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*「エトルリアの微笑み」 ホセ・ルイス・サンペドロ

エトルリアの微笑み
 エトルリアの微笑み
 ホセ・ルイス・サンペドロ
 日本放送出版協会 (2007/10)
 単行本: 429ページ




海外の作品を読むことが最近なかったので、たまになにか読んでみたいなと思っていたところ、出会ったのがこの本。
まず装丁に引き付けられた。屋根の上に家を守るように羊が寝そべっている。実は最初羊とわからなかったことは置いておくとして(笑)、本を読んでみると、ここに描かれるのは他のなにものでもなく、羊でなくては駄目なんだと頷ける。装画は久保貴之さんの版画で、この方は調べてみると他にも羊をモチーフとした作品がある。だから表紙の版画も本書のために創作された作品ではないのかもしれないが、物語を包み込むにはなんてぴったりなんだろう。
さあ、表紙にいつまでも拘っていないで先へ進もう。

頑固で、無口で、昔気質の老人。
都会の息子夫婦に引き取られた彼が、
人生の最期に望んでいたたったひとつのこととは?
本の帯より

本の帯に書かれた一文に目が止まる。
(やっぱり先へは進めない)
田舎に住む年老いた親が、都会に住む息子夫婦に引き取らる。となれば慣れない環境に戸惑を覚えて、とか遠い外国の話というより身近にもありそうな話だ。でも、ひとつ気になる。主人公の老人が最期に望んだことってなんだろう。それもたったひとつのことって。もしも自分なら最期になにを望むだろうと、そんなことまで想像してみて、この本は生涯読む限られた本の中の1冊として我が家にやってきたのだ。

かつてパルチザンの闘士として戦った過去を持つブルーノ老人は、癌の検査を受けるため故郷に別れを告げ、ミラノの息子夫婦のもとへ旅立つ。彼は旅の途中立ち寄ったローマの博物館で、エトルリアの遺物「夫婦の棺」に強く心を動かされる。墓だというのに、微笑を浮かべる夫婦の像。笑いながら死ねる人生とはどんなものなのか。
老人の新たな居場所となった大都会ミラノはまがいもので溢れ、息子夫婦の何事にも現代風の生活にも馴染めない。が、そこで彼はこの世でもっとも愛すべき清らかな存在に出会い変わっていく。

親として、子供として、嫁としての視点や感情が複雑に重なり合っていくこの物語は、いろんな世代の読者が、その立場によってなにかしら共感する部分があるのではと思う。誰しも一人ではこの世に生まれてこなかった。もっとも身近にある「家族」の物語だからである。
もうひとつは死に至る生き方、人生の話でもある。

老人がミラノの息子夫婦の家で出会った最愛のもの、それはまだ小さな男の子の赤ちゃん、孫の存在だった。小さなボタンが止められなくて情けない思いをした彼が、労働で節くれだった指でこっそり練習する姿は、切なくも微笑ましかった。孫に対する時の老人は、まるっきり孫を溺愛するお爺ちゃんの図である。
だが、ここに描かれている老人の魅力は、昔気質で頑固だけど、誇りを持って生きる姿勢にある。いい意味での生き抜くしたたかさもみせる。一番凄いのは、変わらない信念や気概と変わることを受け入れる柔軟さ、両方を持ち合わせていることだ。
新しい人達との出会い、そして恋までも!お爺ちゃん素晴らしい!

息子と二人だけの晩餐もじわりとくるいい場面だった。父はいつまでも息子をふがいなく頼りないと思っているが、息子は老いた父の姿に寂しさと悲しさを覚える。とはいえ、老人にも息子にも昔を懐かしむ幸せな一夜には違いない。合わせたように、読んでいる自分も切ない思いが混じりつつ幸福な気持ちになった。

老人が人生の最期に望んでいたたったひとつのこと。
それはなんだろう。
ふとした興味から手にした1冊の本。
答えを知ったいま、ラストの余韻が静かに続いている。

2007年12月2日読了
| ■さ行の作家■ | 23:34 | comments(0) | trackbacks(0) | | |

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