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*「ぬしさまへ」 畠中 恵

闇といえるものがまだ確かに存在した頃の日本は、怖いような、どこかしら親しみを覚えるような妖達が息づく空間でもあった。もしかするといまも日本人の心性奥深くには、闇を求める気持ちがあるのか、京極夏彦の登場、畠中恵の「しゃばけ」シリーズと、妖達はしっかり現代でも自分達の居場所をみつけているようだ。
外で食事をした昨日、日本の闇や妖達を話の種に友人とのお喋りは尽きなかった。怖さより勝って、時に愉快な心持ちにさせる妖達の一面を際立たせて物語を紡ぎ出しているのが、畠中恵のこのシリーズではないだろうか。

「ぬしさまへ」は江戸の大店廻船問屋長崎屋の若だんな一太郎と、本性は妖である手代の佐助と仁吉、この3人に加えて「しゃばけ」からお馴染の面々が顔を揃えるシリーズ第二弾。
二作目ともなるとすんなりとその世界観へ入っていけるので、シリーズものはそんな気安さも嬉しい。
違うところといえば、「しゃばけ」が長編であったのに対し、6篇の作品を収めた短編集であるということだ。
一太郎はもとより、幼馴染の栄吉、腹違いの兄松之助、手代の妖仁吉といった脇役達の、いわばサイドストーリーが描かれている。
「しゃばけ」も面白かった。長編と短篇という違いもあるのでどちらがとはいえないが、人の世の人情の機微を描いてせつない「ぬしさまへ」もかなり面白く読んだ。随所に感涙中枢を突いてくるような描写や文章に出会う。心情的にほろりとさせられる。軽妙だが落としどころも心得ているところが心憎いばかりだ。

表題作の「ぬしさまへ」はいつの間にか心に鬼を飼ってしまった女の話。
一太郎は自分の恵まれた境遇を重々承知している。同じ冬の風も同じに吹かないのもわかっている。それでも病気がちな我が身、なにをか思わないわけではない。が、己自身を憐れむことなく、なんとかすくっとひとり立っていこうとする心意気がいつも清々しい。

一太郎の母違いの兄松之助を語る「空のビードロ」は、収録された6篇の中でもとりわけ印象深く残っている。
松之助が井戸端で根付けの青いビードロを天にかざす場面の描写は、何度となく読み返したくなる。

「なんて……ただきれいなんだ」

松之助を包む清浄とした青の世界。
病身の己に甘んじない一太郎もだけど、辛い境遇を生きながらまっとうな心根を失わない松之助もまた、シリーズ中気になる存在になりそうだ。

「仁吉の思い人」はめっぽう色男で、思いを寄せられること数多な仁吉の恋話。ラストの意外な結末もお楽しみのひとつ。

他の短篇もそれぞれに趣向を凝らした面白さを味わえる。
シリーズとしては続編があと2冊出ているのだけど、文庫化まで待てるか。真冬の図書館への道は遠いしなと、ぬくぬくした部屋の中で思案の最中。
| 畠中恵 | 22:55 | comments(10) | trackbacks(5) | | |

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♯ コメント

雪芽さん こんにちは〜

やっと、来ました。(笑)
「しゃばけ」の方に書こうと思っていたらもう「ぬしさまへ」が!
「しゃばけ」とても面白かったです。久し振りに読んでいて
面白い本に出会った気がします。
手代の妖ふたりと一太郎の関係、無条件に相手を大切に思い、守る、でもけしてべたべたしている愛情ではない、そういう関係、好きなんです。
鳴家が出てくるところで、なぜかハリポタのドビーを思い出してしまった。

「ぬしさまへ」昨日借りてきました。まだ2冊シリーズがあるのですか。あわてて調べたら貸し出し中でした。予約しなくちゃ。
楽しみが増えました。出会わせてくれてありがとうです。
| りょう | 2006/02/09 11:35 AM |
りょうさん、こんばんは〜
お待ちしてましたよ!
手代の妖ふたり、とってもいいですよね。
脇役のキャラクターが生き生き動いていると、
小説の持つ世界観が俄然面白くなります。
鳴家がハリポタの、ああ、そんな感じですね(笑)
「ぬしさまへ」も借りてあるんですか?
読んだらまたりょうさんの感想も聞かせて下さいね!

私も市の図書館の蔵書検索してみました。
「しゃばけ」シリーズは貸出中だけど、
他のはあるようなので、頑張って借りに行ってみようかなって思ってます。
| 雪芽 | 2006/02/09 8:53 PM |
>軽妙だが落としどころも心得ているところが心憎いばかりだ。
ほんとそうです!ほろりとさせられたり、あたたかな気持にさせられたり上手いですよね。
それにしてもこの妖たち、怖くないですよね。
表紙のイラストを見てるからかもしれませんが、
幽霊は怖くても妖怪というと身近に感じてしまう下地が私たちの中にあるんでしょうか。
たとえば「家守綺譚」を普通にとらえられるような。
| june | 2006/12/26 10:29 PM |
juneさん、こんばんは。
そういえば怖くないですね、妖怪たち。
しゃばけシリーズに出てくる妖怪って、
ふつうに身近な存在と思えるんです。
ひょいと出てこられても、あら、いたんだ〜、
ですんじゃいそう。
「家守綺譚」の世界もすんなり入り込めましたね。
川上さんの話にも不思議なイキモノが出てくるし、
本の中ではすっかり妖怪、怪異に慣れてしまいました(笑)
妖怪は私たちの想像の世界から生み出されたものだけど、
幽霊は外から攻めて(?)くるから怖いです、汗
| 雪芽 | 2006/12/28 9:33 PM |
こんにちは。
こちらの記事にTBさせていただきました。
若だんなの成長ぶりに、
読んでいてとても勇気づけられます。
松之助も絶対幸せを掴みとってほしい!!
私も感涙中枢刺激されまくりでした…
そしてそして、根付を月にかざすシーン、
あそこはあまりの情景の美しさにただただ感動。
しばし時を忘れてしまいました。
| Rutile | 2007/01/12 5:55 PM |
こんばんは、Rutileさん。
このシリーズに出てくる人たちには、
みんな幸せになって欲しいなって思わずにいられません。
つい最近読んだ『おまけのこ』の栄吉がこれまたよかった。
若だんな、松之助、栄吉、それぞれに、
思い悩みながら成長していっている姿を追うのも、
楽しみのひとつです。

根付けをかざす情景の美しさには息を呑みますね。
しゃばけシリーズは、読む度にじわんときてしまいます。
人情話っていいもんですね。
| 雪芽 | 2007/01/16 9:25 PM |
こんばんわ。TBさせていただきました。
「空のビードロ」は私も印象に残っています。
本当に素敵で感動的な作品でした。
やっとお兄さんに会えてよかったね、と思いました^^
一太郎は素直で優しい人ですよね。
| 苗坊 | 2008/10/25 11:55 PM |
苗坊さん、こんばんは。お返事遅くなりました。
「空のビードロ」の青は、松之助の寂しい気持ちであったり、真っ直ぐに生きていこうとする気持ちであったり、一太郎の兄を思う気持ちであったり、兄弟の思いを様々に映していたようでした。
一太郎の健気で真っ直ぐな優しさに、いつもほろりとなります。
よい作品ですよね。
| 雪芽 | 2008/11/08 9:55 PM |
こんばんは。
TBありがとうございました。
一太郎の兄松之助を描いた
「空のビードロ」は胸にきゅんと来ました。
松之助自身も一太郎に会えて救われた、
という思いがせつなかったです。
| 藍色 | 2009/09/18 2:12 AM |
藍色さん、こんにちは。
一生懸命真面目に生きていこうと思っていても、ふと暗い感情が気持ちに色注す時があろうかと思います。
松之助の心に湧いた暗雲を振り払ってくれたのが一太郎でしたね。出会えてよかった。
澄んだ空の青さ、根付の青、せつなくも沁みる話でした。
| 雪芽 | 2009/09/27 4:06 PM |

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「ぬしさまへ」畠中恵
ぬしさまへ おもしろかったです!「しゃばけ」もよかったけれど、短編集になっているこちらもテンポがよくってよかったです。1話にからめたサイドストーリーとか、妖の人間性(?)も垣間見られたりして、より世界が広がっています。3作目も早く借りてこなくちゃ!
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