみれが目指した方向性、小百合が行なった行為、ともに奥が深い問題だ。町の医療の闇を呑み尽くした白鳥の正念場はこれから先に待っている。果たして巌雄の言葉は現実として白鳥に返ってくるのか。
ともあれ、最後に「ブラボー!銀獅子」とだけ熱烈に言っておこう。

(2006年1月13日読了)
| 海堂 尊 | 22:47 | comments(14) | trackbacks(8) | | |

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♯ コメント

こんばんは。

>前回、今回とこじんまり…
白鳥君も同じ時期に大きな問題をかかえてて、忙しかったんだと思います (^^ゞ
氷姫には、いい意味裏切られました(笑)
白鳥君をスパッと「切る」ようなイメージだったんだけどなぁ。

次は「北」が舞台になるんでしょうか!?
楽しみです。
| juzji | 2007/01/27 11:10 PM |
雪芽さん、こんばんは。
登場人物が濃くて魅力的でしたね。
特に院長の銀獅子はまさに、ブラボー!ですね(笑)。
「病院で死ぬこと」のお話に、ちょっとびっくりでした。
次回作が楽しみです。
| 藍色 | 2007/01/28 1:41 AM |
juzjiさん、こんにちは。
超人白鳥に不可能はないと思っていたのに、なんて(笑)
いまは低く守りの体制も取りつつ、次はこれぞ白鳥というパンチを読者にも喰らわしてくれるのでしょうね。
ああ、わかりました。
氷姫の氷のイメージが違っていたんです。
そう考えれば海堂さんにやられたということですね(笑)
敵は「北」にあり。さあ、どうくるか楽しみです。
| 雪芽 | 2007/01/28 12:24 PM |
藍色さん。
いつもながら個性的で濃いキャラで楽しませてくれますね。
どうして皆そんなに濃いんだというくらいに濃い(笑)
中でも銀獅子は今回のイチオシです。
山崎さんは日々接する患者さん達の終末期の医療のあり方に疑問を感じ、自らホスピスを立ち上げた方なんです。
深く感銘を受けた本だったので、天馬の視点に記憶が甦りました。
次回作も楽しみですね。
| 雪芽 | 2007/01/28 12:42 PM |
いやー全く持ってイラつきましたね〜。伊良部先生だってここまでイラつきませんよね〜。というか伊良部先生専属看護婦になって、最強コンビでやってほしいものです★
こんなキャラを作り上げるなんて、海堂さんはやっぱキャラ作りはすごくうまいですよね。感心しました!!
| やぎっちょ | 2007/01/28 5:14 PM |
やぎっちょさん、こんばんは!
伊良部先生と一緒だと最強コンビかもしれませんね(笑)
絶対患者にはなりたくありませんが。
海堂さんはキャラ作りは上手いですね。
皆変わった、いやゴホン、個性溢れるキャラばかりで楽しませてくれました。
| 雪芽 | 2007/01/28 9:40 PM |
こんばんは!
氷姫は私も意外でしたが、次はもっと慣れてしっくりくるかもというところは私も同じ期待をしてます。
医療現場の抱える問題、終末期医療のあり方に対する考えは結構興味深かったです。
次はどんな話が待っているのか、終わり方が憎いですよね〜気になって、次も読んじゃうんだろうなぁ(笑)
| エビノート | 2007/01/28 9:43 PM |
エピノートさん、こんばんは!
氷姫はこれからが本領発揮になるやもですね。
氷姫のギャップのことばかり気を取られていましたけど、
すみれと天馬の屈折した恋愛感情の遣り取りも、
ストーリー的にせつなさが滲んでいたといまさらながら思います。
天馬としては青春の旅立ちだったのかなって。
あのラストは引っ張りますよね。
次も読んじゃうじゃないか〜、気になって。
結局作者にノセられてるってことでしょうか^^;
| 雪芽 | 2007/01/28 10:24 PM |
こんばんは。
コチラの記事にTBさせていただきました。
今回も個性豊かな登場人物たちがてんこもりで、
あらためてキャラ作りのお上手さを実感しました。
氷姫はいい意味で私を裏切ってくれて、
なかなか愛すべきキャラだったなぁと思いました(私ってば変かしら?)
ラストの一文には戦慄しました!!
これで終わりではないのね!?という感じです。
4月にもう次作が出るそうで。
次こそっ!!田口センセがもっと出てきてほしいなぁ…
| Rutile | 2007/02/15 10:39 PM |
Rutileさん、おはようございます!
毎回個性豊かな登場人物達が楽しいですね。
その分田口先生の影がどんどん薄くなっているような。
いつも物語りの片隅にいる、という位置はキャラ的にお似合いだけど、もうちょっとだけでも前へ前へ出てきて欲しいですね。
4月に続編とはほんと早い。
田口先生の活躍も含めて次回作に期待!
氷姫は予想外でした。
確かに愛すべきキャラと思えるところもあるんですけど…(イライラ感先行で言葉がムニャムニャとなってる・苦笑)
| 雪芽 | 2007/02/18 10:37 AM |
雪芽さん、『ジェネラル・ルージュの凱旋』から、こちらへお邪魔してしまいました。
私は『螺鈿迷宮』が初読みで、「お医者さんが書く医療小説」のきめ細かさに、度肝を抜かれました。
しかも、アンラッキートルネードとか、ミス・ドミノとか、噴き出すところ多々。
確かに、白鳥が論理怪獣ぶりを発揮する部分があまりなく、その点は物足りなく感じられたのかもしれませんね。(「バチスタ」未読時代は全然そんなこと思いませんでしたが)
| 水無月・R | 2007/12/10 12:08 AM |
水無月・Rさん、こちらへもお立ち寄り、ありがとうございます(^.^)
これが海堂さん初読みだったのですね。
幻想的な描写も多くて、そこは好きな点なんですが、可笑しさのあまり噴き出すことも多かったですね。ミス・ドミノがあまりにぴったりで、天馬くんは災難のドミノ連鎖、お気の毒なことです(笑)
なんせ最初に『バチスタ〜』読んでしまいましたからね、刺激が足りませんでした。
| 雪芽 | 2007/12/10 9:13 PM |
はじめまして!!
学生なんでお金がないのですが、この記事読んでこの本買わなきゃ!と思いました☆
| たけ | 2008/01/12 6:01 PM |
はじめまして、たけさん。
コメントありがとうございます!
学生さんなのですね。
読んで面白いって感じて頂けると嬉しいなと思います。
同じ海堂さんの『チーム・バチスタの栄光』はもう読まれましたか?
こちらはお財布にも優しく文庫化されています。
内容も文句なく面白いですよ〜
「螺鈿迷宮」と共通する登場人物も出てきます。
| 雪芽 | 2008/01/12 8:46 PM |

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