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*「チェーン・ポイズン」 本多孝好

本多 孝好
講談社
¥ 1,680
(2008-10-30)

 いままで見ていたものはいったいなんだったのだろう。
最後、真相の一撃で、鮮やかに風景が一変する。唖然としたまま物語を遡って考えると、絶妙に伏線が配置されていることに気づくのだ。ああ、だからなのか。そういうことだったんだ。驚きと納得を繰り返す。

あと1年。死ぬ日を待ち続ける。
それだけが私の希望――。

かりそめに生きることは、もうできない。選んだのは「死」。
不思議な自殺の連鎖を調べる記者。そこに至るただひとつの繋がり。
誰にも求められず、愛されず、歯車以下の会社での日々。
簡単に想像できる定年までの生活は、絶望的な未来そのものだった。
死への憧れを募らせる孤独な女性にかけられた、
謎の人物からのささやき。
「本当に死ぬ気なら、1年待ちませんか?
1年頑張ったご褒美を差し上げます」
それは決して悪い取り引きではないように思われた――。

 ひとりの女性の自殺を調べる雑誌記者。男が興味を引かれたのは、自分が仕事で係ったことのある、ふたりの自殺者との共通点にあった。
自殺の関連性を調べる男、生きる希望を失くした女、ふたりの姿が交互に描かれる。

なぜ彼女は自殺したのか。それも仕事を辞めて一年後に、特定の方法で。
男が追うのは自殺に秘められた真相、ミステリー。

女が求めるのは定められた1年後の死。
偶然出会った児童養護施設の子ども達との生活の中で、活き活きとした生命力を甦らせていく姿と、結末としての自殺に、読んでいて戸惑いを覚える。こんなにも必要とされているのになぜと思わずにいられない。この物語ではおばちゃんと呼ばれている女も、子ども達の存在が重みを増していると感じている。重荷ではなく、生きるための浮力だ。日々が過ぎ、死の影が迫ってくると、ますますおばちゃんの生が息づいてくる。
死ぬ気でがんばるとはおばちゃんの場合比喩ではなくて、文字どおり死ぬつもりで奔走するのだ。
そうなると意識されるのは死ではなく、かえって生のほうとなるから不思議だ。

1年間後の死を確約された猶予期間に醸成されるのは、死を待ち続ける希望だけなのか。灰色の境界域からどちらへ着地するか、選ぶのは自分次第だ。生と死、死と生。その1年間に見る風景は、あまりにも大きく違っている。
真相究明は雑誌記者に任せ、最後は素直に驚く。そのほうが鮮やかに反転する世界に、感動できる気がする。

2009年1月2日読了
| 本田孝好 | 17:09 | comments(8) | trackbacks(4) | | |

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♯ コメント

こんにちは。
内容は置くととして、これは会心のミステリでしたね。
よくある手だけれど、まんまとしてやられました。
でも悔しくはなかったです。というか、あっぱれ!
| しんちゃん | 2009/01/26 3:39 PM |
自分も、まんまとはまった方です。

最後に誰が誰かわからなくなってしまった(>_<)
まだまだ修行がたりないんですね(笑
| じゅずじ | 2009/01/26 6:22 PM |
しんちゃん、こんばんは。
そうなんです、よくある手なのに、
こうもあっさり騙されるとは思いませんでした。
あまりに見事なので、ただただ凄いとしか。
悔しさより、あっぱれ!ですね。同感。
| 雪芽 | 2009/01/26 8:35 PM |
じゅずじさん、こんばんは。
きつねにつままれたようになりますね。
騙された〜と気づいてもなにがなんだか。
修業の道は険しく厳しいです〜
| 雪芽 | 2009/01/26 8:38 PM |
こんばんは。
おばちゃんの心境の変化が、すごかったですね。
一年後に、こんなに違っていたなんて。
すっかり騙されて、真相に驚きました。
希望が感じられるラストでよかったです。
| 藍色 | 2009/01/27 4:43 AM |
藍色さん、こんばんは。
最初と最後では180度違う人間になってました。
出会いの力って大きい。
騙されましたね〜、やられた。
最後の光がなければ無常感だけが残るところでした。
| 雪芽 | 2009/01/28 10:09 PM |
雪芽さん おはようございます
>そうなると意識されるのは死ではなく、
>かえって生のほうとなるから不思議だ
死を描きながら実は生を描いていたのでしょうか。
今度の本多さんもとても良かった。満足です!!!
| yori | 2009/02/21 9:01 AM |
yoriさん、こんばんは。
死の影が濃くなるほど生に光が当たって、
普通以上に一生懸命生きいる、そんなふうに思えました。
ラストがとってもよかったです。
本多さんいいなぁ。
| 雪芽 | 2009/02/23 7:34 PM |

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