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*「雪屋のロッスさん」 いしいしんじ

雪屋のロッスさん
雪屋のロッスさん
いしい しんじ
人の名前だとか、たまに間違ったまま覚えてしまい、錯誤に気づいてからも正しい呼び方が上手く記憶に上書きされないことがある。
ロッスさんも、どういうわけかロッシさんになる。ロッスさん、ロッスさんと頭で繰り返すが、ふいにロッシさんがこんにちはと顔を出す。違う違うロッスさんだよね。そうそうロッシさん、という按配だ。なぜだろうと考えて思い当たったのがロッシーニ。歌劇『セビリアの理髪師』などの作曲で有名なロッシーニだった。ロッシーニという単語のほうが記憶に馴染んでいたのか(ロッシーニの曲自体は馴染みがないのに)、ロッときたらシとじゃが芋を掘り起こすように芋づる式に、正しきスを差し置いてシがまかり出てきたようだ。
多少の混乱はあったものの、本を読んでやっとロッスさんが記憶に馴染んだようだ。とは言いつつ、ロッシさんがロッスさんの背後で、虎視眈々と前に出る機会を窺っているかもしれない。負けるなロッスさん!

ロッスさんとロッシさんの話はさておき、この本は30の仕事とそれに携わる人々の物語だ。
ひとつひとつの話はとても短い。人生という長距離走で身体をすり抜けていく一瞬の風景を、温かさと悲哀の混じった絶妙な配色で描き出す。次はどんな職業、どんな人だろうかと先を読み急ぎたくなる魅力溢れる物語。どこか不思議な雰囲気のある珠玉の短編集だと思った。
次へいきたいが一話ごと余韻にも浸りたい。ひと月が30日ある月に、ひとつずつ読めばよかったと思い至ったのは、半ばに差しかかろうという頃だ。ああ、惜しい。もっと惜しいのは図書館本だということ。考えてみれば30日計画は端から無理な話だったか。
どれもが短い作品だけど、どの作品を読んでもあっという間に、主人公の人生に引き込まれてしまう。もしやほんとに世界のどこかで息づいていると思いたくなるほどに、自然に登場人物の日常に入っていける。
様々な職業につく人々の話を読むうちに感じたのは、人が仕事に見出す誇りというのだろうか、凛とした輝きだった。他人の目には触れない、隠された光が内側を照らしている。
どの話が好きかと聞かれたら、全部と答えるだろう。これはなかなかないことだ。抱きしめ本(本の中の物語世界が好き好き大好きで、物語を抱きしめることは出来ない替わりに、本を抱きしめたくなるという本)がまた1冊増えた。
全部好きだけど、その中からいくつか個別に感想をあげてみる。

雪屋のロッスさん
まあ幸いなことに、雪はいずれ溶けます。はかないようですが、そこが雪のいいところです。

ほんとうにねぇ、そのとおりですよ、ロッスさん。新緑が芽吹くいまの季節、人も街も埋もれそうな雪景色はもうどこにもありませんからね。いつか雪は溶ける。話に登場した男の過去の悲しみも、いつか溶けていくことをロッスさんと一緒に願いましょうか。

風呂屋の島田夫妻
湯船のほかほかした温もりのように、最後は幸せ感に浸れる話だった。

ブルーノ王子と神様のジョン
最後のくだりがもう泣かせる。ブルーノ王子の言葉に住民たちが取った行動、このラストの一撃は見事だった。

いしいしんじさんの本を読んだのは初めてだったけど、この本は読んで、出会えて、ほんとよかったと思える本だった。

(2007年3月30日読了)
| ■あ行の作家■ | 13:13 | comments(10) | trackbacks(6) | | |

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♯ コメント

こんばんは、雪芽さん。
いしいしんじの世界はメルヘンファンタジー?
独特な世界ですね。
短い作品ばかりでしたが
どれもが不思議に心地良かったです。
| モンガ | 2007/05/12 10:30 PM |
モンガさん、こんにちは。
メルヘンファンタジー、どうでしょう。けっこう毒の苦味が効いていますからね。
日常とちょっとだけずれた不思議な世界がよかったです。
| 雪芽 | 2007/05/13 3:11 PM |
雪芽さん、こんばんは。
私も一気に読んでしまったので、もったいないような気がしています。
でも雪芽さんと同じ図書館本だったので、途中で気がついた1日1話計画は無理でした〜。
どれもこれも良くて、素晴らしい短編集でしたね。
| 藍色 | 2007/05/13 11:20 PM |
藍色さん、こんばんは。
一気に読みたいと思う本ほど、一気はもったいなくて、読みた〜い、いやいや待て、止まらな〜い、ちょっと待った、みたいな心理的ジレンマに悩みます。とっても贅沢なことですね。
| 雪芽 | 2007/05/16 9:31 PM |
雪芽さん、こんにちは!
お伺いするのが遅くなってごめんなさい。

ロッスさん、前面で頑張ってますか?(笑)
ロッシさんがすぐ出てきちゃったりしませんか?
…と間違えて覚えてしまうとなかなか馴染むのに時間がかかってしまいますよねぇ。

どれも素敵なお話しでした。
決してほんわかする話しばかりではないのですけど、
それでも味わいがあって惹かれてしまう。
ゆっくりゆっくり1編ずつ読むのがきっといいのかもしれませんが一気読みしちゃいますね、どうしても。
時々本棚から取り出してはパラパラ読み返したりします。
| リサ | 2007/05/17 8:40 AM |
私はついついロッソさんロッソさんと……
ロッソネロという有名なサッカークラブの
ニックネームが原因だろうと思われます
| たまねぎ | 2007/05/20 1:19 AM |
リサさん、こんにちは!
お忙しいところコメント頂いて嬉しいです(^.^)
大丈夫です、ロッシさん踏ん張っておりますよ〜、どすこい(笑)
どの話も素敵でした。
ホロ苦ささえ絶妙なお味です。
ああ、やっぱり時折読み返してみたいな。
本屋さんの本棚で再会したら即購入なのに、置いてないのはなぜ?
| 雪芽 | 2007/05/20 5:44 PM |
たまねぎさん、こんにちは。
ロッスさん、ロッシさん、ロッソさん……
う〜ん、頭の中がこんがらがり迷宮状態です。
面白いのはどれもサ行だということ。
こうなったらロッサさん、ロッセさんも出てらっしゃい!
| 雪芽 | 2007/05/20 5:47 PM |
雪芽さん、こんばんは(^^)。
私も「ブルーノ王子と神様のジョン」が好きです〜!
ブルーノ王子は私の中で、凛々しく輝く姿を内包しています!(たとえ見た目は宿なしでも!)
30の職業、皆が自分の職業に誇りを持っている。どれもが素敵なファンタジーでした。
| 水無月・R | 2008/02/10 11:39 PM |
水無月・Rさん、こんばんは。
同じ作品が好きとは嬉しいです!
ボロ(まあ例えとしてですが・笑)は着てても心は王子とはこのこと。
あの最後の行動は眩いばかりでした。
読んだ時の感動が甦ります。この本手元に置いておきたいな。
誇りを持って仕事が出来るっていいですよね。
| 雪芽 | 2008/02/12 9:46 PM |

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