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*「風流冷飯伝」

風流冷飯伝
米村 圭伍
米村圭伍の退屈姫君シリーズは、現在3作目の『退屈姫君恋に燃える』まで出ている。2作目からは文庫書下ろしとなった人気シリーズだ。
1作目の『退屈姫君伝』を読み、この小説が持つなんともいえないのほほんとした、それでいて味わいのある雰囲気にすっかり嵌ってしまった。そうとなれば一刻も早く続きを読みたいと気持ちが急く。さっそく他の2冊を購入、いざめだか姫の待つお江戸へ参ろうと読み始めたら、いきなり出鼻を挫かれることになる。
『退屈姫君伝』のめだか姫が嫁いだ先というのが、四国は讃岐にある小藩風見藩なのだが、著者自らシリーズ2作目の本文中において、『退屈姫君伝』、『風流冷飯伝』も合わせて読むと、さらに一層楽しめると書いているではないか。
『退屈姫君伝』は読了済である。が、『風流冷飯伝』は未読。このまま読んでしまおうか、著者お勧めの順番に従おうか。
結局、著者の言葉に従って今回取り上げる『風流冷飯伝』を先に読んだ。
本書に辿り着くまでの事の成り行きを長々と書いたのも、これから米村作品を読んでみようかと考える方が、“さらに一層楽しめる”ようにと願ってのことだ。
『風流冷飯伝』、『退屈姫君伝』と順にいくのがベストだが、逆でも構わない。シリーズ1作目を読んで、もしこのシリーズがお気に召した時は、次に行く前に『風流冷飯伝』を読んでみるとよいと思う。

まずは本書の舞台となるのは四国は讃岐にある、二万五千石の吹けば飛ぶような小藩風見藩だ。そこへ江戸から幇間(タイコモチ)の一八がやってくる。一八は『退屈姫君伝』に登場したお仙の兄で、四国に行ったきりの一八の事の顛末をこの作品で知ることができる。またシリーズでお馴染の江戸お庭番の倉地政之助もここからの登場だ。

風見藩には男は城を左回りに、女は城を右回りに回るという習わしがあった。そんなこととはつゆ知らず、城を右回りに回って歩いていた一八は、すぐに余所者と知れてしまうのだ。
この他にも藩独特の習わしがあり、武士は手ぬぐいで頬かむりをしてはいけないとか、武家の家長と長男は囲碁将棋を覚えてはいけないとか、とかく風変わりな習わしのある藩なのだが、誰もそれに不平を言うことなく、殿様の決めたことだからとのんびりとした風情で守っているところが面白い。

ストーリーの進行役である一八は、風見藩で飛旗数馬に出会う。
数馬は武士であるが家を継がない次男坊、いわゆる冷飯食いの身。同じく冷飯食い仲間が登場するが、それぞれに自分の身分を嘆くでもなく、それこそ風流に生きていこうとする姿がある。
藩が貧しくとも、身分が冷飯食いであっても、現実を在りのまま受け入れて、なおかつ飄々とした軽やかさを失わず生きる姿は、退屈姫君シリーズに登場する人々の中にも、一貫して貫かれている姿であるように思う。
文体も柔らかく、語り口ものんびりとユーモラスであるが、楽しく読み終わってそれだけでない何かが残るのは、作品の中に柔軟だけれど人生を楽しんで生きようとする、人々の意志のようなものが感じられるからだろうか。

物語は藩が将棋所を新設するという話が出る件から、冷飯食い達を巻き込んでの大騒動へと発展。将棋が得意な美少年武士の榊原琢磨が登場したりと、目を離せぬ展開が待っている。

第十一代将軍徳川家治との将棋対決の場面も引き込まれる。
将軍に勝つとは恐れ多い、しかしこの一局には藩のある命題がかかっているのだ。勝つも負けるもならない勝負、どうするのか。
この手があったのか、と思わず納得の一手を最後に用意しているあたり、将棋に造詣が深い著者の神の手が見えるような鮮やかさだ。

解説は大崎善生氏が書いている。
現在作家である大崎氏は以前、雑誌『将棋世界』の編集者でもあった人だ。『将棋世界』は一時期読んでいた雑誌でもある。自分の中では天才棋士村山聖を描いた本の著者というイメージのほうが強いが。
あとがきでは著者の将棋に関する知識の深さを、エピソードを交えて紹介している。
退屈姫君シリーズでも随所に将棋の場面が登場するが、読んでいてなかなか面白い。かといって、将棋を知らなくてもこの小説の面白さを味わうにはなんの支障もない。
あとひとつ、けっこう色っぽい描写もあるのだけれど、湿度感のないからっとした軽妙さ故に、時に笑ってしまうことさえあるくらいだ。
とにかく面白くて、米村圭伍はいまお気に入りの作家なのだ。

退屈姫君シリーズは残り2冊も読了済なので、またいずれ順に感想を書いてみたいと思う。
| 米村圭伍 | 22:10 | comments(4) | trackbacks(3) | | |

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♯ コメント

こんばんわ〜。
年末におっしゃっていた退屈姫君シリーズですね♪
「現実を在りのまま受け入れて、なおかつ飄々とした軽やかさを失わず生きる姿」
島本理生さんが、困難な現実に立ち向かうのに必要なことは笑いだといったようなことを書いていましたが、米村圭伍さんのこの姿勢ってそれに通じるものがあるのかなって。
もちろん、そういったことをレビューで掬い取ってしまう雪芽さんのおかげで、そんな風に思うことができるのだけど。

それにしても、最近、時代小説とはとんと離れていたから、少しあの感覚が懐かしくなりました(笑)。
芥川賞・直木賞と盛り上がり、風邪引いてしまうしまつで(爆)。
って、風邪は自己責任ですけれど。

そうそう。東京では5年ぶりに雪が降りました。
久々の白い景色に感動しつつ、寒さに震えてます(笑)
雪芽さんもお風邪にはお気をつけて下さいね
| littleapple | 2006/01/21 11:32 PM |
littleappleさん、こんにちは!

米村さんの作風がもつのほほんさにハマってしまい、ハマるとガーっとその方の本を読みたくなるもので、米村さんには楽しませて頂いてます。
でも、ガーっといきたい作家さんがたくさんいて、どこへガーっといったらいいものやら目移りが激しいのも現実。
いま時代小説でご紹介したいのが飯嶋和一さんの本ですが、密度の濃い小説世界で、腰を据えて再読してからでないと感想は書けないなと思っているところです。

お名前があがった島本理生さんの「ナラタージュ」が気になっています。まだ未読。でも単行本。でも読みたい。

今年は寒いですものね、注意はしているつもりでも風邪を引いてしまうことは多々ありますよね。
すっきり爽快な気分で読書できるよう、一日も早い快復をお祈りしてますよ。栄養、睡眠たっぷり取って下さいね。

人に言うばかりでなく私も風邪に気をつけなくてはですね。
| 雪芽 | 2006/01/22 2:38 PM |
こんばんは!
雪芽さんの記事をきっかけに読んでみようと思い立った作家さんでした。
たまたま『退屈姫君伝』は図書館になくて、この本を借りてきたのですが、結果的に良かったみたいですね♪
次の『退屈姫君伝』にも繋がっているんですねo(^-^)oくぅぅ〜楽しみです!
| エビノート | 2007/02/02 8:46 PM |
エピノートさん、こんばんは!
お返事遅くなりました。
おお、読むきっかけにして頂いたなんて嬉しいです。
退屈姫君シリーズも読み出すとハマるんですよ。
みんなどこか変で(笑)
エピノートさんの感想が楽しみです。
| 雪芽 | 2007/02/07 9:03 PM |

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