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*「蘆屋家の崩壊」 津原泰水


津原 泰水
集英社
¥ 1,575
(1999-06)
 無類の豆腐好き、とまではいかないが、豆腐は好きなほうである。だから、ひょんなことから出会い、互いに無類の豆腐好きと知って意気投合した「伯爵」と「猿渡」の幻想怪異なこの話、読もうと思ったのは登場人物ふたりの嗜好によるところが大きい。いうなれば豆腐によって結ばれた縁なのである。

津原さんの本はこれで二冊目。『赤い竪琴』では静謐で濃密な大人の恋愛を描き、初読みにして完全ノックアウトを食らったわけだが、まったく趣きの異なるこの短編集も凄くよかった。いや〜、凄いし、とっても好き。豆腐が呼んだだけのことはある。
ひたひたと静かに寄せてくるホラーとしての怖さ、グロテスクでありながら美しく妖しい幻想、そこへ伯爵と猿渡コンビの飄々としたユーモアが溶け込んで、えもいわれぬ味わいとなっているのだ。
津原さんの世界にずぶずぶと嵌っていきそうだ。いまは足首くらいのところまできている。この先どうしようか。グロテスクなのは苦手なのだよなぁ。恐る恐るながら進んでみようか思案中。思案の中で次に読む本を考えている。これはもうなんというか、掴まえられたということか。
名を聞けばちょっとは知られている怪奇小説家で長身全身黒ずくめの「伯爵」と、三十路を越えて定職にも就かずにいる「猿渡」のコンビが面白い。

彼の地に美味い豆腐があると聞けば遠方でも出掛けていくふたり。旅先で出会った豆腐を食べながら、その美味しいことに涙までするのである。そこまで豆腐が好きか、と呆れるやら笑えるやら情熱に感嘆するやら食べてみたいやら。
ふたりが出会うのは美味珍味な豆腐ばかりではない。思うに猿渡は呼び寄せ体質なんじゃなかろうか。何を呼び寄せるかというと怪異をである。猿渡のいるところ怪異があり、猿渡の側には伯爵がいるという按配だ。
読んでいると幻想の迷路に踏み込んだような気持ちになる。幻想はホラーが強かったり、ミステリーに傾いたり、ファンタジーぽっかたり、グロテスクだったりする。最初は気づかない。美味しい豆腐探索に浮き々々しているふたりについていったら、何か得たいの知れないものが潜む場所にいる。

ひんやりとした感触が首筋を過ぎて、なんだろう何か来ると思ったら最後にギャっとなったのが「反曲隋道」だ。夢に出てくるよ〜
「ケルベロス」はじわんと温かみが残る作品。猿渡の慟哭が響いてくる。
虫は単体では特別嫌ではない。子ども向けとはいえ昆虫図鑑も持っているくらいだし。とはいえそれはあくまでも単体でのこと。集団となると話は別だ。しかもその虫たちがいる場所というのが尋常ではない。外からはわからず、中に巣食っているというのが、余計に想像力を嫌な方向に掻き立てる。皮膚をモゾモゾとしたものが這うような感覚。嫌だ嫌だと思いつつこうしてどんどん書き綴っていってしまう。ああ、嫌だ。おぞましくグロテスクだけど目を背けることができない、強烈な印象を残こした「埋葬虫」
最後の短篇「水牛群」は心身供に病む猿渡が、絶望と混迷から生還し人生の転機となる体験をする話である。猿渡の経験した怪異は彼自身の物語として語られるべき、という伯爵の言葉は意味深い。怪異を書き綴った紙片は、伯爵から猿渡の元へ返され、こうして猿渡の物語として目の前にある。

巻末で作者津原さん自らそれぞれの作品を語っている。「伯爵」のモデル井上雅彦さんの文もある。

反曲隋道/蘆屋家の崩壊/猫背の女/カルキノス/ケルベロス
埋葬虫/水牛群

2008年9月4日読了
| ■た行の作家■ | 13:48 | comments(4) | trackbacks(2) | | |

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♯ コメント

雪芽さん、こんばんは(^^)。
虫も、蟹も怖かった・・・(泣)。
「反曲隧道」の句読点がなかなかなくて、長い長い文章が、不気味でした。そして、いきなり挫折しそうでした(笑)。
津原泰水さんの作品は、私もまだあまり読んでないのですが、『綺譚集』なんか、幻想的でいいですよ。ただし、ちょっとグロイところもあるかも・・・。
| 水無月・R | 2008/09/14 11:52 PM |
水無月・Rさん、こんにちは。
蟹はまだ食べれそうですが、虫には参りました。
虫を食べる機会はないと(ないことを願う)思うけど、食感を想像して(したくな〜い)どんより。
そうそう、「反曲隧道」の句読点は独特でしたね。
あれ?と思って、長い一文続きに引き摺られるようにして、あの世界に入っていってしまった。
グロさにどこまで耐えられるか、津原さんたくさん読みたいけど、完全走破は無理かもです。
| 雪芽 | 2008/09/15 1:35 PM |
雪芽さん、こんにちわ!
津原さんの世界に、足元まではまってしまったんですね。
私はすでに胸元あたりまできてます〜。でも津原さんの作品は、とぼけた世界かと思ったら妖しげな世界やらグロテスクな世界に迷い込んでしまったりするんで、油断できなくて・・。どっぷりつかるのはまだ躊躇してます。
水無月・Rさんお勧めの「綺譚集」、私も好きです。いいですよ〜。あとはルピナス探偵団のシリーズも、ちょっと少女漫画チックだけれど好きです。
| june | 2008/09/19 4:26 PM |
juneさん、こんばんは。
もう胸元まではまってますか!!
私はまだ足元です。でもここで足を洗うことは出来そうにありません。
もうちょっと先までいく覚悟です。
って、大袈裟ですが(笑)、安易に踏み込むと、コワイものが飛び出してきそうですから。
油断できませんよね。
お薦めの「綺譚集」とルピナス探偵団シリーズは読んでみます。
お二人のお薦めなら安心です。
| 雪芽 | 2008/09/19 10:20 PM |

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『蘆屋家の崩壊』/津原泰水 ◎
夏ですな〜。ぞ〜っとする、怪談話が気持ちいいですねぇ。何故か妖物系を引き寄せてしまう体質?の三十路を越え未だ定職につけずにいる男・猿渡と、黒づくめの怪奇小説家・伯爵のコンビが巡り合う、ゴシックホラーじみた物語の数々。 私、津原泰水さんは『綺譚集』から
| 蒼のほとりで書に溺れ。 | 2008/09/14 11:46 PM |
「蘆屋家の崩壊」津原泰水
蘆屋家の崩壊 「赤い竪琴」にすっかり魅せられてしまい、津原さんの他の作品をどうしても読みたくなって、次はこれにいってみました。恋愛小説から津原さんに入ったので、ホラーについていけるだろうか・・と、実はドキドキしながら読んだのですが、杞憂でした。しっ
| 本のある生活 | 2008/09/19 4:26 PM |
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