本や映画の感想、日々の雑感などを徒然に書いております
ネタバレもあるので未読の方はご注意ください
<< July 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
RECOMMEND

 極北ラプソディ 

  
読んだり観たり
雪芽さんの読書メーター 雪芽の最近読んだ本 雪芽さんの鑑賞メーター 雪芽の最近観たビデオ
読みたい!聴きたい♪
Blog散歩道
今年読んだ本
将棋○名人戦・順位戦●
≡ SPONSORED ≡
<< 「のだめカンタービレ」 | main | 桜雪 其の二 >>

*スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - | | |

*桜雪 其の一

弥生三月という暦の言葉に似つかわしくなく、北の国はまだ雪の花が舞っているが、少し先の春を思い、桜にまつわる物語を取り上げてみたい。
一冊の本の感想という枠をはみ出して、桜への想いが結ぶいくつかの物語、以前お知らせした本の耳がこれ。

「恐ろしい場所」 吉行淳之介

ふわりと大きなぼたん雪が落ちてくる。綿毛のようであり、冷たいはずの雪なのに、その様子からは温もりを想像してしまう。
雪のひとひらひとひらと、宙にふいと現れるのを目で捕らえては一緒になって落ちていく、そんなことを飽きもせず繰り返す自分がいる。
冬の終わりの雪はその先に薄紅色が透けて視えるようでもある。海に浮ぶ三日月のような花綵(かさい)列島を、桜花の波が北へ向い寄せてくる。雪のひとひらは花のひとひらとなり、風に舞い、舞い落ち、やがて地を薄紅に染めていくだろう。
淡い色に花弁を染めるソメイヨシノを、たとえて気体といったのは吉行淳之介だった。
これは「恐ろしい場所」という話の中に出てくる。桜でも八重桜は液体だという。確かに、天に向って放射状に突き出した枝振りや、花弁の濃密さは幾分重量を感じさせる。
気体、液体とくれば次にくるのは当然固体となる。彼は紅梅に固体を感じるといっている。やはり桜は固体というより、流体的な、おぼろなものを想像させる花なのだろうか。

桜のいまを盛りと満開に咲きつつ花びらを散らしていく様は、生きながら死に、死にながら生きる、命あるものすべての姿でもある。
薄紅に染まる桜の色は花弁にだけあるのではない。
知っているだろうか、桜を草木染めいに使う時、染めの原料となるのは花びらではなく幹のほうであることを。花の咲く頃になると木は全体が紅に染まるという。その樹皮を使う。大岡信の「ことばの力」の中で、ある染色家の話として紹介されていた。これを知った時、何故かしらゾクリとするものを感じたのを覚えている。

全身全霊をかけて咲く桜木の、目に映る色となって表れたのが花であり、花びらの一枚一枚は血の滴りであるような気さえする。
美しいばかりではない。妖しさと恐さも合わせ持つのが桜ではないかという気がしている。
| 本の耳 | 21:37 | comments(0) | trackbacks(0) | | |

*スポンサーサイト

| - | 21:37 | - | - | | |

♯ コメント

♯ コメントする









コメントをプレビューする?
ご利用のブラウザ、設定ではご利用になれません。


♯ この記事のトラックバックURL

♯ トラックバック

ABOUT
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
TRACKBACK
ありがとうございます
COMMENTS
ありがとうございます
LINKS
MOBILE
qrcode
OTHERS