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*「木洩れ日に泳ぐ魚」 恩田 陸

木洩れ日に泳ぐ魚
 
 木洩れ日に泳ぐ魚

 恩田 陸
 単行本: 263ページ
 中央公論新社 (2007/07)



魚のように水の中を泳ぎたい。どんなにか気持ちがいいだろう。押し寄せる夏の熱気が肌にまとわりつくのが煩わしい。本を手にした時、これはきっと涼やかな話に違いないと思っていた。水を欲する魚のような気分のいま読むにはうってうけの本、だろうと。
(恩田さんの本にさわかや系ってあったっけ?)

一組の男女が迎えた最後の夜。明らかにされなければならない、ある男の死。それはすべて、あの旅から始まった――。運命と記憶、愛と葛藤が絡み合う、恩田陸の新たな世界

季節は初夏。別れを前にした一組の男女の、夜から朝にかけての謎と緊迫感に満ちた密室劇。

長い夜が始まろうとしている。二人の間に横たわる緊迫した空気の濃密さが時を増長する。現時点でわかっていること。ふたりは一緒に暮らしていたらしい。明日には部屋を引き払い別々の生活をするらしい。過去の旅と一枚の写真に写るふたり以外の人物。この男は誰なんだ?

別れを前にした男女によそよそしい雰囲気があるのはごく普通に感じられる。だが、ふたりにあるのはもっと張り詰めた感情なのだ。いったいこれは何?と、思った時点で作者の思うツボに嵌っているということだ。アパートの一室で向き合う男女。閉ざされた空間で互いの腹の内を探る心理戦。深まりゆく夜の闇、重ねるアルコールの酔いとは逆に、ふたりは記憶の深層へ冴え冴えとした感覚で降りていく。交わされる会話によって浮き彫りにされる互いの輪郭と、事の真相を楽しみながら読んだ。

記憶は嘘をつく。あるいは記憶とはかくれんぼに似ている。気配を感じて振り返れば何もない。自分が知っている、と思っている記憶が果たして正しいのか。疑いや疑問が生じて追いかける。追いかけてもなかなか捕まえられない。

もうひとつの真実は二重ビックリ箱ですかね。恩田さんの作品は最後まで安心していてはダメなのだ。この物語の男女、ヒロとアキの間に生まれた感情も葛藤も、隠された記憶に基づく誤解がなければ生まれなかったのかと思うと、なんと皮肉な真実だろう。

このふたり、ひと晩のうちにビール、ワイン、焼酎とよくもまあ呑んだり。想像するだけでも悪酔いしそうだ。

朝はいつも何かをあきらめさせる。私たちの逡巡に、迷いに、決められない何かに引導を渡す。朝の光は時間切れの合図だ。

どんなに嬉しくても、どんなに打ちひしがれていても、新しい朝に踏み出すことが厭わしくても、律儀に朝はきますからね。夜に居座り続けることが出来ないから、何にしても進むしかないということだ。実質後退しているかは別として。

土に埋められ葬り去られたナイフは過去との決別の証なのだろうか。

2008年7月5日読了
| 恩田陸 | 13:12 | comments(2) | trackbacks(2) | | |

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♯ コメント

こんばんわ。TBさせていただきました。
恩田さんの作品はお酒がたくさん出てきますよね。
私は全然飲めないので、よく飲むなぁとしか思えないのですが^^;
登場人物は2人だけで、あの緊張感。
舞台みたいですよね。
さすが恩田さんです。
| 苗坊 | 2008/09/14 8:49 PM |
苗坊さん、こんにちは。
特にビールがお好きのようです恩田さん。
>よく飲むなぁ
確かに(笑)、飲まない人から見るとそうですよね。
多少飲める私からしても、この作品のふたりの飲みっぷりには、驚きを通り越して感心しました。
舞台のふたり芝居を観ているような緊迫感でしたね。
引き込んで、読ませるのが恩田さん上手いです。
| 雪芽 | 2008/09/15 1:25 PM |

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【木洩れ日に泳ぐ魚】 恩田陸 著
たぶんこれは、一枚の写真についての物語なのだろう… 一枚の写真に映っていた3人、いったい、どんな物語が始まるのだろう? 一組の男女が迎えた最後の夜。明らかにされなければならない、ある男の死。それはすべて、あの旅から始まった――。運命と記憶、愛と葛
| じゅずじの旦那 | 2008/08/01 3:36 PM |
木洩れ日に泳ぐ魚 恩田陸
木洩れ日に泳ぐ魚 ヒロとアキは引越しの準備を全て終え、明日の朝にはこの部屋を出、別々の道を進んでいく。 しかし、その前に2人には明らかにしなければならない謎があった。 ある男の死。 あの事件の真相は、一体何なのか―――― ようやくまわってきた恩田さ
| 苗坊の読書日記 | 2008/09/14 8:36 PM |
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