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*「白鳥異伝」

白鳥異伝 上  白鳥異伝 下
荻原 規子

二人でひとつであるかのようにして、三野の里で一緒に育った遠子<トオコ>と小倶那<オグナ>
遠子は遠い上代(カミヨ)に輝の末子に嫁いだ水の乙女と同じ、闇の一族の一系に繋がる血を受け継ぐ橘の姫であり、小倶那は母真刀野が川で拾った養い子だった。
都から輝の大王の命を受けて三野を訪れた大碓皇子との出会いは、遠子と小倶那の運命を大きく変えていく。
都へ向う小倶那に遠子は言う。

小倶那にもう一度会えるときまで、お宮になんか行かない、女になんか絶対にならないわ。ここでずっと待っているから、帰ってきて

離れ離れになり、互いの血に流れる定めに、思いもよらないところへ運ばれていく二人の運命がいき着く先を、最後まで固唾を飲みながら読んだ。
子どもの頃からずっと小倶那の庇護者のような感覚で自分を見ていた遠子の幼い母性が、再び小倶那と出会って肉体的にも感情面でも大人の恋愛感情へ変化していく場面は、三野の別れの時の遠子の言葉がとても活きている。
小倶那という鏡を前に映し出される遠子の心の揺らぎ、一途な情熱、少女から大人の女性へと成長する姿が色鮮やかだ。
遠子を妻にと乞いながら、男女のことに無垢であるのかと思わせた小倶那がみせる男の一面も、二人の関係がもはや子どものそれでないことをさりげなく描いてみせたりする。

タケルとなり底知れない力を持つ者となる小倶那の性格付けにある強い忍耐力は、『空色勾玉』の稚羽矢が持つ不死の力がもたらす苦痛を耐える力と同様、強大な力を持つ運命にある者に共通に付与されるものであるようだ。
狭也も遠子も物語の主人公である少女達は、闊達に活き々々と運命を突き進み、稚羽矢や小倶那は力の重さを耐えながら運命を受け入れ、一方天然系キャラな部分を垣間見せる。

小倶那は重い枷を負ったキャラである。
それとは対照的な男性キャラが玉造りの末である菅流<スガル>
口は軽い、女にも軽い、飄々として掴みどころがないようでいて、実はすごいといった一面も持ち合わせている。それに口とはうらはらにけっこう人の良さもみせて、登場人物の中では好きキャラの一人でもある。
嬰(ミドリ)・生(キ)・暗(クロ)・顕(シロ)の四つの勾玉を集め、何者にも死をもたらす<玉の御統(ミスマル)>を統べる者となりタケルを討つことを心に固く誓う遠子と、玉の所有を巡って対立することにもなる菅流だが、大事な時には菅流がいるといったふうに、影のヒーロー的役どころだ。

タケルを討つのは自分でなければと遠子に思わせたのは何か。
自分を討つのは遠子でなければとタケルに思わせたのは何か。

この物語は二人の強い結びつきと想いが一本太い線となって通っていて、『空色勾玉』よりも恋愛要素が強いように思う。
そこへヤマトタケル伝説を土台に、朝廷の地方制圧、母の過度な愛情の妄執など、ほんとうにわくわくする展開だ。

五つを集めればなにものにもよみがえりをもたらす、といわれる五つ目の幽(アオ)の玉の存在。
この最後の玉だけは見つけることができずにいる遠子だったが、<水の乙女>と<風の若子>が出会い結ばれたことそれが、過去の行いは未来へ繋がっているのだというラストだった。
現在が希望へ繋がるのか、災禍へと繋がるのか、できれば希望への種を蒔いていると願いたいものだけど、どうでしょう。

物語に登場する玉ついて、記憶に引っ掛かるものがあったのでちょっと調べてみた。
奈良県天理市に石上神宮(イソノカミジングウ)がある。
物部氏に伝わる「十種の神宝(トクサノカンダカラ)」がこの神宮に祀られているのだが、その中に生玉(イクタマ)、死返玉(マカルカエシノタマ)、足玉(タルタマ)、道返玉(チカエシノタマ)というのがある。
死返玉は文字通り死者を甦らせる力を持つもの。この玉が幽色をしている、ということはまずないだろうけど。何かで見た記憶では勾玉の形でなく、丸い玉だったようにも思うのだけど、ちょっと定かではない。
死者の甦りを願う思いは、古今東西変わらぬ人間の願いのようだ。
| 荻原規子 | 15:08 | comments(5) | trackbacks(2) | | |

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♯ コメント

こちらは、お久しぶりです。今年もたまにお邪魔します。
雪芽さんのアップ待っていましたよ。
「白鳥異伝」はもう11月頃読んだから記憶が曖昧だけど、この作品とっても大好きです。なんかこの作品「映画化」とか「アニメ化」とかして欲しいなぁって凄く思うんですよ。
遠子はどんな女優さんにしようかとか、小倶那はどの俳優さんがいいかなぁ〜って考えてるだけでワクワクしてしまいます。
(まあ、小倶那には愛しい人にしてもらいたいけどね!)
この作品の影響で勾玉にハマり、通販で買ってしまうほどしばらく作品に浸っていました。
燃えるような愛のかたちもあれば、小倶那やタケルのように「見守る愛」のかたちがとても好きです。気がつけばいつも側にいてくれる人が「運命の人」なのかも知れません。そんな人と巡りあえるといいですよね。
そうそう、この作品のおかげで「古事記」も読み返しましたよ。
改めて日本の神話の面白さを再認識させてもらいました。
| らん | 2006/01/15 10:31 PM |
こんにちは、TBありがとうございます。

この本は、主役も脇役も活き活きと描かれていて、大好きな物語です。

私も菅流は大好きです。
彼のおかげで、遠子や小倶那だけでなく、読み手も彼のペースに
巻き込まれてしまうような気がしました。

この本は、日本の誇るファンタジーの傑作だと思います。

それでは、またお邪魔させていただきます。
よろしくお願いします。
| 空穂 | 2006/01/15 10:51 PM |
らんさん、こんばんは。
今年もお付き合いよろしくお願いしますね。
本のことも含め熱く語り合いましょう!

私も読んだのは去年。
記憶がおぼろ、と思ったけど感想を書いていくうちに、
遠子や小倶那といった登場人物が鮮やかに甦ってきました。
脇も含め出てくるキャラが魅力的だし、ストーリーに
躍動感があってほんと読んでいてわくわくしちゃう。
確かに映像化するにはもってこいのお話かも。
貴種流離譚にラブストーリーですものね。
特撮風でなく、「ロード・オブ・ザ・リング」のように、
本物志向でならば観てみたいな。

勾玉について調べていると面白くて、
どんどん横道に逸れていってしまう。
おお、「古事記」読み返したのですか!!さすが〜
神話って面白いんですよね。
私も今年は「古事記」と「出雲国風土記」を読みたいと、
これは一応目標です。


空穂さん
コメントありがとうございます。
古代日本とファンタジーの結びつきが、
こんな素晴らしい物語になるんですね。

「白鳥異伝」について書かれているブログを探して
空穂さんのブログに出会えたのはラッキーでした。
しかも大好きな鉱石のレビューまである。
鉱石写真の美しさにもうっとりでした。
ハインラインもお好きなんですね。
私も好きなSF作家の一人なので、ここにも偶然が重なっている。
嬉しくてリンクに入れさせて頂きました。
また遊びにお邪魔しますね。
| 雪芽 | 2006/01/16 8:58 PM |
雪芽さん、こんばんわ〜
お待ちしてました!
ものすご〜〜〜く嬉しいのは気のせいでしょうか(笑)
O(≧▽≦)O ワーイ♪

早速、自分もこの作品のレビューをUP&TBさせて
いただきますのでよろしくお願いしま〜す。
それにしても。
昨年から、読み返してレビューをお書きになるっておっしゃっていたのが、拝見してすごくよくわかりました。
お調べになったのですね。
一冊の本から、新たな文献を紐解く。
その熱意と探究心に頭が下がります。
以前にお話したことがあるかも知れませんが、
古事記関連は一時期、ものすごく興味があったんです。
でも、それよりもすさまじいこの忘却能力(爆)。
そんな自分でも、雪芽さんのおかげで、物語や読んだときのわくわく感が蘇ってきました。
(o ̄∇ ̄o)ヘヘッ♪
なんだか、今日は良い夢をみることが出来そうです★
| littelapple | 2006/01/16 10:40 PM |
littleappleさんのブログにいまお邪魔してきました。
なかなか帰ってこれなかった、その理由は…

こちらからもTBさせて頂きました。
いま『薄紅天女』を読んでいます。
勾玉3部作の最後、読み終わるのがもったいなくて。

石上神宮のことは歴史読本の特集本か、
学研シリーズで昔読んだように思うんです。
記憶のしっぽさえ捕まえれば、目の前に便利な物がある。
いまは便利ですね。
寄り道好きな性格なのかもしれません。
それで迷子になっちゃうの(笑)

同じです、古事記関連はすごく興味があって、
関連書とかちょこちょこ。
でも、興味が他に移るとあっさり忘れるタイプです^^;
いまはまた懐かしい景色に立ち戻って、
興味を新たにしているといった状態でしょうか。

昨日は良い夢がみれましたか?
今日も幸せな夢の訪れがありますように。
| 雪芽 | 2006/01/18 9:19 PM |

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