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*「いとしい」 川上弘美

いとしい
いとしい
川上 弘美
母性より女性を匂わせる母と、売れない春画を描く義父に育てられた姉妹ユリエとマリエ。温かく濃密な毎日の果てに、二人はそれぞれの愛を見つける。高校教師になった妹マリエは教え子のミドリ子の兄と恋に落ちるが、ミドリ子の愛人は母の恋人だった……。芥川賞作家が描く傑作恋愛小説。

ユリエとマリエは十一ヶ月違いの姉妹。ごっこ遊びに興じたり、義父が描く春画をまねて男女の性愛を想像してみたり、といった少女期特有の空想世界を抜け出し大人になったふたりは、それぞれに恋をする。
マリエが親密な関係を結ぶ相手となるのが、教え子ミドリ子の兄紅郎。
西日の時刻に抱き合いながら、自分の口からもらしてしまう“あ”が、ああ、なのか、あめふり、なのかとマリエが様々に考えるあたりいかにも川上さんぽく、西日の反射を受け重なるふたりの描写が音を奏でるのに似て美しく、マリエの中に幸せが満ちているようで一番好きな場面といえる。ラストを考えると、ここだけぽかりと明るい。後で振り返ると、明るさを感じた分悲しく思えるのでもあった。

一方のユリエが好きになったのはオトヒコくん。
なにが出てきても不思議はない川上作品だが、これは植物的というのか、昆虫的というのか、現実感覚とは遊離した展開の中で、ユリエは好きになるということを突き詰め、自分たちの恋のあり方を決めるのだ。

「好きでいようって」
「なんだかわからないものでも?」
「どんな不確かだとしても、決めたからいいの」

この話に登場する女達は母であるよりも、妹であるよりも、娘であるよりも、女である存在感のほうが勝っている。タイトルのひらがなから受ける印象同様、柔らかな表現にすんなり読んでしまうが、実はとても艶めいた空気を持つ話でもある。

紅郎とマリエが作る空間をミドリ子の影が侵食し始めマリエを脅かし、またミドリ子は姉妹の母の恋人だったチダさんとも付き合っている。ミドリ子の身体的捻じれとあいまって、登場人物達の愛の向う先も捻じれ絡み合う

チダさんの手作り豆腐を食べながらの対決場面が印象深い。
豆腐が美味しそうで食べたくなってしまう。と呑気な感想を述べてみたが、これは対決なのである。豆腐大食い対決ではない。それだと笑いのほうへ話が転がっていきそうだ。もっと真剣な、何かを決する対決なのだ。やがて言葉にしなくとも対決の答えは決する。床に座り込んでしまう、この時のマリエの心境を、短い言葉を重ね書くあたりがほんと巧い。読んでいてぐいぐいとマリエの悲しさがこちらに浸透してくる。同じに悲しいような心持ちになる。もう座り込むしかない。

誰かを好きになるということは、誰かを好きになると決めるだけのことなのかもしれない

ふわふわと漂い揺らぐ人の感情。どこで繋ぎとめればよいのだろうか。どこかで繋ぎとめなければいけないのだろうか。
ときおりコワサの覗く話でもあった。

(2007年3月25日読了)
| 川上弘美 | 19:56 | comments(0) | trackbacks(1) | | |

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| 川上弘美? | 2007/06/01 7:52 AM |
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