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*「MOMENT」 本多孝好通常人は死を遠くに見ている。
が、物語の舞台となるのは病院。日常的に生と死が特化したように意識される空間でもある。 しかしながら、主人公は死が自分を捕らえるかもしれないという局面の外にいる存在だ。だから、有馬の問いは容易に消化できない問いなのだ。考えてみたこともない問いだったかもしれない。 もし自分が死を意識せざるおえない状況にあったとしても、果して答えることができるかどうか怪しいところではあるが。 ただ彼は、一部の入院患者に対して、とても近い距離にあったといえる。 なぜ近いのか、一部の患者に、というのはなぜか。 この病院には『必殺仕事人伝説』なる噂が流れていた。 一部の、長期の、しかも末期患者の耳にしか入らない噂だった。死を間近にした患者の願い事をひとつだけ叶えてくれる人がこの病院にいる、しかもそれは掃除夫の人だという。 オリジナルの必殺仕事人黒衣の男はいつしか灰色の作業服を着た掃除夫に姿を変え、「僕」は仕事人の跡を継いで、患者達の最後の願いを叶えようとするのだが。 本書は4つのパートからなる連作短編集となっている。 ACT.1 FACE 依頼人三枝老人 ACT.2 WISH 依頼人今井美子 14歳 ACT.3 FIREFLY 依頼人上田早苗 THE FINAL ACT MOMENT 依頼人有馬義人 「僕」は依頼人達の願いにそって必殺仕事人の仕事を全うしようと動くのだが、叶えたはずの願いの裏に、隠された真意があることを知ることになる。露になった依頼人のほんとうの最後の願い、そこにある剥き出しの憎悪や哀しみ、死への恐怖を前にして、「僕」自身が揺らぎ始める。 THE FINAL ACTでは必殺仕事人伝説の裏に隠された真実を追う展開もある。隠された真実についてはここでは触れないが、重いテーマであり、死ぬ時に何を想うのかという問い同様、答えを出すのが難しい問題だ。 依頼主の想いに触れてきた「僕」が有馬の為に取る行動、少なくとも隠された真実への「僕」の答えがそこにある。 自分が死ぬ時に何を想うのか。 「僕」は物語の最後にきて、有馬になんと答えたのか。 私が一番好きなのはACT.3 FIREFLY。 乳癌を患う上田早苗の物語だ。ふたりが見守る中、闇に浮ぶ光。なんと幻想的で美しい情景だったろう。 『MISSING』でも思ったことだが、本田孝好の文章は簡潔でとてもクリア、読んでいて心地良い。心地良いが、淡々と流れるような文章を読み進むと、最後にきて鮮やかな手法で人の心の裏にある哀しさを読者の前に差し出しみせる。 それでいて切なさだけの読後感に終わらないのは、著者の視点に感傷に走り過ぎない静かな温かさがあるからだと思う。安易ではあるが言葉にするなら、人が抱く希望とでもいえようか。 「MOMENT」は章を重ねるごとにどんどん引き込まれていった本だった。 ♯ コメント| littleapple | 2005/11/27 10:26 PM |
今日はコメント日和、なんてのがあればですが^^;
私は逆なんですよ。 気持ちは覚えているのに、内容はぼんやりとした記憶しか残っていなくて、既読の本も再読しながらヨタヨタとレビュー書いている始末。 私も一緒に叫びます、プリーズ リメンバ〜(笑) でこの本、littleappleさんもすでに読んでいらっしゃったのですね。忙しいお時間の中ですけど、機会があればぜひ再読してレビュー読ませて頂きたいな。な♪ 最後にしかけてくるっていう表現ぴったりだと思います。 しかけてくる、メモしておこう。 本多さんの表現て優しく澄んでいるので、この最後にきてのインパクトが読後感として強く残りますね。 | 雪芽 | 2005/12/01 9:24 PM |
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みてくださいね。
| よろpikoヽ(*^0^*)ノ | 2005/11/25 12:29 AM |
∴ MOMENT
本多 孝好
MOMENT
短編が集まっている感じだったので、読みやすかったですね。
日常を侵害されないので(笑)
長編のものだと、読み終わるまでで一日が終わってしまう…。
さくさくっと読んだのだけれど…。
ちょっと推理小説チックなところかな。
まぁ、
| 乱読日記 | 2005/12/02 10:25 PM |
< 病院の噂話の物語 >
〜あの病院にはね、以前から語り継がれている一つの噂話があったんだ・・・〜
死を目前にした人間の願い事を一つだけ実現してくれるというそんなありがたい人間が病院内に存在している・・というそんな噂。
しかもその噂を耳にする
| 雑板屋 | 2006/01/12 1:15 PM |
∴ 「MOMENT」
あなたが余命を宣告されてしまい、
たった一つだけ願い事が叶うとしたら、
何を願いますか?
その願い事は、魔法じゃなくて実現可能なことに
限ります。
先月の旅のお供に読んだ文庫本は
そんなことを考えさせられるお話だった。
本多孝好の二冊目。
| 月灯りの舞 | 2007/12/05 1:59 PM |
∴ 最期の願い
小説「MOMENT」を読みました。
著者は 本多 孝好
病院でバイトをしている男
彼は 末期患者の最期の願いを叶える・・・
一見 感動路線かと思うが
そうではなくて
哀しく 深い ストーリー
そして意外な展開もあって
4つの話からなる連作短編
どれも良く出来てますね
| 笑う学生の生活 | 2011/10/30 6:42 PM |
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ありがとうございます
COMMENTS
ありがとうございます
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少しご無沙汰していたらレビューがたっくさん♪
早速、足跡をつけさせていただきますね(笑)
本多孝好さん、良いですよね。
MISSINGの「眠りの海」で惹かれて以来、
ずっと好きでした。
この作品読んでないかと思っていたら、
レビュー拝見して読んだことあったって気づいたっていう(苦笑)。
人間の記憶って恐ろしいですよね。
ちょっと自分の記憶力の低下に呆れました(爆)。
『心地良いが、淡々と流れるような文章を読み進むと、最後にきて鮮やかな手法で人の心の裏にある哀しさを読者の前に差し出しみせる』
本多さんの特徴をすごくよく捉えてるって思います。
つい、うなっちゃった。
(o ̄∇ ̄o)ヘヘッ♪
本多さんは最後にしかけてくるっていうか。
テーマを前面に押し出してくるようなことはしないのだけど、物語の結論が意外なところに収斂されてくる。
彼の世界って一筋縄じゃいかないし、透明で澄んでいる
気がするんです。
それが雪芽さんの言葉だとこんな風になるんですね。
機会があったら再読してみよう、って
レビューを拝見して思いました。
内容とか覚えてるのに、気持を忘れてたんです〜
(*ノ-;*)エーン
プリーズ リメンバー!!(笑)