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*「トーマの心臓」

トーマの心臓
トーマの心臓
萩尾 望都
春も近い土曜の朝、少年は一通の手紙を残して死んだ。

ユリスモールへ
     さいごに
これがぼくの愛
これがぼくの心臓の音
きみにはわかっているはず


トーマ・ヴェルナーがユーリへ残した言葉の意味は?
少年の死は事故ではなく、自殺だったのか?

トーマと入れ替わるようにして、ギムナジウム、シュロッターベッツにやってきたのが、自由奔放、ママ・マリエから引き離された愛のさまよい子、トーマに生き写しの転校生エーリク。
品行方正な委員長として人望を集めながら、内面、神への信仰と人に明かせない過去との狭間で悩み揺れるユーリ。
二人の父への想いと、ユーリへの想いを秘めたオスカー。

少年達の繊細で煌く生命の一瞬一瞬が交錯する。
時に熱情、時に冷酷、時に哀しく、愛憎を交えた光と影が少年達の魂を浮かび上がらせていく。
最後にユーリはトーマの愛を、心臓の音を理解する。

愛しているといったその時から
彼はいっさいを許していたのだと

ただいっさいを 
なにがあろうと許していたのだと


トーマの無償の愛、許しを受け入れることが出来たユーリの心は、傷ついた過去から再生し、取り戻した天使の羽根で神の御前に飛んでいく決意をする。
或いは、ユーリ自身の天使の羽根は永遠に失われたままなのかもしれない。天使のようなトーマ、差し出されたその命が、ユーリの新しい羽根となったとも考えられる。
トーマの心臓の音はユーリと共に時を刻んでいくのだ。
神学校へ向うユーリの表情にある安息に、読む側としても長い緊張感から解放されたような、清々しい思いで本を閉じることが出来た。

「トーマの心臓」は萩尾望都初期の名作のひとつに上げられている。再度読み返してみて、なおいっそうこの漫画が持つ色褪せない魅力を感じた。

この漫画を読むとやはり浮んでくるのはH・ヘッセ。
少年期の不安定な繊細さからは「車輪の下」が、感受性豊かで自由奔放な美少年エーリクと、知性を重んじ神への道を選んだユーリにはそれぞれ、「知と愛」のゴルトムントとナルチスの姿が重なっていくようだった。
漫画の中でも、授業のひとコマとしてヘッセの名前もちゃんと出てくる。
今年4月から刊行の始まったヘルマン・ヘッセ全集の帯に、、萩尾望都の一文を見つけた。
“私はヘッセの世界に抱きしめられた”
臨川書店の刊行案内で、「ヘッセに帰る」という推薦の言葉を読むことが出来る。

萩尾望都はSF漫画も多く描いている。
ユーリとオスカーの部屋にある書棚に並べられた本の背表紙を見てみると、「レンズマン」があることに気づいた。アメリカのSF作家E・E・スミスのスペースオペラ、レンスマンシリーズだ。この本結構面白い。
ユーリがSFを読むとは想像しにくいから、オスカーの本だろうか。
と、これはだいぶストーリーから横道に反れた。

「トーマの心臓」に貫かれているトーマの無償の愛、根底にあるキリスト教の神への思想を、肌で理解するのはなかなか難しい。
そこにこの漫画の奥深さもあると思うが、難しいことはまず置いておいて、青春時代の惑いの時期を過ごす少年達の青春物語として読むだけでも、充分に面白い。
周りを振り回し、自分も振り回されて暴れまくる(?)エーリク始め、生き生きとしたギムナジウムの少年達の姿が楽しくも、また美しくもある。
それは青春という短い一時期がみせる、硝子細工の儚さ故だろうか。

萩尾さん、やっぱり好きな漫画家だ。
| 漫画 | 19:05 | comments(4) | trackbacks(0) | | |

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♯ コメント

うわぁ〜、嬉しいです。すでに涙目(笑)
いいですよね「トーマの心臓」そうなんです、何度読みかえしてもまた静かに感動しちゃいます。
雪芽さんの文章、素敵ですね。ヘッセ、なるほど〜。
“私はヘッセの世界に抱きしめられた”ですか。う〜ん、こうなるとまたヘッセも読み返したくなりますね。

うわ、雪芽さん、詳しい〜。本棚のSFまで〜(驚!)萩尾さんて、周りの細かいところまで遊び心あるんですよね。
「レンズマン」面白いのですか?読んでみたくなりましたよ。

私も萩尾さん、やっぱり大好きです。
ちなみに「トーマの心臓」では私はオスカーがごひいきです(笑)「訪問者」ではいつも泣いてしまいます。

| 瞳 | 2005/10/01 8:20 PM |
いらっしゃいませ〜、瞳さん。

昔読んだ時感動して、面白いってわかっているのに、また今回読んで感動してるんですよ。萩尾さん凄い!
登場人物で好きなのはユーリかな、苦悩する姿に惚れました(笑)
友達にするならオスカーですけどね。

ヘッセの本は昔愛読書だったので、これまた好きな萩尾さんもヘッセ好きなのが嬉しい。

レンズマンシリーズは古本屋で見つけて読んだんですけど、古い本なのでいまは探すの難しいかもです。
漫画に出てくる本棚とか小道具とか、そこにある遊びを見つけるのも楽しいんですよね。マニアックですか?(笑)

「訪問者」もまた読みたくなってきた!
萩尾さんの漫画はこれからも少しずつ感想で取り上げていきたいと思ってますが、萩尾さんの世界を言葉にするのって難しくて。
よかったらまた遊びにいらして下さいね〜
お待ちしてます。
| 雪芽 | 2005/10/02 6:42 PM |
モー様! 
この方がいらっしゃらないと、私の人生は違っていたと思います。それくらい、影響を与えてもらいました。
よく、竹宮恵子氏も引き合いに出され、「見分けがつかん」と男性に言われたことすら。でも、個人的に言うと、ぜんぜん違う!
何というか……同じ外国の一昔前の学園物で、同性愛が入っていたとしても、モー様のは「健全」さが根底にあると思うのです。
竹宮氏が不健全だっつー訳じゃないです(汗)。不健全も好きです。でも、少なくとも、ジルベールよりユリスモールの方が健全に感じた(笑)。
そういったところが、ドンピシャに自分に合っていたと思います。モー様、永遠なれ!
| U2 | 2005/10/07 7:37 PM |
U2さん、いらっしゃいませ!
望都さんファン、私の友達にも多いんですよ。
昔、函館近代美術館で「少女漫画の世界展」があった時は、原画を見に一緒に日帰りツアーしたほどでした。
先月だったか、BS2の「マンガ夜話」で成田美名子さんが、望都さんのことを熱く語っておられました。
いろんな方に影響を与えた漫画家さんですよね。しかも現役なのが嬉しい。

竹宮さんとは最初の頃、絵のタッチが似て見えたんでしょうかね。
ジルベールのエロスは性愛からその先にある愛の本質を見つめる、ユリスモールのエロスは個人の愛を越えて普遍の愛、神の愛に向うというところでしょうか。
私も不健全も好きです(笑)

U2さんのモー様愛も、どこかで語って欲しいなぁ。ぜひ読んでみたいですよ。お待ちしてます。
ディックもいずれ取り上げたいと思っていますので、またお時間あれば遊びに来て下さいね。
| 雪芽 | 2005/10/08 12:45 PM |

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