本や映画の感想、日々の雑感などを徒然に書いております
ネタバレもあるので未読の方はご注意ください
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*「秋の牢獄」 恒川光太郎

秋の牢獄
 
 秋の牢獄

 恒川 光太郎
 単行本: 223ページ
 角川書店 (2007/11)



囚われる。ある特定の一日という時間の中に、ひとつの場所に、心の内に出来た自分だけの王国に囚われる。囚われることが呼び起こす恐怖は、果てしのなさだろうか。

恒川さんの3作目となる新作は短篇集。表題作でもある「秋の牢獄」、「神家没落」、「幻は夜に成長する」の3つの作品が収録されている。

十一月七日、水曜日。女子大生の藍(あい)は、秋のその一日を、何度も繰り返している。毎日同じ講義、毎日同じ会話をする友人。朝になれば全てがリセットされ、再び十一月七日が始まる。彼女は何のために十一月七日を繰り返しているのか。この繰り返しの日々に終わりは訪れるのだろうか――。まるで童話のようなモチーフと、透明感あふれる精緻な文体。心地良さに導かれて読み進んでいくと、思いもかけない物語の激流に巻き込まれ、気付いた時には一人取り残されている――。角川書店HPより


少しネタバレ含む。未読の方はご注意下さい。
この先には知らないほうがよい異界が待っております。
異界の入口はどこにでもある。日常と隣り合わせだからこそ怖い。恒川さんの描く異界は美しいものだけがある桃源郷ではない。悪意や狂気、残忍性といった人間が持つ心の闇も、大きく口を開け待っている。またホラーの怖さと同時に、透明な文章から湧き上がる哀しさが、じわじわと沁みてくるのだ。恒川さんの作品に惹かれる重要なポイントはここにある。現代に通じながらノスタルジックな雰囲気があるところも好みといえる。

「秋の牢獄」は繰り返す11月7日に閉じ込められた女子大生の話。
設定自体は珍しくない。面白いなと思ったのは「北風伯爵」と呼ばれる謎の存在である。描写を読むと捉えどころがなくて、空気の温度が何度か下がる感じなのに、名前を聞くとそう怖く思えない。話の中でも怖れの対象である反面、明日への希望に繋がる要素もある。
童話としても読めるし、SFとしても読める作品だ。

一番好みなのは2番目の「神家没落」
小路から異界に迷い込んでしまう話としては『風の古道』にも通じる。
これは家に囚われてしまう話だ。前半は牧歌的な雰囲気もあるが、あとあとの展開は戦慄させる。剥き出しの感情の醜悪さ、行動の惨さ、歪んだ形での愛情、幽霊も怖いかもしれないけど、人間のほうが余程怖いよと思うのはこんな時だ。
深い絶望と寂寥感が残るラストもよかった。
ちなみに『ダ・ヴィンチ』12月号の恒川さんのインタビューを読むと、当初はもっと違う、ちょっといい結末になる予定だったらしい。読んだ感想としては実際本になったいまのラストでよかったと思う。

最後の「幻は夜に成長する」は、残念ながらあまり心惹かれなかった。
肉体と精神、二重の解放に歓喜するラスト、それまで主人公が置かれていた閉塞感の消滅に、ある意味すっきり〜なのだけど、実はもの凄く怖いラストだった。

趣きは異なるが、3篇とも恒川さんらしいホラー漂う作品だった。少し辛口の部分もあるけど、これからも楽しみな作家のひとりであることに変わりはない。本が出れば迷いなく買うだろうし、思わず表紙をナデナデして、幸せな気分に浸ると思われる。その分期待値は高い。勝手に高くしてごめんなさいなのだ。でも、期待してます(笑)
短編集、長編、短編集ときたので、次は長編でいかがでしょうか。

2007年11月7日読了
| 恒川光太郎 | 18:13 | comments(18) | trackbacks(10) | | |

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♯ コメント

雪芽さん こんばんは
私も2本目がお気に入りで、3本目には上手く馴染めませんでした。
幽霊よりも人間の方が怖い、確かにその通りだと思います!!
| yori | 2007/11/18 9:20 PM |
yoriさん、こんばんは。
前の2冊はどちらがと決められないくらい、好みにぴったりはまってしまいましたが、『雷の季節〜』よかったですね!好きな作品です。
今回出会った異界はちょっと馴染めないものもありました。それでも恒川ワールドはやはりいい。この世界観は大切に広げていって欲しいと思いました。
| 雪芽 | 2007/11/18 11:21 PM |
こんばんは!
北風伯爵よりも、人間の方が怖かったですよね〜。
三作目は他の作品とちょっと味わいが違う感じはしましたが(異界らしい異界が登場しなかったから?)、こちらもゾゾゾッと恐怖を感じさせれました。
順番からすると、次は長編ですかね〜?
次はどんな世界を見せてくれるのか、楽しみですね♪
| エビノート | 2007/11/19 9:17 PM |
エピノートさん、こんばんは。
ホラーに拘りを持つ恒川さんの作品らしく、ゾッとさせられましたね。
いろんな形の異界を私たちにみせてくれる力量はさすがでした。
「秋の牢獄」のように一日が繰り返されたとしたら、毎日本を読んで暮らしてみたいなぁ。
次がやっぱり待ち遠しいです!

| 雪芽 | 2007/11/22 9:07 PM |
こんばんは。
「神家没落」の理不尽で不気味な屋敷、
住む人によってこうも変わるものかって、戦慄でした。
ホラーは苦手なんですけど、なんとなく心惹かれる内容でした。
次も読んでみようと思います。

トラバさせていただきました。
| 藍色 | 2007/11/24 4:00 AM |
藍色さん、こんばんは。
「神家没落」は最初の翁に誘われるあたりの描写、
妖しく物悲しい空気を纏っていて好みでした。
そのまま幻想的な話へいくかと思ったら最後は戦慄。
結局住む人の心が映し出されるのかと。
恒川さんの作品はホラーが苦手でも大丈夫ですね。

いつもTBありがとうございます。
| 雪芽 | 2007/11/25 12:45 AM |
ご無沙汰してます( ̄□ ̄;)!!
お元気ですか??

恒川さんの新刊、良かったですね(´Д`*)
「神家没落」は足を踏み入れたいような
踏み入れたくないような
不思議な話でした。
あたしは「幻は〜」のが好きでした(^_^;)
とゆうか、全部良かった!(笑)
| 弥勒 | 2007/11/25 6:05 PM |
弥勒さん、こんばんは!
ブログにはお邪魔しているのですけど足跡残さず、
すっかりご無沙汰になってしまいました。

弥勒さんは「幻は〜」がお気に入りでしたか。
私はすご〜く期待し過ぎたためか、
んん?と感じるところもありました。
でも、恒川さんならではの世界ばかりで、
怖さと不思議さの感覚に浸りました。

| 雪芽 | 2007/11/25 11:10 PM |
可能性があるからこそ期待してしまうわけで、それこそ恒川さんには高くなってしまいますよね。
どの短編もさらなる広がりを見せる余地を残していますし、長編というのをやはり求めたくなってしまいます。
| たまねぎ | 2007/12/13 9:52 PM |
たまねぎさん、こんばんは。
デビュー作で受けた衝撃というのは長く尾を引くもののようです。
恒川さんの新たな試みが、これからの作品にどんな形で繋がっていくのか楽しみです。
| 雪芽 | 2007/12/14 12:31 AM |
こんにちは。

「神家没落」の、目に浮かぶような路地の風景はすごかったですね。
個人的には「幻は夜に成長する」のラストに歓喜しました。
どうやら悪趣味なようです。
| しんちゃん | 2007/12/26 1:10 PM |
しんちゃん、こんばんは。
「幻は夜に成長する」のラストよかったですね!
ゾクリとするとともにある意味痛快感さえあって。
「神家没落」は冒頭の描写にすんなり異界へと引き込まれました。
次回作も楽しみです。
今度はもっと先入観なく、拘りなく、まっさらな気持ちで読まなくてはと思いました。
| 雪芽 | 2007/12/26 10:09 PM |
私も「神家没落」好きでした。「風の古道」に似てましたよね。ふと迷い込んでしまうかもしれない恐怖、よからぬことをしてる男、その男との対決。
是非長編で読んでみたいテーマです。風の古道のレンにまた会いたいです。
| じゃじゃまま | 2007/12/27 10:04 PM |
じゃじゃままさん、こんばんは。
>レンにまた会いたい
私もです!
「風の古道」が好きだということもあってか、「神家没落」が一番すんなり物語りに入り込めたのかもしれません。
今度はぜひ長編でも読んでみたいですね。
| 雪芽 | 2007/12/28 10:48 PM |
雪芽さん、こんばんは(^^)。
私は、「いつか気がついたら異界にいた…」そんな「秋の牢獄」が一番好きでした。
物悲しい晩秋。人に頓着せず、冷やかに通り過ぎてゆく北風伯爵。ただ、ひたすら、繰り返す1日。
恒川さんの、美しい世界観に惹き込まれました!
| 水無月・R | 2008/01/21 10:13 PM |
水無月・Rさん、こんばんは。
ここから一歩足を踏み入れたら異界です、という何の表示も警告もなしに、気がついたら異界というのが怖いです。
日常の地続きというところが。
繰り返す一日はそんなに嫌でもない気がしました。
あれやりたいこれもと妄想が^^;
それも最初だけなのかな、う〜ん。
恒川さんの描く世界観は美しく魅力がありますね。
今回はちと辛口の分、次回作への期待は割り増しです。
| 雪芽 | 2008/01/22 10:33 PM |
雪芽さん☆こんばんは
「秋の牢獄」で、飛行機を使えば全国に旅に出られるよと出かけて行くところが、ちょっと羨ましかったりして。(*^_^*)
3作品とも、すぐ隣にある別の世界でしたが、どれも怖いですよね。
自分がそういう境遇になったらどうするだろうなぁ?
想像するだけで怖いです。
| Roko | 2008/03/14 10:07 PM |
Rokoさん、こんばんは。
尽きない一日はほんとうは辛いものかもしれないけれど、こんな時でなければ出来ない楽しいことを想像してしまいます。
全国への旅、私も羨ましかったですよ。
どれも身近に起こりえる怖さでしたね。
| 雪芽 | 2008/03/16 5:08 PM |

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