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*「黄金旅風」 飯嶋和一

飯嶋和一さんはとても寡作な作家である。だが、ぽつりぽつりと出版される作品は、寡作であることが充分頷けるほど、がっしりとした骨格を持った存在感を示すのだ。
克明に書き込まれる時代背景、緻密な人物描写、多数の支流から本流へ、時代のうねりが壮大な物語となって広がる。いったん読み出してしまえば、あとは流れのままに読み進めてしまう骨太な力強さが作品の魅力だと思う。
ただ、その克明で緻密な文章、加えて長大なページ数もあり、読むには覚悟がいるのが飯嶋作品かもしれない。

寡作な作家、飯嶋さんの新刊が昨年出た。島原の乱を題材にした『出星前夜』は、どうやら既刊『黄金旅風』の続編らしい。
あらら、積読本の中にあるじゃないか。
江戸寛永年間、栄華を誇った海外貿易都市・長崎に二人の大馬鹿者が生まれた。「金屋町の放蕩息子」「平戸町の悪童」と並び称されたこの二人こそ、後に史上最大の朱印船貿易家と呼ばれた末次平左衛門と、その親友、内町火消組惣頭・平尾才介だった。代官であった平左衛門の父・末次平蔵の死をきっかけに、新たな内外の脅威が長崎を襲い始める。そのとき、卓越した政治感覚と強靱な正義感を持つかつての「大馬鹿者」二人が立ち上がった。

 『神無き月十一番目の夜』ではひとつの村の消滅までを描き、描写力には圧倒されたものの、希望の欠片もない重い読後感に、どんよりした気分になったものだ。その点、この『黄金旅風』は『始祖鳥記』と同様、強い信念と志を持った漢たちを描いた、群像劇としての面白さを、たっぷり味わうことのできる作品だ。
読まずにいるのはもったいない。

物語の背景となるのは切支丹弾圧、ポルトガルやオランダとの海外貿易。
これら宗教や貿易に対する、表向きの政の裏にある野心と思惑が、長崎の町や海外貿易に暗雲をもたらす。対するのは、自分が生まれ育った長崎の町民を守る、その一点に我が身を賭して、難事に立ち向かう平左衛門。助力する親友才介の人望と気概。ふたりの絆の強さを表わす黒塗りの印籠と脇差には、読みながら熱い思いがこみ上げてきた。
彼らだけではない。細部のエピソードで描かれる登場人物たちも、土地に根付く者の生き様、心情が細やかに描かれており、破天荒な人物造形の主人公ふたりとはまた違った、ひとりの人間としてのつつましやかな存在感で、物語をより濃密なものとしている。
物語中に描かれる人物の行動に心熱くする、感動する、涙する。この作品を読む中で、何度そんな思いを味わっただろうか。

平左衛門の心の支えとなる平尾才介。『始祖鳥記』の巴屋伊兵衛とともに、飯嶋さんはまたひとり、忘れられない人物を残していってくれた。

2009年1月4日読了
| 歴史・時代小説 | 18:14 | comments(10) | trackbacks(4) | | |

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♯ コメント

雪芽さん、こんばんは(^^)。
「鎖国」に至る事情、海外と日本の問題、長崎の市井の町人の暮らし、色々な内容がぎっしりと詰まっている、読み応えのある物語でしたね。
歴史のターニングポイントを物語で読めたのは、とても良かったです。難しかったですけどね(^_^;)。
| 水無月・R | 2009/01/25 11:30 PM |
水無月・Rさん、こんばんは〜
日本国内に向けた視点に止まらない、諸外国との関係を視野に据えた壮大な物語で、それ以外にも当時の暮らしぶりが様々に伺えましたね。外国人が多く住む長崎の町の特殊性も、興味深く読みました。
ほんと内容ぎっしりです。
頭の中が活字で溢れそうになりました。
鎖国はこうして出来上がっていったのですね。
| 雪芽 | 2009/01/26 8:30 PM |
雪芽さん、こんばんわ!
私も熱い涙をこぼしました。
こういう読み応えのある熱い男たちの話は大好きです。
でも、分厚くてとっつきにくい印象があるから、
読むのに覚悟がいるんですよね。
読み始めて物語のうねりに乗ってしまえば、
もっと読んでいたいと思ってしまうのに。
『出星前夜』は続編だったのですね。
じっくり時間が取れるときと言わず、読み始めてしまおうかなぁ。
| june | 2009/01/30 9:13 PM |
juneさん
本も厚いけれど、描かれている男たちも熱いですねぇ。
閉塞的で憤りもあるいまの世の中だけに、余計彼らの行き方に魅了されてしまうのかも、なんて思います。
一度流れにのってしまえばもっと先まで読みたくなってしまいますよね。
『出星前夜』にはここに登場した平左衛門も出るようなので、ぜひ続きを読まなくちゃ。
今度も厚いですが^^;
| 雪芽 | 2009/02/01 5:56 PM |
雪芽さん こんにちは
これ、面白そうですね。
さっそくチェックしてみます!!!
| yori | 2009/02/07 3:45 PM |
yoriさん、こんばんは。
そうなんですよ、もう〜すごく面白くて、
血が滾るお話ですのでぜひチェックを!
| 雪芽 | 2009/02/07 8:58 PM |
雪芽さん こんにちは
読みました!! 読み初めは正直辛かったけど、最後まで読み通して、よかったです。魅力的な登場人物の数々、堪能させていただきました!!
| yori | 2009/04/05 3:29 PM |
yoriさん、こんにちは。
わかります、最初はちょっとしんどいのです。
でも、読まずにいるのはもったいない作品ですよね。
登場人物たちがなんといっても魅力的!
続編も買ってありますが、GWにいっき読みする予定です。
| 雪芽 | 2009/04/19 4:53 PM |
こんばんは。お久しぶりです。
壮大な物語にうっとりとした読書の時間を持ちました。
海を見つめる男たちの視野の広さ、器量の大きさがかっこよくて、読みだしてからは引き込まれるばかりでした。
本筋には抵触するが絡まない人物たちを描くことで、この時代の人々の生活や思考を、より一層、鮮やかに具現させることに成功していると思いました。
この人の本は、「出星前夜」も含めて、もっと読んでみたいものです。
| 香桑 | 2010/07/21 9:49 PM |
香桑さん、お久しぶりです。
TB&コメントもありがとうございます。
時代のうねりに織り込まれる力強い人間像に魅了されっぱなしでした。
本の分厚さも、時間が過ぎるのも忘れてしまいます。
「出星前夜」は買ったまま、いまだ積読本です。
飯嶋さんが創り出す言葉の海に飛び込むにはちょっと覚悟が必要。
体力気力のある時に、緻密な物語世界にどっぷり浸りたいと思っているのですが、いつになるのか。
| 雪芽 | 2010/07/23 10:30 PM |

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『黄金旅風』/飯嶋和一 ○
あ〜。非常にてこずりました。飯嶋和一の『黄金旅風』。非常にカッチリとした歴史小説です。いえ、おカタイ小説という訳ではなく、中身がぎっしり、って感じで、非常に読みこなすのに苦労しました。
| 蒼のほとりで書に溺れ。 | 2009/01/25 11:10 PM |
「黄金旅風」飯嶋和一
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