本や映画の感想、日々の雑感などを徒然に書いております
ネタバレもあるので未読の方はご注意ください
<< July 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
RECOMMEND

 極北ラプソディ 

  
読んだり観たり
雪芽さんの読書メーター 雪芽の最近読んだ本 雪芽さんの鑑賞メーター 雪芽の最近観たビデオ
読みたい!聴きたい♪
Blog散歩道
今年読んだ本
将棋○名人戦・順位戦●
≡ SPONSORED ≡
<< 「傀儡」 坂東 眞砂子 | main | 「カフーを待ちわびて 」 原田マハ >>

*スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - | | |

*「荒野」 桜庭 一樹

桜庭 一樹
文藝春秋
¥ 1,764
(2008-05-28)

桜庭さんの小説初読み。
直木賞作品の『私の男』もその前の『赤朽葉家の伝説』も手元にありながら、読むきっかけを逸してしまい積読本と化す。ああ、もったいなや。エッセイは1冊読みました(こんなに面白い人だったとは意外)。桜庭さん読むぞと強く思う。が、なかなか手に取るきっかけが掴めない。
そんなこんなのうちに出た新刊。いや、まだ積読本があるしな、と買うことを躊躇していたある日。サイン本の平積みが!う〜ん、つくづくサイン本に弱い女である。おまけにかわいらしい小花のシールが貼ってあって、これってもしかして手作業ですか。この手作り感が素敵だな、と言い訳しつつ買いました。ちゃんと読みました。
山野内荒野、十二歳。恋愛小説家の父と暮らす少女に、新しい家族がやってきた。“恋”とは、“好き”とは? 感動の直木賞受賞第一作。
巷の噂によると桜庭さんはけっこう手強そうな作品が多そうなのに、これは瑞々しい青春の香いっぱいに少女の成長を描いた物語で、甘酸っぱくも涼やかな読後感の残る作品だった。舞台となる北鎌倉の風景が、思春期の少女たちの物語としては、都会的過ぎずまったり感があってぴったりとハマる。

山野内荒野は接触恐怖症気味な十二歳。中学生になった入学式当日、苦境に陥った電車でひとりの少年に助けられる。その少年、神無月悠也との偶然の再会は同じ教室。氷の神無月の異名のとおり、荒野にもクールな態度を取り続ける悠也。それには理由があるのだが。ふたりの恋の進展も、互いに自分の成長、相手の成長を見つめながらゆっくりとした足取りで爽やか。とにかく爽やか。

華のある美少女・田中江里華とスポーツ少女・湯川麻美は、荒野と仲良し三人組。恋にお喋りに多感な時を一緒に手探りで成長していく姿は、まさに青春そのもの。学校で起こる男子と女子の様々な出来事も思春期ならでは。

荒野の父は名の知れた恋愛小説家で、いつも女性の影が側にあるような恋多き男。母はすでになく、父は仕事に恋に多忙。こんな環境でも荒野は、恋すること、好きになることを急がず、自分の速度で物事をじっくり受け止めながら、少しずつ大人へ向って歩いていく。身体の成長に心が追いつかない戸惑いとか、悠也との距離感とか、揺れ動く心が丹念に描かれている。
また、恋多き父ではあるが、荒野がしっかりと自分が愛されているんだなと感じる場面もあって、この父親の生き方もまあいいのかと思えるのだ。
義理の母となった蓉子さんと荒野の関係も、一方的に保護するものから支え合う女性同士の関係になっていく。こんなところにも成長の証が窺える。

十二歳から十六歳になるまでを三部作で描いたこの作品。大人のちょっとドロドロで複雑な事情が見え隠れするのとは対照的に、あくまでも荒野の物語はすっきりと気持ちのよいものだった。

『荒野』特設サイトの鎌倉思い出マップを見ると、また本を読んだ時の場面場面が浮んでくる。うさまん屋でうさまん食べたい。

2008年7月13日読了
| 桜庭一樹 | 20:52 | comments(18) | trackbacks(11) | | |

*スポンサーサイト

| - | 20:52 | - | - | | |

♯ コメント

少年・少女の成長が本当に爽やかで清々しい作品でしたね。鎌倉の街の雰囲気も物語に溶け込んでいて、実際に訪れてみたい場所のひとつになりました。
その際は、うさまん屋でうさまんを食べなきゃですね♪
| エビノート | 2008/07/21 9:52 PM |
こんばんは。
1つ1つの出来事は、ありふれたものですけれども、そんな出来事を通して着実に成長していく様子が感じられました。仰るように、学校で起こる男子と女子の様々な出来事は思春期ならでは、のことだと思います。
色々なことがあるであろう、この時期を、あくまでも爽やかに、けれども、しっかりと地に足がついた描写で描けるのは、「少女」というテーマで作品を作り続けてきた桜庭さんだからこそなのかな、というのを読んでいて感じました。
| たこやき | 2008/07/21 10:55 PM |
こんばんは。
少女の成長を丁寧に瑞々しく描いていましたね。
成長する心と体への戸惑いや、恋への期待と不安。
揺れ動く気持ちがとても伝わってきました。

鎌倉の四季もとても印象的でした。
| 藍色 | 2008/07/22 3:22 AM |
こんにちは。
これが初読みとはもったいない!
「私の男」は別として、桜庭さんの描く少女が大好きです。
「少女七竈」「読書クラブ」などのゴシック調の作品も面白いですよ。
| しんちゃん | 2008/07/22 12:30 PM |
雪芽さん、こんばんは(^^)。
桜庭さんの描く少女には、雑味がなく、繊細なガラス細工のようでいて実はとても強靭。
私のイメージなんですけどね。
この作品は、できれば「青虫のようだった思春期の自分」に読ませたかった・・・。それぐらい、リアリティと夢のような美しさがあった、と感じています。
是非是非、他の作品もお読みください。
この作品が気に入ってらっしゃるなら、私的には『青年のための読書クラブ』がイチオシです♪
| 水無月・R | 2008/07/22 9:36 PM |
エビノートさん、こんばんは。
こういう成長ものを読むと、気持ちが伸びやかになっていくようで、とても清々しいですね。繊細で危うさもある年代だけど、けっこう逞しく柔軟で瞬発力があるのが羨ましい。
鎌倉散策もしたいですね〜♪
うさまんに、レトロな喫茶店にと、本を読むと行きたい場所ばかり増えて困ります(笑)
| 雪芽 | 2008/07/22 10:48 PM |
たこやきさん、こんばんは。
大なり小なりありふれた日常が連なって、でも、成長にはそのひとつひとつが大切ですね。
この本を読んでいたら、中学生の頃を思い出してしまいました。すべては懐かしい。
桜庭さんが追う「少女」に出会いに、他の作品もぜひ読んでみたいと思います!
| 雪芽 | 2008/07/22 10:50 PM |
藍色さん、こんばんは。
少女期の感性を瑞々しく描く桜庭さん。内面に棲息し続ける「少女」が、物語の中で生き生き描写されていて素晴らしいです。揺れ動く気持ちもひしひしと感じました。
物語に出てくる鎌倉の四季もいいですね。紫陽花の頃に行ってみたいとは、兼ねてからの願いです。
| 雪芽 | 2008/07/22 10:52 PM |
しんちゃん、こんばんは。
そうなんです、もったいないでしょ!
スローペースな読書なので、取りこぼしがたくさん。
お薦めのふたつ、どちらも読んでみます。
| 雪芽 | 2008/07/22 11:02 PM |
水無月・Rさん、こんばんは。
考えてみると荒野もけっこう気持ち強い面もありました。
>「青虫のようだった思春期の自分」
がこの本をどんなふうに咀嚼するのかと思うと、戻れない時間が残念ですよね〜
水無月・Rさんも『青年のための読書クラブ』がお薦めなんですね。これには要チェックに二重丸付けておきます。

| 雪芽 | 2008/07/22 11:04 PM |
雪芽さんこんにちは。シールは確か手作業のはず。HPの日記でサイン本製作中とか書いていた記憶が。
桜庭さんの作品はどれもとても良いのですが、ここ1,2年の作品は順番に読んでいくと一気に小説家として花開いくのが見えて驚かされますよ。
| たまねぎ | 2008/08/04 1:27 PM |
たまねぎさん、こんばんは。
やはり手作業ですよね。
今日買ってきた「桜庭一樹〜物語る少女と野獣〜」を読むと、桜庭さんはシール好きらしいです。
小説家として花開く様……、想像するだけでも作品群を読むのが楽しみです。
| 雪芽 | 2008/08/05 9:43 PM |
こんにちは。
あれれ?私、カキコしたつもりだったのにしていなかったです。
失礼致しました。
桜庭さんの作品では珍しく?主人公が前向きに終わってよかったです。
家族もいつ崩壊してしまうのかと心配していましたが、そんな事はありませんでしたし。
悠也とはどうなるのかが気になります。
| 苗坊 | 2008/09/21 3:41 PM |
苗坊さん、こんばんは。
前向きなラストって珍しいのですね。
最近読んだ「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」のほうが、桜庭さんらしい作品なのかな。なにしろまだほとんど未読なのでよくわかってません。
荒野のほうはなんやかや家族も崩壊せず収まりそうでしたね。
悠也との関係も気になります。
| 雪芽 | 2008/09/21 5:41 PM |
こんばんは。
これはすごく好きな作品でした。
面白かったです。
荒野と悠也の関係がすごく可愛らしくて好きでした。
| masako | 2008/11/10 11:57 PM |
こんばんは、masakoさん
桜庭さんの小説はまだほとんど読んでいませんが、同じ少女を描いても、『砂糖菓子の弾丸は〜』とはずいぶん違うものですね。
私もこういうの、好きです。
荒野と悠也の関係も可愛らしくて、微笑ましかったですね。
| 雪芽 | 2008/11/11 10:23 PM |
雪芽さん、こんばんわ。
「砂糖菓子の弾丸は〜」に描かれる少女の痛みも、「荒野」の大人になっていくことへの戸惑いや不安も、どちらもリアルで、桜庭さんは少女を描くとすごいなぁとしみじみ思いました。
「荒野」の初々しさ、甘酸っぱさはすごく好きです。大人の世界がドロドロしているだけに、悠也と荒野の初々しさがいっそうキラキラして見えました。
| june | 2009/01/06 11:52 PM |
juneさん、こんばんは。
お返事大変遅くなりました。

「砂糖菓子の弾丸は〜」と「荒野」は対照的な作品でしたが、少女たちの息遣いのリアルさは共通でしたね。
桜庭さんは大人と少女の境界を、自在に行き来できてしまうのだろうかと感じるほどです。
舞台が鎌倉というのもいいし、なによりこの初々しさが眩しく、清涼感がありました。
| 雪芽 | 2009/01/14 11:43 PM |

♯ コメントする









コメントをプレビューする?
ご利用のブラウザ、設定ではご利用になれません。


♯ この記事のトラックバックURL

♯ トラックバック

荒野 〔桜庭 一樹〕
荒野桜庭 一樹文藝春秋 2008-05-28売り上げランキング : 2225おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools ≪内容≫ 山野内荒野、十二歳。 恋愛小説家の父と暮らす少女に、新しい家族がやってきた。 “恋”とは、“好き”とは? 感動の直木賞受賞第一作。
| まったり読書日記 | 2008/07/21 9:45 PM |
(書評)荒野
著者:桜庭一樹 荒野(2008/05/28)桜庭 一樹商品詳細を見る 山之内荒野、12歳。いつも、周囲に女の人の姿が絶えない「恋愛小説家」の父と、...
| 新・たこの感想文 | 2008/07/21 10:44 PM |
荒野 桜庭一樹
装幀は大久保明子。写真は大橋愛。ファミ通文庫刊『荒野の恋』第一部第二部加筆修正に第三部書き下ろし。山野内荒野は中学初登校日、窮地を...
| 粋な提案 | 2008/07/22 3:22 AM |
「荒野」桜庭一樹
荒野(2008/05/28)桜庭 一樹商品詳細を見る 以前ファミ通文庫で刊行された「荒野の恋」の第一部と第二部の二冊に、第三部を新たに書きおろして、...
| しんちゃんの買い物帳 | 2008/07/22 12:31 PM |
『荒野』/桜庭一樹 ◎
ああ・・・桜庭一樹さんの描く少女は、どうしてこんなに、リアリティがあるのに、美しいのだろう・・・。なんだか、泣きたくなる。あの頃、確かに私たちは子供で、大人になりたくて、でもなりたくなくて、狭い世界で苦しんだり喜んだりしていた。 ・・・あの頃の少女だ
| 蒼のほとりで書に溺れ。 | 2008/07/22 9:28 PM |
桜庭一樹【荒野】
視線を感じて振りむくと、レジの奥で和服のおばあさんが、微笑みながらこちらをみつめていた。薄暗い夕刻の店内で、あの老いた女の人は、ど...
| ぱんどらの本箱 | 2008/07/29 12:56 PM |
荒野  桜庭一樹
山野内荒野、十二歳。恋愛小説家の山野内正慶を父に持つ。母は幼い頃に他界し、現在は家政婦の奈々子さんを含め三人で、北鎌倉の古い一軒家に暮らしている。 中学校入学のその日、荒野は制服のセーラーを扉に挟まれ困っていた所を、一人の少年に助けられる。自分の名と
| 今更なんですがの本の話 | 2008/08/04 1:19 PM |
荒野 桜庭一樹
荒野 山野内荒野、12歳。恋愛小説家の父親と家政婦の奈々子と3人で暮らしている。 中学校の入学式。電車で制服をドアに挟めてしまい、うずくまっていると、文庫本を手にしためがねをかけた少年が声をかけてくれた。 それが、神無月悠也との出会いだった。 読みま
| 苗坊の読書日記 | 2008/09/20 10:26 AM |
桜庭一樹 『荒野』
荒野/桜庭 一樹 ¥1,764 Amazon.co.jp 山野内荒野、十二歳。恋愛小説家の父と暮らす少女に、新しい家族がやってきた。“恋”とは、“好き”とは? 面白かったです。こういうお話かなり好き。ミステリーでもないのに続きが気になってしまって、1日で読ん
| 映画な日々。読書な日々。 | 2008/11/10 11:48 PM |
「荒野」桜庭一樹
荒野クチコミを見る 桜庭さんは、閉ざされた世界に住む少女の気持ち、痛みをすごくリアルに描く人だと思っているので、タイトルを見たとき、どんな心の荒野が描かれるんだろうと思ったんです。 それが、読み始めてみたら、まるで少女マンガかラノベのような世界だっ
| 本のある生活 | 2009/01/06 11:52 PM |
荒野<桜庭一樹>−(本:2009年)−
荒野クチコミを見る # 出版社: 文藝春秋 (2008/5/28) # ISBN-10: 416327040X 評価:88点 山野内荒野(こうや)という女の子が、子供(12歳)から少女(16歳)へと変わっていく様子を美しく繊細な描写でつづっていく。 揺れ動きながらも、きっちりと芯の通っ
| デコ親父はいつも減量中 | 2009/09/19 7:59 AM |
ABOUT
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
TRACKBACK
ありがとうございます
COMMENTS
ありがとうございます
LINKS
MOBILE
qrcode
OTHERS