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*「東京公園」 小路幸也


小路 幸也 / 新潮社(2006/10/28)
Amazonランキング:37742位
Amazonおすすめ度:


シャッターを切る。流れゆく一瞬が切り取られて一枚の写真となる。
写し取られたのは被写体となった人や風景なのか、あるいは写した人間のその時の思いなんだろうか。写真はありのままを写す。けれどただ写っているだけ以上のものを感じる何かが、切り取られた一枚にはあるように思うのだ。
「幼い娘と公園に出かける妻を尾行して、写真を撮ってほしい」―くつろぐ親子の写真を撮ることを趣味にしている大学生の圭司は、ある日偶然出会った男から奇妙な頼み事をされる。バイト感覚で引き受けた圭司だが、いつのまにかファインダーを通して、話したこともない美しい被写体に恋をしている自分に気づく…。すれ違ったり、ぶつかったり、絡まったりしながらも暖かい光を浴びて芽吹く、柔らかな恋の物語。
「BOOK」データベースより
風がそよそよと吹いているような、なんともいえない心地良さに包まれる。
同居人のヒロも大学の友人も、圭司の両親や姉も自分の居場所で静かに呼吸し、圭司を温かく取り囲んで、ゆっくりとした時間が物語を流れていく。奇妙な頼み事をしてきた初島さんにしても、不穏な空気を孕む依頼とは裏腹に、穏やかな佇まいをみせる。圭司の幼馴染みである富永という女の子だけは、行動も性格もポンポンと弾けてどこへ飛ぶかわからないゴムまりのようで、一見エキセントリックにも思えるけど、この物語の中ではかえって魅力的な存在だ。

いくつかの公園を巡り写真を撮り続けるうちに、カメラマンと被写体である百合香の距離感が揺らいでいく。自分の内に芽生えた淡い思いに気づき、それがほんとうに恋愛感情なのか戸惑いつつ自問する圭司。彼の傍らで心配しながらも意外な行動で驚かせたヒロの気遣い、さらにその上をいった富永の唖然とする行動。圭司、ヒロ、富永、男二人に女一人の友人関係が妙にしっくりくるところが面白い。三人で映画を観たりご飯を食べている場面が楽しげだ。

「欠片を探しているって童話があったよね」


ヒロが口にした有名な絵本に出てくる僕のように、人生を転がりながら登場人物達もそれぞれの生き方を生きている。誰かのために生きることだったり、誰かに寄り添わない生き方だったり。途上にある圭司も周りの人の考えに触れ、急がずゆっくりと行く。読みながら自分の転がり方を考えたりもした。

圭司の恋の行方が向う先も気にかかりはしたが、やはり一番の謎は百合香が子供を連れて頻繁に公園に向う理由である。このうえないくらい爽やかな収束ではないか。いい人達ばかりの登場人物ではあるが、押し付けがましくさもなく、全体に透明感があるのがよかった。

圭司と百合香の関係性を『ベルリン天使の詩』になぞらえているも上手い。好きな映画でもあるので懐かしく思った。そういえば最近読んだ伊坂さんの『死者の精度』にも映画のシーンが想像される下りがあった。秋の夜長に観てみたい映画のひとつだ。

2007年8月28日読了
| 小路幸也 | 18:34 | comments(14) | trackbacks(9) | | |

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♯ コメント

「君が好きだ、と言う代わりに僕はシャッターを押した」というコピーが昔々ありました。たしかオリンパス「OM-2」のコマーシャルだったと思います。今も昔も写真は想いを伝えるモノなのですね 笑
| yori | 2007/09/02 9:14 PM |
yoriさん、こんばんは。
ああ、ありましたねそんなCMが(笑)
昔から写真にもですが、写す人にも興味があって、
この本は撮る側の心理が描かれていているところも面白く読みました。
| 雪芽 | 2007/09/02 11:17 PM |
こんばんは!
物語の中に浸っていると本当に心地よい作品でしたね。
まるで自分自身も公園で、ゆったりと穏やかな時間を過ごしてくるかのような心地でした。
| エビノート | 2007/09/04 11:10 PM |
こんばんは、雪芽さん。
写真をやり始めるころ、私も公園めぐりをしましたので懐かしく感じた部分もありました。
単純にこの作品と重なるところがあって思いいれの本です。
| モンガ | 2007/09/05 12:35 AM |
雪芽さん、こんばんは。
爽やかで清々しい気持ちにさせてくれる物語でしたね。
みんな、穏やかなキャラクターで読んでいて心地よかったです。
| 藍色 | 2007/09/05 2:11 AM |
エピノートさん、こんばんは。
公園を散策していると錯覚してしまいそうになりました。
時間の流れが違います。とてもゆっくり。
こんな穏やかな話も時にはいいものですね。
| 雪芽 | 2007/09/05 10:22 PM |
モンガさん、こんばんは。
自分となにかしら重なる部分があると、
ぐっと作品が身近になりますね。
デジカメしか持っていませんが、
お散歩写真撮って歩きたくなりました。
| 雪芽 | 2007/09/05 10:23 PM |
藍色さん、こんばんは。
老いも若きも穏やかなキャラクターですね。
見習いたいものです(笑)
新緑が香るような清々しさを胸いっぱい深呼吸しました。
| 雪芽 | 2007/09/05 10:24 PM |
そう言えばこの本でも天使の詩が出てきましたね。
だいぶ前に観たんで少し忘れてます。
久し振りにまた観てみようかな。
コロンボさんが楽しいんですよね。
| たまねぎ | 2007/09/07 12:08 AM |
雪芽さん、こんにちわ。
出てくる人みんな、いいひとでしたよね。
でも、それが押し付けがましくなくて
あたたかで穏やかないい話だったなぁと思います。
実は百合香さんの謎が心配だったのですが、
(いやな人だったらどうしよう・・と)
このうえなくさわやかな収束でほっとしました。
| june | 2007/09/07 3:03 PM |
たまねぎさん、こんばんは。
コロンボさんがそのまま登場でしたね。
9月は連休が多いのでゆっくり観てみたいのですが、果たして実現なるか。
続編にはナターシャ・キンスキーとかも出てました。
| 雪芽 | 2007/09/08 9:04 PM |
juneさん、こんばんは。
「東京バンドワゴン」といい、これだけいい人ぞろいの小路作品。悪役の人は出番がなくて困っているかも(笑)
百合香さんが途中で豹変したらどうしようって、実は心配してました。
そんなのは杞憂で、爽やかに終わってほっとしました。
| 雪芽 | 2007/09/08 9:09 PM |
清々しくて心地いい時間を過ごしました。
公園を散歩するっていうのも、今が春だからか、気持ちよさそうですごくいい気分。
出てくる人たちも、人間のいい部分だけを集めていたのも、ストレスの多いこのご時世、心の洗濯になりました。(笑)
「ベルリン・天使の詩」を絶賛する声が多い中、私は退屈で退屈でほとんど寝てたので、居心地悪いです。(笑)
| じゃじゃまま | 2008/03/25 5:22 PM |
じゃじゃままさん、こんばんは。
まるでほんとうに公園を散歩しているような、心地良さのあるお話でしたね。
小路さんの作品はどうしようもない悪人が出てくる確率が低いので、心のオアシスを見つけたように、優しい気持ちになります。
ご安心ください。「ベルリン・天使の詩」を観て退屈で寝てしまったのはじゃじゃままさんだけではありませんよ。
少なくともひとりは知っています(あ、少な過ぎ?・笑)
| 雪芽 | 2008/03/26 12:09 AM |

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