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*「廃帝綺譚」 宇月原晴明


宇月原 晴明 / 中央公論新社(2007/05)
Amazonランキング:80736位
Amazonおすすめ度:


『安徳天皇漂海記』につらなる連作短篇集ときけば、なにをおいても読まずにいられましょうや。
本屋に平積みされ、どこか見覚えのある波頭砕ける表紙を目にした瞬間、思わず本を胸にかき抱いていたのである。

元末の順帝、明の二代建文帝、明朝に幕を下ろせし崇禎帝、承久の挙兵むなしく隠岐に流されし後鳥羽院…。廃され追われ流された4人の帝王たちをめぐる、「安徳天皇漂海記」につらなる連作短篇集。
「MARC」データベースより

滅びにある寂寥と美学はこの本だけでも充分味わえるとはいえ、やはり『安徳天皇漂海記』も合わせて読みたいもの。そうすればよりいっそう味わい深いものとなることは間違いない。なぜなら二冊を費やして語られる物語は、ひとつの大きな環の中にたゆとうているからである。
四つの短篇は大きくふたつに分かれる。
遠く異朝をとぶらへば――
「北帰茫茫」で元朝最後の皇帝順帝を、「南海彷徨」では明の二代目にあたる建文帝を、「禁城落陽」は明末期の崇禎帝を描き、ついに時代は明から清へと移り変わっていくのである。
と書いたものの、この時代はあまり得意ではないのである。中国古代史ものは昔よく読んだが、ここいらへんはさっぱりなのだ。そんなことは抜きにしても、廃されていく帝達の姿はともに孤独であり、哀しい色を帯びている。愚鈍な帝であれば次にとって変わられるのは必定。しかし、歴史はそんなに単純ではない。最高の地位にある帝といえども、抗えぬ力にその身をさらわれてゆくことはあるのだ。次に選ばれた者が時代に乗る。
代々の帝達の手を密かに渡ってゆくのが、マルコ・ポーロが残した『驚異の書』であった。世に出た『東方見聞録』ではない。隠された書である。さらには伊邪那岐、伊邪那美の流された子・水蛭子の残身である真床追衾(マトコオオフスマ)が凝りし大珠が側にある。
伝説の宝珠の力を信じ、娘・公主を守ろうと恐るべき行動に及んだ崇禎帝の悲痛。その後の珠の神秘的な描写はぞくぞくするほど美しい。

近く本朝をうかがふに――
「大海絶歌」は日本の隠岐に舞台が移る。承久の乱により隠岐へ配流となった後鳥羽院は、源実朝が残した『金塊和歌集』と独り対峙する。後鳥羽院のもとにあるのは淡路と呼ばれる小珠。夢か現か、ここで物語りはひとつの環を閉じる。
おお、すごい〜!
またしても最後は美しく幻想的。『安徳天皇漂海記』の最後のような強烈なインパクトはないにしても(あれはどこか宇宙の果ての出来事のようだったから・汗)、この物語を締め括るにふさわしい眩い余韻が残る。
『安徳天皇漂海記』と『廃帝綺譚』はいうなれば、大珠、小珠のようにひとつの物語といってもよいような、哀しさに美しい響きを漂わせた話だった。

2007年6月22日読了

『安徳天皇漂海記』の感想
| 歴史・時代小説 | 19:55 | comments(4) | trackbacks(2) | | |

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♯ コメント

歴史に関しては知らないことも多かったんですが、
元や明の皇帝たちの人生、その思いが哀切でした。
そして、本朝の話で二つの和歌が響きあう様子は本当に見事でした。
『安徳天皇漂海記』と合わせて、何度でも読んでみたいです♪
| エビノート | 2007/08/19 11:00 PM |
エピノートさん、こんばんは〜♪
『安徳天皇漂海記』も含めて、この世界には強く惹きつけられます。
切々とした想いが全編に流れているからでしょうか。
二つの和歌が見事に物語を締め括ってしれましたね。
なんて美しいラストなんでしょう、とうっとりとしばし時を忘れそうになります。
私もです、2冊通して読んでみたくなりました!
| 雪芽 | 2007/08/21 11:48 PM |
雪芽さん、こんばんは。
『安徳天皇漂海記』に続いて『廃帝綺譚』、読みました。
またまた、あまりの素晴らしさにうわごとのような文章を書いてしまいました…とほほ。

ああ、「滅びにある寂寥と美学」。そうなんです。
その美しさ、儚さ、心もとない寂しさ。
まっとうな感想を書くこともできないぐらい、感激した物語でした。
| 水無月・R | 2007/09/20 11:16 PM |
水無月・Rさん、こんばんは。
『廃帝綺譚』読まれたんですね〜
正直凄く感動の余韻が残る本の続編のようものは、期待値が高いだけに読むのが怖いのです。
でも、そんな心配は要りませんでした。
ああ、好きですこの世界。

| 雪芽 | 2007/09/22 10:03 PM |

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廃帝綺譚 〔宇月原 晴明〕
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| まったり読書日記 | 2007/08/19 10:54 PM |
『廃帝綺譚』/宇月原晴明 ◎
イザナギ・イザナミ神の産みたもうた長子(だが子とは数えられていない)、「水蛭子(ひるこ)」。天皇家代々に伝わる「3種の神器」とは別に、天子を護る類なき秘宝として受け継がれてきたその「水蛭子〜真床追衾(まことのおうふすま)〜」の玉に包まれ、大海を漂い、
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