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*「優しいオオカミの雪原」上・下 ステフ・ペニー

 優しいオオカミの雪原 上 (1) (ハヤカワ文庫 NV ヘ 14-1) 優しいオオカミの雪原 下 (3) (ハヤカワ文庫 NV ヘ 14-2)
優しいオオカミの雪原 上文庫:325ページ 文庫:303ページ
 ステフ・ペニー  早川書房 (2008/02)

この本を買ったのは二月で、雪が来る日も来る日も降って降り止まぬ日が続いていた頃で、吹き荒れる地吹雪に景色が白く霞んで見えなくなるような寒い日だったのを覚えている。

世界が白い!真っ白なのだ。そして、凍りつくように寒い。寒いというより痛い。
陽の温もりが恋しい。とりどりに色が溢れる世界、夢の南国パラダイスへいざゆかん!的な気分で、活字パラダイスの本屋へふらふらと足を運んだ。外界の冷気を内から温めてくれる熱き思いをたぎらせた本はないものかと、ぼんやり書棚を巡る。きっと寒さのせいで思考不能だったのである。よりによって極寒の地で繰り広げられる物語を手に取ってしまうとは。
とはいえ、本のタイトルにそそられるところもあった。オオカミは怖いというイメージがあるところへきて、優しいオオカミってなんだろうって思うでしょ。白、赤、青のトリコロールカラーの組合せもおしゃれ。結局はいつもの表紙買いということか。
いやいやいくらなんでもそれだけではないですよ。迷って迷って買ってしまったのは、息子の無実を信じて雪原へ旅立つ母と、彼女が旅路の果てに見いだした悲しい真実とは何か、ただそれが知りたかったからなのだ。
十九世紀の半ばのカナダが舞台。入植地で罠猟師のローラン・ジャメが殺された。と同時にひとりの青年が行方不明となる。息子に疑いがかけられていると知ったロス夫人は息子の無実を信じ、オオカミの棲む雪原へ行方を追って旅立つのだった。そこで彼女が見たものとは。

主人公はロス夫人であるが、コールフィールドという入植地で生きる様々な立場の人々に焦点があたり、親子関係、夫婦関係、若き男女の恋愛から、移民と先住民という隔たりを越えて結ばれる友情など、幅広い人間ドラマを描いてみせる。
ロス夫人に関していえば、夫アンガスとの仲は冷えているし、養子として連れてこられた息子フランシスは養父母の自分たちに距離をおいて溝は深くなるばかりだ。そんな中での事件である。彼女が雪原の旅に求めたものは、息子の行方と無実ばかりではなかったのかもしれない。凍てつく雪原の白さ、その真白きことの無垢な場所へ身を投じることは意図せずして、夫婦にとって、親子にとって、自分自身にとって、真に大切な何かをみつける結果となるのだ。
その前にはたしかに哀しい真実も知ることにはなる。息子フランシスがなぜ雪原へ向ったのか。こういう関係もあろうことかと思うけど、ちょっとふい打ちだったので驚いた。そっか、そっか、そうだったんだ。いろんな謎が合点がいったわ。
ロス一家の未来を暗示するようにアンガスが一瞬みせた笑み、長い物語のほんの僅かばかりの描写なんだけど、これがよかったなぁ。

息子の失踪。過去に起きた姉妹失踪。ミステリアスなふたつの失踪事件と殺人事件の謎は、ぐいぐいと読者を引っ張っていく。現在と過去において点在する謎が、意外な結びつきをもって解き明かされていく過程は、ミステリーとしても充分に面白いのだ。

また、毛皮交易を巡るハドソン湾会社と個人の交易商との利権争いは、入植地社会の火種となって少なからぬ影響を投げかける。希望を求めて移民した人々は、苛酷な地で夢を追い、現実に少なからず疲弊もし、欲望とエゴを抱え、それでも何かを求めて懸命に生きる。一大歴史ドラマとしての含みもあるのだ。

もうあれもこれもと盛りだくさんだ。
盛りだくさんの中にはラブストリーもある。当然。厳しい旅をともにするロス夫人とパーカーの間に築かれていく、愛と呼ぶにはもっとピュアで親密な想いが、いまにも言葉になって零れ落ちそうなラストには胸が締めつけられる。会社の人間であるドナルド・ムーディの恋はなんて哀しくてせつなくて、でも、幸福感に満ちているんだろう。

“終(つい)えぬ思いという病”をかみしめ歩き続けるロス夫人の、負けない力強さに勇気づけられる結末は、こちらの背筋がしゃんと伸びるようで感動的だ。

オオカミ、オオカミ、忘れるところだった。オオカミとの遭遇場面の描写は美しい。優しいオオカミ、そうかもしれない。

2008年2月17日読了
| 推理・ホラー・冒険 | 20:23 | comments(0) | trackbacks(0) | | |

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