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*「地獄変」 芥川龍之介

蜜柑が読みたいと思った。食べたいではなく読みたい、なのだ。
蜜柑を読む。
いまここでいっている蜜柑というのは、芥川龍之介の「蜜柑」のことである。
されど、読みたいと思っても手元にはなし。ん〜、ちょっと違うかな。筑摩書房から出ている文庫版ちくま日本文学芥川龍之介を持っている、いや、持っていたと書いたほうがより事実に近い。ある時突然行方不明になったまま、いまだに行方知れずなのだ。家の中で本が消える不思議。神隠し、本のブラックホール……。まあ、そのうちひょっこり帰ってくるかもしれない、魔のバミューダトライアングルからの帰還のように。

ともあれ「蜜柑」が読みたい。
夏真っ盛り、夏の文庫フェア真っ盛り、「デスノート」の小畑健氏による期間限定カバーの文庫を買ってきた。厚さも手頃、「羅生門」、「鼻」、「蜘蛛の糸」、「藪の中」といった代表作が並び、龍之介氏の写真や年賦など、入門書としても手頃といえる。もちろん「蜜柑」も収録されている。ここが大事だ。

明治・大正・昭和初期のいわゆる日本文学の名作といわれる作品は敬遠するというか、遠巻きにして近づかないようにしていた。十代で親しんだのはもっぱら海外文学。だから芥川龍之介との出会いは遅い。すでに昔のことになるが、友人が龍之介の「トロッコ」を熱く語るので、それならばと読んでみた。
正直こんなに面白いとは思わなかった。読まず嫌いはいけないなと反省する。

今回再び読んでみても思いは変わらない。前に読んだ作品も新鮮な感動が色褪せることなく、初めて読む作品は新たに好きな作品として記憶に刻まれる。
望んでいたことが叶った喜びが一方で失望を生むという、相反する感情の機微を笑いと悲哀を持って描く「鼻」と「芋粥」
「地獄変」の焔に焼かれる牛車の光景は凄絶で恐ろしいのに、怪しいまでに美しく、その場に身動き出来ずに佇むひとりであるかのように目が離せない。えぐり出される人間のエゴイズム。眼前に繰り広げられる業火は、結局絵師良秀を内側から焼き尽くしてしまったのではないか。
先にあげた三作品や「羅生門」と比べ、「蜜柑」は大きく印象が異なる。世の倦怠に包まれた主人公と田舎育ちの貧しい身なりの少女。最後に少女が列車の窓から懸命な様子で投げた蜜柑の軌跡が、主人公を包む疲労と倦怠を鮮烈に切り裂いていく。この場面は何度繰り返し読んでも飽くことなく忘れ難い。やっぱり「蜜柑」は大好きな作品だ。
初めて読んだ「秋」も才能の開花を諦め、人生の秋を憂うもの哀しさと、過去の密かな想いに揺れる男女の姿が繊細に描かれていて上手い。

現代小説を読むばかりでなく、たまに古典の文章に触れたくなる時がある。
現代と過去を行きつ戻りつ、本を読むことの自在さが嬉しい。

収録作品
大川の水/羅生門/鼻/芋粥/地獄変/蜘蛛の糸
奉教人の死/蜜柑/舞踏会/秋/藪の中/トロッコ

2008年7月31日読了
| ■あ行の作家■ | 14:07 | comments(0) | trackbacks(0) | | |

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