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*「セント・メリーのリボン」 稲見一良

お気に入りの作家の新刊本が山積みになっている。新しい作品をどんどん追いかけていきたいと気持ちははやる。一方で夥しい本の海原からひょいとすくい上げ、これまた山積みとなっている本がある。どの本も山の一角を築いたには、経緯は違えど読みたいという思いが働いたからこそだ。どれ読もう、何読もう。幾ばくかの時間をその本と過ごす。本に描かれた世界にどっぷり浸る前の逡巡がまた楽しくて、いつも身近に本が山とある積読本も悪くないと、ちょっとは言い訳がましいが思うのだ。

今回は新刊本ではない山から『セント・メリーのリボン』を読んでみることにした。
本を読むきっかけはいろいろある。この本は活字の砂漠で溺れたいのyoriさんから教えて頂いた。これまでハードボイルド小説を読んだことは皆無といっていい。稲見一良さんの名前も知らなかった。ブログをやっていなかったら出会わなかったろうし、読まずに通り過ぎてしまうには惜しい本だと思った。yoriさんありがとうございます。

失踪した猟犬捜しを生業とするアウトロー探偵・竜門卓の事務所に、盲導犬の行方をつきとめる仕事が舞いこんだ。相棒の猟犬ジョーとともに調査を進めるうちに、薄幸な、ひとりの目の不自由な少女のもとに行きつくが、やがて…(表題作)。限りなく優しい誇り高い男たちの人間模様を、無駄のない文体とハードボイルド・タッチで描いた、感動を呼ぶ珠玉の作品集。「BOOK」データベースより

五つの作品を収録した短編集である。
最初の「焚き火」では追われる身の男と山で暮らす老人との短い出会いと別れを描く。ごく短い話だが強烈なインパクトがあった。老人の運命やいかにって、もう活字を追うのも居たたまれない気持ちだったのに、意外な展開に驚愕する。何者、何者、何者!?
現在にぽっかりと開いた過去の入り口。リアルでありながら幻想的世界に足を踏み入れた不思議な感覚を読後に残す「花見川の要塞」
「麦畑のミッション」はのどかな描写から緊迫した戦闘場面へ、ここで鼓動が早くなり、最後はちょっと早いけどとてつもなく大きなクリスマスプレゼントと、大いなる決断が感動的な話。
「終着駅」で描かれるのは人生が大きく変わる瞬間だ。東京駅で長く赤帽として働いてきた男の大きな夢。それはとても叶えられそうにもない夢物語のはずが……。

最後は表題作でもある「セント・メリーのリボン」
失踪した猟犬探しが生業の探偵竜門卓が暮らしているのは祖父から相続した山林。といっても大阪の西北端だというから、山奥ってことはないのだろう。どうも地理がうまく想像出来ない。探偵の看板も一応掲げているし依頼もあるようで、いくつかの失踪事件を解決しながら話は進む。
ある時、猟犬探し専門の竜門に盲導犬を探して欲しいという依頼が舞い込む。
視覚障害のある人が盲導犬協会から盲導犬を譲渡されるには、いくつかの条件をクリアする必要がある。犬の失踪には富める者とそうでない者との、いま流行りの格差が絡んで、厳然たる社会の矛盾に、割り切れない思いを感じてしまうのだ。でも、奇跡は起こる。奇跡を起こすのは人だ。一見優しさが不似合いと見える、ニヒルでハードボイルドな男が起こすクリスマスの奇跡に不覚にも涙する。この話はいい!こんな奇跡があってもいいではないか。

“男の贈りもの”を共通する主題とした、と稲見さんがあとがきで述べている。作品の中にみつけた贈りものは、いまは自分の中に大切にしまわれている。

2008年1月19日読了
| ■あ行の作家■ | 01:47 | comments(6) | trackbacks(2) | | |

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♯ コメント

きりりさん こんばんは
御紹介いただき、ありがとう御座います。
稲見さんはとても地味なんですが、なんとも言えないあじのある作家だと思います。もう彼の新しい作品に出会えないことが残念です。
P.S 竜門を主人公にした短編だけを集めた「猟犬探偵」という作品集があります。もし機会がありましたら・・・
| yori | 2008/01/20 6:19 PM |
 『センメリ』は表題作も良いですが、私の一番のお気に入りは「麦畑のミッション」でした。
 『猟犬探偵』も良いですが、『ダック・コール』もオススメです!
| higeru | 2008/01/20 6:52 PM |
yoriさん、こんばんは。
渋い味わいのある作家さんでした。
なんともいえない優しさがありますね。
よい本に出会えて嬉しかったです。
「猟犬探偵」も読んでみたいと思いました!
| 雪芽 | 2008/01/20 10:03 PM |
higeruさん、こんばんは。
「麦畑のミッション」もよかったですね。
展開に緩急があって、最後はどうなるかと思ったら…
最後は思わずやった〜、と。
『ダック・コール』は私の好きな安部龍太郎の『血の日本史』、宮城谷昌光の『天空の舟』を押さえての山本周五郎賞ということで、すごく興味引かれています。
| 雪芽 | 2008/01/20 10:10 PM |
雪芽さん、おはようございます。

10年以上前に読んだ本ですが、今でも印象に残っています。
この作品集がきっかけとなって、『猟犬探偵』や『男は旗』といった稲見さんの他の作品も読みました。

ぼくは新潮文庫で買ったのですが、引っ越しの時に処分してしまいました。
もう一度、買い直そうかな。
| touch3442 | 2008/02/11 11:18 AM |
こんばんは!
touch3442さんも読まれていたんですね。
ハードボイルドの奥にある優しさが沁みました。
稲見さんの他の作品にも触れてみたくなります。
まずは『猟犬探偵』から読んでみましょうか。
| 雪芽 | 2008/02/12 9:47 PM |

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