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*桜雪 其の二

「桜の樹の下には」 梶井基次郎

桜の樹の下には屍体(したい)が埋まっている!
これは信じていいことなんだよ。


梶井基次郎の「桜の樹の下には」という短篇はこのような出だしで始まる。
あまりに生き生きとした桜の美しさに不安を感じる作者の脳裏に、ひとつの想像が浮ぶ。腐乱し蛆が湧き異臭さえ放つ屍体から水晶のような液体を吸い上げ花咲くというその描写は、桜のもつ妖しさを、その美しさの奥にある冷酷なまでの条理を感じさせる。多くの屍の上に成り立つ私たちの生命の理である。
作者の脳裏に浮ぶ屍体はどこからきたのか。その二、三日前、渓で目にした薄羽かげろうの結婚と無数の屍体が呼び寄せた想像なのか。
生と死の対象形。グロテスクな屍体と美しい花の対比。でもここにあるのは相反するものの対立ではなく、ふたつにしてひとつであるということの意味。
ひとつの生命のために絶たれる多くの生命があり、無数の命を負って生きていることへの畏怖を感じずにはいられない。

梶井基次郎の短篇はどれも強烈なイメージを持つ。
「Kの昇天」も好きな作品のひとつだけど、今回の流れにはそぐわないのでまたいずれ書くとして、強烈なイメージが他者へ与えた影、別の作品の中に落ちる影を少し追ってみよう。

前に恩田陸の「図書室の海」でも触れたが、この短編集に収められた「睡蓮」がそれだ。
短篇の冒頭は<桜の木の下には死体が埋まってるっていうだろう?>とこう始まる。この短篇において、桜と同様なイメージ性を持つのが睡蓮だった。ただ梶井基次郎と違うのは、睡蓮の下に埋まっているのがきれいな女の子という点だ。
桜の樹の下には屍体が埋まっている、という言葉から呼び起こされたイメージながら、睡蓮の対となるものが何故もっとグロテスクなものにならなかったのか。これは作中の登場人物稔が、『汚い女の子』が大嫌いだということが大きく影響しているようだ。
小川洋子ならグロテスクでかつ美しいモノを描くかもしれないと思った。

成田美名子の漫画「エイリアン通り(ストリート)」にも、桜の樹の下に埋まる死体というイメージが登場したシーンがあった。
ビバリーヒルズの豪邸に住む、容姿端麗で、天才的頭脳の持ち主、アラブの石油王の息子であるシャールと、彼を取り巻く人々が織り成す超人気漫画だ。

<桜の樹の下には屍体(したい)が埋まっている!>
ひとりの作家が呼び起こしたイメージを、別などこかでみつけるのも楽しい。

桜に係る物語についての「桜雪」は最後の其の三へ続く。
| 本の耳 | 00:30 | comments(2) | trackbacks(0) | | |

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♯ コメント

こんにちは。
私は「桜」と聞くと、真っ先にこの作品が思い浮かびます。
桜の持つ凄絶なまでの美しさと、そこに掻きたてられる不安感、
さらには命の連環までも端的にあらわしていると思います。
まだまだ寒い日が続きますが、桜の季節が待ち遠しいです。
| 空穂 | 2006/03/04 12:21 AM |
空穂さん、こんばんは!
桜が登場する物語は多いですけど、私もやはり真っ先に浮ぶのはこの作品なんです。

北海道のお花見シーズンは本州より遅れて5月。
札幌だとだいたいGWの頃です。
桜が咲いたとはいえまだ寒いこともしばしば。
だからなのか、花の下ではジンギスカンを食べながらの宴会が多くて、桜もさぞや煙かろうと思います^^;
| 雪芽 | 2006/03/04 10:58 PM |

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