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*「儚い羊たちの祝宴」 米澤穂信

米澤 穂信
新潮社
¥ 1,470
(2008-11)

舌を刺激する鋭い苦味の効いた黒い話たち。
《古典部シリーズ》、《小市民シリーズ》といった日常にある謎を解くのとはまったく趣向が異なるこのブラックな風味、嫌いじゃない。
いつもは始めになんとはなしにパラ見するのだけど(内容を読むのではなく項を埋める文章の視覚的感覚を確認するために)、帯にある「ラスト一行の衝撃」が万が一にも損なわれるのを惜しんで、真面目に一頁の一行目から順を追って読んだ。

 ミステリの醍醐味と言えば、終盤のどんでん返し。中でも、「最後の一撃」と呼ばれる、ラストで鮮やかに真相を引っ繰り返す技は、短編の華であり至芸でもある。本書は、更にその上をいく、「ラスト一行の衝撃」に徹底的にこだわった連作集。古今東西、短編集は数あれど、収録作すべてがラスト一行で落ちるミステリは本書だけ。
「BOOK」データベースより

「ラスト一行の衝撃」という惹句はどうだろう。ラスト一行にいく前にすでに衝撃がなきにしもあらず。薄々と感じる。それがまた怖くて。
とはいえ、魅惑的な暗黒の闇を抱えている作品はどれもが衝撃的で素晴らしかった。素晴らしく怖かった。
物語の終焉が近づくにつれ輪郭が顕わになっていく真相。先に待ち構えているものの正体は予想される。じわじわと歩みを進めていく。少しの恐怖が入り混じるこの道筋がたまらなく楽しい。道の果て、唐突にぽっかりと足元に口を広げる暗黒の深淵。目眩とともに呑み込まれそうになっていく自分がいる。

旧家や富裕な家に生息するお嬢様たちの気高さ、傲慢さ、残忍さ、自らが負うべき現実とそれを支えるための儚き幻想が、古色に薫る文章で綴られている。
いずれの短編にも登場する「バベルの会」という大学の読書会。共通項であるこの会の存在理由が明かされる表題作「儚い羊たちの祝宴」は戦慄の一語に尽きる。
この本を読むまでアミルスタン羊を知らなかった。胃の腑から得たいの知れないものがこみ上げてくる。

五つの短編のうちとくに好きなのは「玉野五十鈴の誉れ」と「儚い羊たちの祝宴」のふたつ。
「玉野五十鈴の誉れ」は無関係に思えた口ずさみの旋律が戦慄に変わる「ラスト一行の衝撃」が見事決まっている。純香お嬢さまと使用人五十鈴のやり取りもよかった。
「儚い羊たちの祝宴」、これはもう恐ろしいまでにブラックな味わい。憐れなるアミルスタン羊たちよ!と瞑目してしまう。子どもの頃から羊肉は食べることが多い。北海道の焼肉といえばジンギスカンであるからして。羊、羊、美味なる羊だけどアミルスタン羊だけは想像するに恐ろしい。

作品中に出てきた本と本と本。読んでみたいのが何冊もあってしっかり書き止めておかなくてはと思う。

2009年6月27日読了

| 米澤穂信 | 17:12 | comments(8) | trackbacks(3) | | |

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♯ コメント

こんにちは。またまたTBさせていただきました。
米沢さんって、本当にミステリを読み込まれているんだなって言うのが分かりますよね。
面白かったです。
ラストも、全然読めませんでした。
私も「玉野五十鈴の誉れ」が印象的で1番好きです。
| 苗坊 | 2009/06/28 6:59 PM |
雪芽さん、こんばんは(^^)。
確かに、アミルスタン羊はいただけませんよねぇ〜。
最高の美味だと言われ、さまざまな物語で、怖ろしいまでに食した者たちを虜にしてますが、その仲間入りしたいとは一切思えないという(笑)。
色々な所で驚愕しましたが、でもちょっとだけ自己顕示欲が肥大化したら・・・?あり得なくもない話のような気がしてくるという、怖ろしさがありました。

| 水無月・R | 2009/06/28 10:44 PM |
雪芽さん、こんにちわ。
こういう世界は大好きです。怖いんだけれど読まずにはいられません。
私も「玉野五十鈴の誉れ」はすごい!と思いました。
平和で楽しかった頃の象徴のようなあのフレーズが、
こういうことに使われようとは!やられました。

雪芽さんの記事を読んで、アミルスタン羊って有名なの?と思って検索してみました。
こういう本があったんですね。怖そうだけど読んでみたいです。
| june | 2009/07/01 4:07 PM |
苗坊さん、こんばんは。
いったいどれだけの本を読んでいるんでしょう。
話の中に出てくる本はいずれも面白そうで、読んで見たいものばかり。
名作でもけっこう読んでいないのがあるんですよ。
本を読んで本を見つける、この芋蔓本方式が楽しい。
意外なラスト、怖いラスト、ブラックの面白さを堪能しました。
「玉野五十鈴の誉れ」、よかったですねぇ。
| 雪芽 | 2009/07/01 8:30 PM |
水無月・Rさん、こんばんは。
どんなに美味であろうと、食べたいとは思いませんね。
仲間外れでいい!
自己顕示欲、誰の中にも、どんなに小さな芽だとしてもありますよねきっと。
話の設定は遠い世界だけれど、内面に目を向けるとありえそうと思えるから、怖いと感じるのでしょうね。
水無月:Rさんのコメントになるほどと思いました。
| 雪芽 | 2009/07/01 8:41 PM |
juneさん、こんばんは。
怖いんだけど読んでみたくなる、読んだら引き込まれてしまう、好きですよぉ私もこの世界。
ひと時の幸福な時間の象徴だっただけに、そのエピソードをほのぼの読んだあとに、あんなラストが待っていようとは。
身が凍りつきました。怖かった。

アミルスタン羊が出てくる本、ちょっと読んでみたくなりますよね。
| 雪芽 | 2009/07/01 8:47 PM |
雪芽さん、こんにちは。

米澤さんの描く仄暗い世界が堪能できる一冊でした。

私も「玉野五十鈴の誉れ」と「儚い羊たちの晩餐」の二編が気に入りました。
「玉野五十鈴の誉れ」の伏線の活かし方は素晴らしいですね。強烈な一撃にやられました。

アミルスタン羊という言葉は私も知りませんでした。
これからは、羊料理を見るたびに心の片隅で考えてしまいそうです。

米澤さんの読書量には感心してしまいますね。それをひけらかす風でなく自然に物語に取り込んでいるあたりはさすがだと思います。
| 空穂 | 2009/07/23 4:35 PM |
空穂さん、こんばんは。
そのふたつはすごくいいですよね、後々読み返したくなる作品です。
「玉野五十鈴の誉れ」はいっとき甘い夢を見て、急転直下の辛い日々。これは堪えます。
と思ったらラストの一撃が待っていた。素晴らしい!

普通に羊料理だとばかり思っていたら…、怖いですね。

米澤さんにも読書案内書いて欲しくなりました。
| 雪芽 | 2009/07/29 10:37 PM |

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儚い羊たちの祝宴 米澤穂信
儚い羊たちの祝宴 「身内に不幸がありまして」 村里夕日は孤児院で育ち、5歳の時に丹山家に引き取られる。丹山因陽の娘、吹子に仕える事になった。夕日は吹子に命ぜられ、秘密の本棚を作る。その棚に納められている本を借り、夕日は本の虜になる。丹山家には長男がい
| 苗坊の徒然日記 | 2009/06/28 6:58 PM |
『儚い羊たちの祝宴』/米澤穂信  ◎
ほほう・・。ラストで覆される、ってのは前評判で聞いていたのですが、なるほどですね。 読書会「バベルの会」に所属する娘たちの周辺で起きる、不吉な事件の数々。 以前読んだ『story Seller』に収録されていた「玉野五十鈴の誉れ」も、4編目に入っています。
| 蒼のほとりで書に溺れ。 | 2009/06/28 10:25 PM |
「儚い羊たちの祝宴」米澤穂信
儚い羊たちの祝宴クチコミを見る 帯に「どうぞ、最初から順番に一ページずつ読んで下さい。パラ読み禁止。後悔しても知りません!」とあるんで、すごく緊張しました。うっかりやってしまいそうなんですもん。 ということでおもむろに目次を見たら読んだばかり
| 本のある生活 | 2009/07/01 4:07 PM |
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