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*「風神秘抄」 荻原 規子

荻原 規子
徳間書店
¥ 2,625
(2005-05-21)

日本を舞台にしたファンタジーの面白さに魅了された勾玉シリーズ3部作。直接的な繋がりはないけれど、武士が台頭する兆しをみせ始めた平安末期の世を舞台にしたこの作品は、ずっと読んでみたい本のひとつだった。単行本で600ページ近くと、重さにしても、読む量を考えてもかなりのボリュームである。買うにも読むにもいまひとつ気持ちのふんぎりがつかずにいた。5月の初め図書館へ行った折、児童書のコーナーを見てみる。あった。すでに抱えている本は数冊。そこへ1冊加える。本の重みは苦にならないものだ。

少年の孤独な笛が舞姫の舞に出会うとき
天の門が開き天界の華が降る
人の命と未来が変わる
平安末期を舞台に展開する異色のファンタジー
〜本の帯より〜
いままさに平治の乱が起ころうかというところから物語は始まる。
平家と源氏の争い、貴族政治から武家政治へ、世の中が大きく移り変わろうとする頃である。主人公の草十郎(そうじゅうろう)は兄と共に源氏方で出陣する。しかし乱に破れ、敗走する源義朝一行につき従った草十郎は、姿が見えなくなった頼朝を探すうち、自らもはぐれてしまう。その後、将として慕う御曹司義平に思いを残す草十郎は、義平の首が晒される六条河原で、死者の魂鎮めの舞を舞う少女糸世(いとせ)と出会い、いつしか互いに惹かれ合うようになるのだ。

草十郎はいわゆる異能の力を持つ少年である。彼の吹く笛には不思議な力があった。また「鳥の王」と言葉を交わすことも出来た。人と異なる力を持つことは少年を孤独にした。勾玉シリーズでも描かれているが、他に抜きん出た大きな力を持つことは、諸刃の剣のようなものである。使い方を誤れば力に圧倒され破滅しかねない。

物語前半は糸世との出会いにより、自分の力に目覚めていく草十郎を描く。
力の存在に興味を示しふたりに深く関係してくるのが後白河上皇だ。あくことなき上皇の欲望。おのれ出たな妖怪!とでも叫んでしまいたくなるほどこの御仁、手練手管を使って世を渡っていく姿には、底知れない不気味さがある。

物語後半は草十郎喪失の旅であり、自分が生きる未来を模索する旅である。
大切な人は誰か、大切なものは何か。失ってみてわかることかもしれないが、失ってからわかるというのは痛手が大きい。前半の草十郎は自分の存在を外の世界を通してみつめ、後半は自らの心の内との対話と葛藤であるように思う。

「鳥の王」と話せる人間、このことが世を支配する権力にまで結びついていることを知っても揺るがない。権力に吸い寄せられていくのが人の常であるのに。人の運命さえ変えてしまう笛の力とともに、権力者としての道筋もあったのだ。
しかし、草十郎にとって得たいものはひとつしかない。この思いの強さだけが、あてのない道を照らしている。

自分に必要なもの、生きる場所を捜し求めて最後の地に赴く草十郎。
迷いと葛藤の繰り返しの末に手にしたのは、闇の世界ではなく常人としての未来。迷える草十郎をしっかりと導いた糸世の信じる気持ちの強さが眩しい。

大きな時代のうねりを背景に読み応えたっぷり、「鳥の王」とのユーモアある会話がことのほか楽しく、思わず笑ってしまう。草十郎の笛と糸世の舞が創り出す場の描写は、幻想的でほおっとなるほど美しかった。ただ、草十郎と糸世が互いに惹かれ合う心情に、もう少し強いせつなさがあればなおよかったなと感じた。
「鳥の王」とその許婚たちのキャラが面白い。とくに許婚たちには「鳥の王」といえどもたじたじです。

2008年5月5日読了
| 荻原規子 | 17:38 | comments(2) | trackbacks(1) | | |

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♯ コメント

雪芽さん、こんばんは(^^)。
草十郎が、権力に屈せず、権力を使う側にならず、糸世と生きてゆくために全てを投げ打ち、苦悩しながらも進んでゆく姿が、清々しかったです。
鳥彦王の許嫁・三姫達のキャラは、強烈でしたね(笑)。鳥彦王、これから苦労するだろうなぁ♪
| 水無月・R | 2009/07/20 9:58 PM |
水無月・Rさん、こんばんは。
すっかりお返事遅くなってすみませ〜ん。
権力さえも我がものとする力は魅力的だけど、一面力に呑まれてしまう怖さもあります。
荻原さんの勾玉シリーズでも異能の力をどう使うか主人公たちは試されるわけですが、この本の草十郎もちゃんと自分に大事なものを選んでいくんですよね〜
そこがよかった。
鳥彦王はいまから尻に敷かれてますね(笑)
がんばれ〜!!
| 雪芽 | 2009/07/29 10:27 PM |

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『風神秘抄』/荻原規子 ○
荻原規子さんと言えば、YAファンタジーの女王的存在ですよね。 ブログ始めるよりもっと前に『空色勾玉』を始めとする、勾玉シリーズを読んだのですが、少年少女の成長と神話・伝説世界の融合、日本的な背景に描かれる美しい自然、大変清々しい読後感でした。 その勾
| 蒼のほとりで書に溺れ。 | 2009/07/20 9:42 PM |
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