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*「傀儡」 坂東 眞砂子

傀儡
 傀儡
 坂東 眞砂子
 単行本: 445ページ
 集英社 (2008/05)




坂東さんの本を読むのは久しぶりになる。ホラー小説を書いていた初期の作品は、ホラーとしての怖さよりも、土着的風習の匂いと女の情念が生み出す独特の雰囲気が好きでよく読んだが、作品の傾向が変わり始めたあたりからぱったりと読まなくなった。
この本も迷ったのである。この人の本だから読みたいという強い気持ちは遠い昔のことになっている。迷ったが時代は鎌倉だ。しかも傀儡という網野善彦がいうところの「まつろわぬ民」が出てくる話。結局、このふたつへの興味には抗い難かったということだ。
では、いざ、いざ鎌倉へ!

鎌倉時代、自らの顔の肉を削ぎ、北条氏への呪いの言葉を残して、山中へ消えていった武者がいた。九年後、関本宿近くの墓場を通り過ぎた傀儡女は、暗い穴のような瞳を持つ瀕死の女と出会う。傀儡女と一夜を過ごす、鶴岡公暁と名乗る武者。
瀕死の女を救った、藍色の目の僧。
鎌倉に、そして日本にかけられた「死の呪い」を解く、歴史長編小説。
本の帯より
源氏に変わり北条氏が実質的に政権を握るようになった鎌倉時代。
生き方も求めるものも違う男女の姿が、合わせ鏡のように描かれていく。何ものにも囚われず自由に生きる傀儡女と、絶望の淵から生の場に帰ってきた女。一族の復讐に生きる武者と、夫と息子の敵討ちに執念を燃やす女。大陸から日本に来たふたりの僧の信仰が行き着いた先。真理を求め念仏を唱え流れゆく異国の僧侶が、遊芸の傀儡達の行き様に見い出したものとは。
遠い大陸での回想を交え、時に傀儡芸の幻惑へと読者を誘い、信じること、生きること、死ぬることの意味を問う長篇作品。

物語にはいくつかのテーマが織り込まれている。ひとつには復讐としての物語。
滅ぼされた一族の復讐がすなわち生きることになってしまったひとりの武者。
復讐はさらなる復讐へと連鎖してしていく。ただ、復讐の物語を成すふたりの土壌の違いは、それぞれが向えた結末を大きく変えることになる。思えば哀しき武者である。非情な表の顔の内側で、復讐が自分の本意なのか、亡き者の怨念によって傀儡のように動かされているだけなのかという相克もあるのだ。

ひとつには青い目の僧侶、沙依拉夢(サイラム)が辿る信仰の物語。
タクラマカン砂漠から絹の道を通り、ついには海の道を越え日本に辿り着いた青い目の僧。信仰者として対となって描かれるのが、日本の政治の中枢にまで影響を及ぼす存在となった蘭渓道隆(ランケイドウリュウ)禅師。ふたりの宗教者が辿る道の違いも物語を貫くひとつの軸となっている。
西域から東国へ、長い道のりの果ては、解放感のある結末だった。

もうひとつには傀儡女叉香と、男に伍するほどの力を持つ大女いぬのふたり。
叉香の魅力はなんといっても何ものにも縛られない自由な生き方にある。そして、傀儡芸を成すものとしての矜持。いっぽうのいぬは生命力と逞しさ。

道隆禅師の童子として使え、大陸から一緒にやって来た晴庚が、異国の地でみた政を評した言葉がある。

表立ったところに権力はなくて蔭に隠れたところに実際の権力がある。傀儡みたいなものですね。〜中略〜 この国の者たちは、力を誇示するよりも、隠すことに腐心しているようです。

鎌倉の世も、いまの世も、と思わないでもない。

2008年6月16日読了
| ■は行の作家■ | 17:47 | comments(0) | trackbacks(0) | | |

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