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*「麦の海に沈む果実」 恩田陸

麦の海に沈む果実
麦の海に沈む果実
恩田 陸
これは、私が古い革のトランクを取り戻すまでの物語である。

北の大地の東、国内最大級の湿原が広がる。灰色の風景の中、水野理瀬を乗せた列車は走り続ける。向う先にあるのは、もとは修道院だった全寮制の学園。
湿原の中の要塞を思わせる青の丘にあるその学園に、理瀬は二月最後の日の転入生として足を踏み入れる。

二月最後の日にやって来た転入生。学園の生徒達にとってそのことの意味は大きい。
何故なら此処は「三月の国」、三月以外の転入生は破滅をもたらすといわれているからだった。
湿原のある町へ列車で向うと、途中から急に霧が立ち込めてくる。町へ近づいたことの印だ。まるで異世界へ自分の身体が運ばれていくような錯覚に囚われる。
物語の舞台となっているのは釧路湿原だろう。
夏場は日中でも霧が風景を覆い、身体を湿らせる、そんな場所だった。
学校という空間自体が、社会に対して卵の殻のようなものであり、ましてや湿原にある全寮制の学園となれば、いっそう周りと隔絶した空間としての設定が堅固のものとなり、ミステリーの舞台としてはうってつけといえる。

理瀬は何故二月最後の転入生となったのか。
ここに仕掛けられた謎。
女装した校長。校長が開くお茶会。
不思議の国に迷い込んだアリスのように、理瀬の周りで次々と不可思議な出来事が起こる。

この物語は、理瀬が古い革のトランクを取り戻すまでの物語だという、冒頭に引用した文章で始まる。
古い革のトランク、意味するのは記憶だ。

記憶というものはゆるやかな螺旋模様を描いている

いつのまにか自分で作り上げた物語を自分自身の一部に織り込んでしまっていることは多々あるものだ

記憶というものの曖昧さ。
ラスト、衝撃的な光景によって欠けた記憶の輪が繋がり、理瀬はトランクを取り戻すことになる。
結末を知ることより、物語の過程が読んでいて楽しい。
不思議な「三月の国」へ理瀬と一緒に迷い込んでみるのも悪くないと思える。

恩田陸の学園ものは、登場するキャラクター達の魅力も楽しみのひとつ。
この作品の中でとりわけ好きなのは黎二だろうか。
図書室のデットスペースで独り本を読む姿。クールで不器用な少年の硬質さ。最後までかっこいい奴なのだ。

校長と理瀬に関して思ったこと。
対外的にはスーツを着て男性の格好だが、学園に戻ると通常女装で過ごす校長。
聖の理瀬感、『きれいな女の子』でいることの居心地の悪さ。
理瀬自身のイメージの中にも、ツイードの三つ揃いを着て、頭を精悍にポマードで撫でつける自分というのがある。
そういえば『MAZE』や『クレオパトラの夢』に登場する恵弥も、男性でありながら女性言葉を話す、男女を意識しないキャラクターだった。
恩田陸の作品に登場するジェンダーを越境するキャラクター達。
理瀬が登場する他の作品は、本書以外は『図書室の海』に収録されている「睡蓮」を読んだのみなので、この人物設定が作品に対してどれほどの重要性を持っているかわからないのだが、ちょっと興味引かれた。

ストーリーには直接関係ない話を最後に書いておこう。
この作品は章ごとに分かれているが、各章はさらにページ下に付されたタイトルよっていくつかに分けられる。
第十五章の中のタイトルのひとつが、
十月はたそがれの国
なんとも懐かしい響きだ。
『十月はたそがれの国』はブラッドベリの小説のタイトルでもある。
河出文庫10月の新刊、ブラッドベリの『塵よりよみがえり』のあとがきを書いているのが恩田陸だった。
| 恩田陸 | 00:25 | comments(10) | trackbacks(3) | | |

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♯ コメント

深夜にこんばんわ
少し眠いかも〜です(笑)

今日は「麦の海に沈む果実」なのですね。
O(≧▽≦)O ワーイ♪
恩田さんの作品の中でも好きなものの
一つです。
でも、実は少し痛かった作品でもありました。
この人のキャラって過去の自分にだぶらせて
しまうことありませんか?
そこまで書いてしまうと言い過ぎなのかも
知れませんが、あ、分かる分かる、みたいな。
そういう意味で痛いと同時に好き。
学園物が好きっていうのもプッシュしてますけど。

'『きれいな女の子』でいることの居心地の悪さ’
雪芽さん、慧眼です〜。
そこまで、自分、読みきれなかったかも、です(^^;;

河出文庫10月の新刊、
ブラッドベリの『塵よりよみがえり』のあとがき
恩田さんだったのですね。
ここで、また一個良い事を教えていただいちゃいました。
(^ー^* )フフ♪

そうそう。
湯本さんの新刊!
ずいぶん、待ちました〜。
ちょっと、文庫化無いかなって諦めていたんです。
そしたらようやく出たんですね、「西日の町」。
でも、少し読むのは先になりそう。
「お楽しみは後に」って言いたいところだけど、
まずは『博士の愛した数式』を…(爆)。
| litteleapple | 2005/10/24 1:13 AM |
あら、昨日はずいぶん深夜族のlittleappleさんですね。
真夜中にお越し頂きありがとうございます〜♪

恩田さんの学園ものって、自分が密かに心に抱いていた感情を、さらりと登場人物の想いに寄せて言葉にしてみせられるから、どうしてわかるんだろうって、焦っちゃいます。
それに出てくる男の子達も汗臭くない(笑)
昔の少女漫画の世界に近い色合いでもある気がしますね。
懐かしさと、痛みと、共感と、
どんどんハマっていってしまいます。
同じキャラクターを複数の作品に中に見つけることも、
いろいろ読みたくなる原因でしょうか。

「西日の町」は私ももう少し後になりそうです。
昨日「塵よりよみがえり」を読了したので、
待ちに待った、「白鳥異伝」に取り掛かります。
すでに購入済み。
ノベルズで上下巻。た〜っぷり楽しめそうです。
| 雪芽 | 2005/10/24 10:47 PM |
こんばんわ〜。
コメントありがとうございました。
遅くなってしまって、ごめんなさい。
(o*。_。)oペコッ

「麦の海に沈む果実」とはかけ離れちゃうけど、
足跡ペッタンでお邪魔しました。

「白鳥異伝」はハードでも、厚いですよね。
荻原さんはノベルスの改稿ないかな、
と思うのだけど。
彼女の作品は読み応えも楽しみもてんこ盛り。
レビュー、期待してます(*^^*)。

深夜族の原因は日本シリーズだったり…(^^;;。
おかげで風邪と寝不足のダブルパンチです。
今週は眠い眠い一週間でした(笑)
| littleapple | 2005/10/27 1:13 AM |
雪芽さん、おはようございます。
>結末を知ることより、物語の過程が読んでいて楽しい。
そのとおりです!私はこれを読んで、NHKの少年ドラマシリーズとか、少女まんがを連想したのですが、読んでいて本当に楽しかったです。

理瀬が登場すると言えば、やはり「黄昏の百合の骨」でしょう。
その後の理瀬の話なので、お楽しみもあるし、「睡蓮」に出てきた家族も登場します。

「10月はたそがれの国」懐かしいです・・。ブラッドベリのあとがきを書いているなんて、やっぱり恩田さん好きなんですね。
あとがきも読んでみたいし(本末転倒!?)、欲しくなってしまいました。
| june | 2005/10/27 9:11 AM |
littleappleさん、足ペッタンありがとうございます!
深夜族のわけは日本シリーズにあったんですね。
チョコを買うならいまがチャンスだわ。
風邪のお加減いかがかなと気になっていましたが、ブログも更新されているのを見て安心しました。

>読み応えも楽しみもてんこ盛り
てんこ盛り!!おお、豪勢だわ。
萩原さんの作品、面白くて先を急ぎたくなるけど、じっくり日本の英雄伝説を堪能したいと思います。

| 雪芽 | 2005/10/28 8:40 PM |
juneさん、TBありがとうございます!
恩田さんの作品て、漫画世代にもたまらない魅力がありますね。
「黄昏の百合の骨」は理瀬が少し大人になった話でしたか。
まだ読んでいないので、彼女の成長っぷりを早く見てみたい気がします。

恩田さんの読書量って凄まじいなと思います。
すごい読むのが早いらしいですね。羨ましいな。
まずはあとがきを立ち読みされてみてはいかがでしょう。
そのままお持ち帰りしたくなるかもしれませんが。
| 雪芽 | 2005/10/28 8:47 PM |
本日、「麦の海に沈む果実」購入してきました。やっと「六番目の小夜子」が読み終わり、やっぱり『学園もの』がもっと読みたくなって手にしてました。(ハマってる)
最近、2,3冊並行して読んでるから、通勤途中、昼間、夜寝る前なんて分けて読んでてそれぞれがなかなか終わらないんだけど、まあそれも良しかな。
雪芽さんの感想があまりにもいいもんでついつい読みたくなっちゃいます。ベットサイドが本でいっぱいになってきたぁ〜
感想はまた、近々!!
| らん | 2005/11/03 10:29 PM |
らんさん、こんばんは〜
すっかりハマってますね。わかるわかる。
私達にしてみれば、恩田さんの学園ものって懐かしく感じて、過去の自分を登場人物の誰かに重ねてみたくなったり。
らんさんの感想も楽しみしてますよ。

私は昨日寝る前にと思って読みかけの本を読み出したら止まらず、最後まで読んでしまいました。
午前2時よ!寝しなの読書は危ない。
今夜は下巻に突入だ。
| 雪芽 | 2005/11/04 9:35 PM |
はじめまして。やぎっちょさんのところから飛んで来ました!!
この作品、夢中になって読みました(>_<)
そして恩田さんの魅力に取り付かれた話でもあります。
キャラクターが非常に個性豊かで、とりわけれいじ(漢字が出ませんでした…↓)に心惹かれましたね。
りせとワルツを踊る最初で最後のシーンは
美しくも悲しくなります。
恩田さん凄い!!
| 弥勒 | 2006/05/28 12:16 PM |
弥勒さん、はじめまして。
やぎっちょさん経由で飛んで来て頂いたのですね。
コメント嬉しいです、ありがとう。

いいですよね恩田さん。
まだまだ読んだ作品の数は少ないけれど、
その中でも「麦の海に沈む果実」は大好きな作品です。
黎二(れいはレイメイで変換すると出ますよ〜)がね、
これがまた格好いいんだもの。
好きになるには年下過ぎますけどね(笑)
ワルツを踊るシーンもほんと美しくて
せつなかったですよね。
こういういわゆる胸キュンシーンを書くの上手いです、
恩田さん。
| 雪芽 | 2006/05/28 8:54 PM |

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麦の海に沈む果実
http://yaplog.jp/naomi703sugar/tb_ping/82
| 本のある生活 | 2005/10/27 9:03 AM |
麦の海に沈む果実 恩田陸
麦の海に沈む果実 ■やぎっちょ評価コメント 陸ちゃん3冊目はこの本。 頭痛の中あともう少し、もう少しと思いながら結構必死に読みました。陸ちゃん本は途中でやめるのが難しいですね。読後はおかげさまでげっそり。 ま、そんなことはともあれ、学園という狭い世界
| "やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書!! | 2006/06/23 2:25 AM |
『麦の海に沈む果実』 恩田陸
恩田陸お得意の、美しく、 そして賢い少年少女たちの、学園ミステリー。 北の大地に広がる沼地の真ん中に、 霧に包まれ佇む学園。 訳アリの子らが集うそこは、入ることも難しいが、 出ることは、もっと難しいという。 それだけで、「秘密の花園」的な期待
| *モナミ* | 2006/11/25 6:51 PM |
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