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*「スプートニクの恋人」 村上春樹

スプートニクの恋人
スプートニクの恋人
村上 春樹
宇宙の暗闇にぽっかりまあるい地球が浮んでいる。衛星スプートニク2号に乗せられたライカ犬は、どんな思いで地球を見ただろうか。深閑とした宇宙の静寂を、孤独と不安を乗せて地球を周回する衛星は、あまりに寂寥として哀しい気持ちになる。

22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。それは行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒し、片端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎり、完膚なきまでに叩きつぶした。―― そんなとても奇妙な、この世のものとは思えないラブ・ストーリー!!

職業的作家を目指すすみれと、彼女が恋に落ちた「ミュウ」という愛称で呼ばれる年上の女性との成り行きを、ぼくの視点から物語っていく話だ。
もともとぼくとすみれは同じ大学の先輩と後輩にあたる。ふたりに共通するのはともに熱心に小説を読む人間であったということ。ぼくはすみれに恋をしていた。それでいてふたりの距離は、あくまでも「友だち」という位置を維持し続けている。
同じ軌道上をいくふたりに起きた変化、というより片方だけが変わっていったのだが、それはすみれが恋をしたことだった。
比喩的表現を多用した会話がいかにも村上春樹らしい。らしいといっても昔のといったほうがいいかもしれないが、だから懐かしさを感じたのだろうか。らしいといえば、語り手であるぼくの体感温度の低さもある。低体温ということでなしに、がむしゃらとか熱血とは無縁のところにある一歩引いたような物事への姿勢というべきか。さらにいえば、なんとなく女性に不自由しないのも村上作品に登場する男性の特徴だなと思う。これがいつも不思議で仕方ないのだが、実際そんなものだろうか???(疑問符が多過ぎる?←またしても)

この作品から強く感じたのは「孤独」と「喪失感」だった。
ミュウが経験したふたつの世界は何を意味するのか。こちら側に残された半身の自分。あちら側とこちら側。すみれが失われたこちら側の世界で、ぼくもまたもとのぼくではなくなっている。

ふたつの衛星の軌道がたまたまかさなりあうとき、わたしたちはこうして顔を合わせる。あるいは心を触れ合わせることもできるかもしれない。でもそれは束の間のこと。次の瞬間にはわたしたちはまた絶対の孤独の中にいる。いつか燃え尽きてゼロになってしまうまでね。

スプートニクのように、地球上に生れ落ちてから人生という軌道上を歩く人も、孤独を自分の内に乗せている。孤独にあって他者との繋がりを求め、なお孤独に苛まれるという人の姿があるのだ。
最後にすみれからぼくに掛かってきた電話。ふたりは再び軌道上で巡り合うことができるのか、結末は明らかにされていない。
それでもこれは長い軌道の果て、再び互いを見つけるぼくとすみれのラブ・ストーリーなのだと思った。

村上春樹はすごく好きな作家のひとりだったけれど、いつの頃からかその気持ちが薄れ彼の作品から遠のいていった。『海辺のカフカ』文庫版を読んだのがきっかけで、また少しずつ読み始めている。空白の時間を埋めるように。
村上春樹の書く文章自体は難しくないと思うのだ。ところがいざ感想を書いてみようとするとはたと困る。咀嚼しきれずに口の中に言葉の欠片が残って飲み込めずにいる。なんとしよう。だから何度となく読んでみたい気になるのかもしれない。

(2007年3月21日読了)
| 村上春樹 | 21:03 | comments(2) | trackbacks(3) | | |

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♯ コメント

雪芽さんとは逆で、
私はこの小説を村上春樹らしくない
と感じました 苦笑
でも記事を読ませていただき、
小説から受けた印象は
きっと同じなのだ、とも思いました 笑
| yori | 2007/05/06 12:30 AM |
yoriさん、こんばんは。
「アンダーグランド」以前の作品の印象がずいぶんの前のことで希薄で(忘れっぽいですね)、どんなだったかなと考えた時、回りくどい(笑)比喩の印象が浮んだので、懐かしい感じがしたんです。
ただ、確かに作品として村上春樹っぽいかといえば、どうかなと思います。
そこで読み比べるのに『ノルウェイの森』を再読したいと思いましたが、これって当時、らしくない(新境地を開いた)恋愛小説だったかなと。選択間違えたでしょうかね。
| 雪芽 | 2007/05/06 8:19 PM |

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