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*「不連続の世界」 恩田 陸

恩田 陸
幻冬舎
¥ 1,680
(2008-07)

 『月の裏側』の塚崎多聞再び!のトラベルミステリー。多聞が不可思議を呼ぶのか、不可思議な事象が多聞を引き寄せるのか、彼の行く先々には怖い空気が影のように佇んでいる。
そういえばこの本に先立って読んだ恩田さんの本のタイトルが『きのうの世界』だった。意識して選んだわけではないが、世界続きになった。世界シリーズじゃん!内容はまったく関連性がないものの、妙な符合の一致が面白かった。

不連続の世界に戻ろう。
ちょっと不思議だな、怖いよね、なんだろう、気にかかる、目の前に転がってきたささやかな謎。遣り過ごしてもいい、踏みつけてもかまわない(痛い〜)、手に取るかは自分次第。命や生活を脅かす切迫した問題ではないが、多聞は拾ってみる。
この多聞という男の在り様が面白い。周りの人物評を借りると、彼は開かれた状態であり、世間のどこにも属さない、通り過ぎるだけの人間ということなのだ。この特異性が発揮されたのが『月の裏側』だろうか。といっても音楽ディレクターという生業をこなし、社会にもちゃんと適合している。どこか飄々とし、表面的には窺い知ることのできない、多聞の特異な色が物語りに潜む怖さと調和している。

五つの短篇はどれも外れなしで、面白かった。恩田さんの短篇というと、長編の為の習作みたいな位置にある作品もあるが、本書はみっちりとした短篇が並んでいる。
度々名前があがる『月の裏側』は、多聞初お目見えの作品であるが、未読でもまったく問題はない。前後がどちらになったとしても、両方合わせて読むとなおよしである。ひたひたと沁み込んでくる恐怖、物語に浸透する水分量の多さが好きなので、『月の裏側』はお薦めしたい作品ではある。
 「木守り男」
コモリオトコ。
大学の先輩田代が口にした言葉から広がる謎。田代は三十代半ばの売れっ子放送作家。多聞が散歩すると、決まったように田代と行き会い、いっとき言葉を交わすという関係が続いている。
言葉は音として聞いただけではわからないことがある。その部分をうまく謎へと結びつけているのがミソ。東京での幅広い交友関係も描かれている。
田代が毎度語る夢の話。「家が夢を見てるんじゃないですか」という多聞の言葉に、内田善美の『星の時計のLiddell』を思い浮かべる。“「あの家は夢を見るのです”と老人は言った。懐かしくなってパラパラと拾い読みする。

「悪魔を憐れむ歌」
聴くと死にたくなる音楽。セイレインという歌い手の曲に絡む、複数の不可解な死を巡り、音源を辿る多聞達を待ち受けていたのは何か。
地方に残る古い風習。オーディオルームでの対話は怖い。雰囲気としてはいたって穏やかな空気に包まれているのに、それがかえって怖さを増幅させていた。多聞でなければ、相手の決断は別のものになっていただろう。

「幻影キネマ」
過去のトラウマが思わぬ幻影を投げかける。人は自分に嘘をつくものなんだな。傷ついた心を包み込むための苦しい偽り。

「砂丘ピクニック」
砂丘は行ったことがない。砂丘に座って月を肴にビールなんてのもいいな。
翻訳家の友人巴の誘いを受け、T県へ砂丘を見にきた多聞。巴が引き受けた翻訳に関係する調査が目的だ。
視覚的錯覚を使った作品。謎にはちょっと艶っぽい想像もあって、なだらかな曲線が多聞の過去のエピソードを喚起する。

「夜明けのガスパール」
男4人が夜行列車に乗って旅を供にする。酒と怪談話、列車の進行とともに、夜も深く進行していく。いずれも多忙な男達が、何の酔狂で集まったのか。最後に明かされる旅の真の目的に驚愕する。オセロの駒がいっぺんに全部黒になってしまったみたいだ。夜の列車に鳴り響く携帯の音、聞こえてきた声の主、多聞はやっと現在と繋がる。哀しい真実。苦い真実。男同士の友情にも静かに乾杯。
この話はよかったなぁ、すごく好きだな。

2008年10月26日読了
| 恩田陸 | 16:58 | comments(10) | trackbacks(6) | | |

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♯ コメント

こんにちは。TBさせていただきました。
私も最近、読了しました。
「月の裏側」を読んだのが大分前だったのであまり覚えていなかったのですが、それでも十分楽しめました。
多聞って、本当に不思議な人なんだな〜というのが最初の印象です^^
どの作品も、なるほど〜と納得しましたが、最後は感動しました。
私も凄く好きです。
| 苗坊 | 2008/11/09 12:14 PM |
こんばんは。
SF/ホラーテイストの空気を漂わせながら、ミステリ寄りという短編集でしたね。
約十年、長い期間に渡って書かれた短編集のせいか、この1冊を通して時代の移り変わり変化を感じることもできました。
「夜明けのガスパール」足元をすくわれるような驚きがありました。友人たちとの友情がよかったです。
| 藍色 | 2008/11/10 2:35 AM |
飄飄としている多聞の人間味が感じられた最後の短編は良かったですね〜。男同士の友情、素敵でした。
日本中のいろんなところを旅している気持ち。でも、いつか自分の目で見てみたいなぁ〜とも思いました。
| エビノート | 2008/11/11 8:03 PM |
苗坊さん、こんばんは
『月の裏側』はホラーでちょっと怖い作品でした。その中で、多聞さんの不思議な雰囲気はなんとなく覚えています。
相変わらず不思議なお人でした(笑)
最後の「夜明けのガスパール」、怖い話大会にどんなオチが待っているのかと思ったら、感動でした。
前作が未読でも楽しめるところもいいですね。
| 雪芽 | 2008/11/11 10:30 PM |
藍色さん、こんばんは
SF、ホラー、ミステリー、いろんな要素が交じり合ってました。
読み終えて時間が経過するほどに、「夜明けのカズパール」の印象が濃くなっていきます。友情が心に熱い。
でも、怖くなりますね、自分の思っている現実って確かなのかなって。
10年というのは時代が変わるには充分な時間ですね。また10年後くらいに多聞の物語読んでみたいです。パッセンジャー多聞の目に映る世界を。
| 雪芽 | 2008/11/11 10:46 PM |
エピノートさん、こんばんは
多聞もやはり人の子でした。持つべきは友です。印象に残る、ぐっときてしまう最後が鮮やかでした。
一緒に旅した気分でしたねぇ。読むだけではなくその場所に行ってみたくなります。だけど、怖い思いだけは遠慮します、汗
| 雪芽 | 2008/11/11 10:57 PM |
こんにちは。
 この作品、「月の裏側」の多聞くんが出てくるんですね。それだけでも読みたいものです。「月の裏側」がああいう話だったから、その前の話になるのかな?
恩田陸さんの作品の中でも一番くらい好きな作品なんで、これも読んでみたいです。
| 樽井 | 2008/11/19 3:55 PM |
樽井さん、こんばんは。
多聞くん出てきますよ〜
またあちこちで不思議なことに巻き込まれています。
う〜ん、話の時系列はどうなんでしょうね。
作品が発表された順は別として、どちらが前後でも構わないように思いましたが。
「月の裏側」がお好きならば、この作品はお薦めです♪
| 雪芽 | 2008/11/24 10:13 PM |
雪芽さん、こんばんわ!
怖いけれどこういう世界は大好きです。多聞の飄々としたキャラともよくあっていました。
その多聞のキャラを知っていただけに「夜明けのガスパール」の舞台が暗転するようなラストはびっくりしました。でも、いい話でしたねぇ。男同士の友情が素敵でした。
| june | 2009/07/30 8:47 PM |
juneさん、こんばんは〜
今年は暑くならない夏、もしや冷夏になるのかとしょんぼりしていたら、じわじわ夏らしく温度が上昇してきました。
暑い時にはひんやりした本が読みたい、そんな期待に答えてくれる本の一冊かなと思います。
多聞のキャラも掴みどころなくて、得体の知れない怖さが背後に潜む本の世界観にぴったり。
「夜明けのガスパール」は酒と男と友情と、三拍子そろっていてよかったですねぇ。
| 雪芽 | 2009/08/05 10:51 PM |

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