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*「蒲公英草紙―常野物語」 恩田 陸

蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫 お 48-5)
 
 蒲公英草紙―常野物語

 恩田 陸
 文庫: 273ページ
 出版社: 集英社 (2008/5/20)



恩田陸を読もう!と前に読書目標に掲げたことがあるが、自分への掛け声だけでさっぱり進んでいない。久しぶりの恩田本は常野の人々を描いた「蒲公英草紙」である。文庫の表紙に一目惚れだった。黄色く染まった蒲公英野原がどこまでも続いている。子供の頃、こんな風景はどこにでもあった。あの夏の日の、あの季節だけの、こそばゆく眩しい時間。いまは記憶の中にだけ存在する。
にゅう・せんちゅりぃへと船を漕ぎ出そうとする時に感じる期待と不安。蒲公英草紙を紡ぐ峰子の脳裏に去来するひと夏の出来事。それはお屋敷の聡子様と不思議な能力を持つ春田一家の物語だった。

懐かしく切ない傑作ファンタジー
20世紀初頭の東北の農村。少女峰子は、集落の名家・槙村家の聡子嬢の話し相手を務めていた。ある日、聡子の予言通りに村に謎めいた一家が訪ねてくる。不思議な力を持つ一族を描く感動長編。
出版社 / 著者からの内容紹介
農村地帯にある旧家槙村家の聡子様の話し相手として、お屋敷に通うことになった峰子。病弱だけど明るく聡明で、たちまち人を引き付けてしまう聡子様とのこと、お屋敷での出来事、なにもかもが峰子の目には新鮮で驚きを含んでいた。

繊細に揺れる少女の心理、いつも峰子を苛める槙村家の次男・廣隆の成長の変化、恩田さんは少年少女を描くのが実に巧い。巧いし、この年代が放つ甘酸っぱい疼きはせつなくて、見事にツボを突いてくる。淡い恋心があちらこちらで炎を揺らめかせている。

風変わりな発明に勤しむ池端先生、洋画を描く椎名馨、悩める仏師の永慶、多種多彩な人物がお屋敷に同居する。
椎名が洋画に向うことになった理由は、近代化を掲げ西洋文化を取り込んでいった当時の日本の姿と重なる。しかし、椎名と永慶が描いてみせた聡子の絵を見て、洋画と日本画の求めるものの違いを感じ取った聡子の言葉にあるように、ふたつは表現しようとするものが違うのだ。違いは一方を否定することではない。この物語の中で峰子が思うにゅう・せんちゅうりぃへの不安は、西洋化へ進むことへの人々の不安でもある。期待と不安の狭間に揺れるのだ。
だからこそ、ラストの峰子の問いかけが際立って響いてくる。
そして、聡子様と過ごした夏が平穏で光に満ちていたことを思い出すのだ。

「天聴会」で槙村家の当主が語る村の成り立ち。常野の人々との係り、哀しい出来事。まるでこの先に待受ける展開を予感させるような話じゃないか。明るくほのぼのとした空気は、時代のうねりが来る前に、別な恐ろしい波に飲み込まれてしまう。心の準備はあっても辛いです。来るかもと思っていたらほんとに来るんだもの。
春田一家が村にやってきたこと、聡子と光比古、すべてが符合する。響かせる場面、どうもこの展開には弱くて困る。『光の帝国』の「大きな引き出し」もそうだったが、春田家の話にはいつもやられっぱなしだ。

2008年6月12日読了
| 恩田陸 | 15:55 | comments(14) | trackbacks(4) | | |

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♯ コメント

雪芽さん、こんばんは(^^)。
「常野一族」の中でも、割と能力についての描写が分かりやすい「春田家」の物語、ドキドキしながら読みました。
この時代の、嵐の前の静けさ、予兆を、とても素晴らしい表現で描いていたと思いますね。
| 水無月・R | 2008/06/14 10:55 PM |
雪芽さん、こんばんは。
 この本、すごく読んでいて春の日だまりを感じました。もうどこにもない世界なんだけれど、どこかにあるような、そこではなにもかもが正しい事も嫌な事もそのまま正しくそこにあるような感じがしました。
 トラックバック張らせていただきます。
 
| 樽井 | 2008/06/15 12:35 AM |
こんにちは!
常野系は好きです(*´∇`*)
恩田さんは個人的に合うのと合わないのがあります!!
| 弥勒 | 2008/06/15 3:40 PM |
水無月・Rさん、こんばんは。
「ひびく」「しまう」「虫干し」、読むのは文字じゃなくて記憶だけど、読書になぞらえて理解しやすい能力ですね。
平穏な時代を愛おしく思うのは、失ってしまった後。
ひたひたと迫りくる何ものかの予兆に、どきどきしながら読みました。
| 雪芽 | 2008/06/15 9:34 PM |
樽井さん、こんばんは。
古きよき時代の日本のイメージで読みました。
凛として真っ直ぐな視線。
にゅう・せんちゅうりいへと漕ぎ出した船は、正しい航路を進んでいったのでしょうか。
日だまりのように優しい雰囲気を湛えた物語でしたね。
| 雪芽 | 2008/06/15 9:40 PM |
弥勒さん、こんばんは。
恩田さんはいろんなジャンルの話を書いていますけど、常野系はいいですよね〜
私も大好きです!
| 雪芽 | 2008/06/15 9:42 PM |
この表紙はいいですね。彼らのいる世界の風景を切り取ったようです。そしてその優しさも伝わってくるようで。
| たまねぎ | 2008/06/17 12:52 AM |
雪芽さん、こんにちは。
丁度今恩田さんのエッセイ集「小説以外」を読み終えてお邪魔したら、こちらのエントリーが。
私もエッセイを読んで、久々に恩田さんを読もう〜!!熱が復活してきましたので、これ、早速買ってこよう〜っと(笑)

エッセイには、小説の元になった物語や、漫画のお話がいろいろ登場するのですが、「光の帝国」の根っこにあるのは萩尾さんの「精霊狩り」だとか。

日だまりのような優しい雰囲気をたたえた物語、楽しみです〜。
| 瞳 | 2008/06/18 5:30 PM |
たまねぎさん、こんにちは。
風に吹かれて遠く運ばれ、人目につかぬところでも花を咲かす。
常野の人たちの生き方のようです。
陽射しの温もりを集めたような表紙でした。

| 雪芽 | 2008/06/22 2:37 PM |
瞳さんも恩田さんを読んでいたんですね〜
萩尾さんの「精霊狩り」!!
いわればみれば通じるものがあります。
恩田さんは漫画お好きのようで、「蛇行する川のほとり」についてのインタビューで、内田善美さんの名前も出ていました。
「小説以外」には映画のお話もあるんですね。
どんな映画を観ているのかな、興味がわきます。
本屋へ行ったら買ってきます!
| 雪芽 | 2008/06/22 2:45 PM |
雪芽さん、こんばんは。

『ねじの回転』やこの「常野シリーズ」を読んで、恩田さんの造語感覚って、すごいなあと思いました。
タイムトラベルの理論や超能力を、独特の言葉で表現して、しかも、それが何となく読者に理解できてしまうのですから。

TBさせていただきました。
| touch3442 | 2008/06/22 11:24 PM |
touch3442さん、こんばんは。
そうですね、恩田の創り出す世界にぴったりな言葉が、ぽんと出てきますものね。
読んでいると、ああ、なるほどと思って、作家の方はやはりさすがというか、言葉の感覚が鋭いです。
TBありがとうございます。
| 雪芽 | 2008/06/23 11:05 PM |
雪芽さん、こんにちは。TBのお返し、よろしくお願いします。
『光の帝国』が恩田さん初読みだったのですが、末永く大事にしたいシリーズになりました。
特に、春田家は読書好きには垂涎の、なんとも魅力的な特技を持っているので、印象もそれだけ強いです。
時代に漂う不安感に胸が苦しくなりました。
| 香桑 | 2008/09/11 9:48 PM |
香桑さん、こんばんは。
初読みは『光の帝国』でしたか。同じですね。
恩田さんの作品の中でもこれは特別な1冊で、ほんとうに大好きな1冊です。
本好きにはたまらなく羨ましい特技ですよね。
常野の人たちの物語は他にも未読があるので、そちらも楽しみです。
ひたひたと押し寄せてくる新しい時代の足音、その一瞬前の明るい光景がいまも浮びます。
| 雪芽 | 2008/09/13 11:05 PM |

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『蒲公英草紙』恩田陸 ◎
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