本や映画の感想、日々の雑感などを徒然に書いております
ネタバレもあるので未読の方はご注意ください
<< June 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
RECOMMEND

 極北ラプソディ 

  
読んだり観たり
雪芽さんの読書メーター 雪芽の最近読んだ本 雪芽さんの鑑賞メーター 雪芽の最近観たビデオ
読みたい!聴きたい♪
Blog散歩道
今年読んだ本
将棋○名人戦・順位戦●
≡ SPONSORED ≡
<< 「闇の左手」 | main | 「ねこのばば」 >>

*スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - | | |

*「ナラタージュ」

ナラタージュ
島本 理生
静かに切なさが注がれていく。注がれた切なさが満ちていく。満ちた切なさが激しく波打つ。想いを寄せ合うふたりが選んだ結末とは。繰り返し甦る愛の記憶と痛みの中で続く、終わらないラブストーリー。

島本作品は「リトル・バイ・リトル」に次いで2作目。
この人の文章は読んでいて、違和感なくすとんと心の内に落ちてくるので心地良い。
ここでも主人公は淡々とした第三者的視点を持つ。そこに冷たい感触はなくて、だからといって温かいわけではないが、まるで繊細な観察者といったものを主人公の言葉から感じる。痛みの痛点を鈍くするための自己防衛でもあるのか。物語の場の空気に淡く潜む切ない匂い。が、誰だって心が波立つことはあるものだ。心情が表に激しく吐露される時、彼女の想いが、そこにある哀しさや切なさがより強い印象で顔を覗かせる。
主人公は国文学を専攻する大学2年生の工藤泉。父のドイツへの転勤で一人暮らしを始めたばかりだった。そんな折、彼女の携帯に高校時代の教師、葉山先生から電話が掛かってくる。葉山は泉が籍を置いていた演劇部の顧問だった。
繋がった1本の電話。泉と葉山を再び繋げる電話でもあった。
部員数が激減した演劇部の現役部員3人と、元部員の泉、志緒、志緒の恋人でもある黒川、黒川と同じ大学の小野たち7名は、学校内での劇の発表に向けてともに稽古を重ねていくことになるのだった。

まずこの物語の中心となるのが泉と葉山先生の関係。
が、こちらは置いといて(笑)、小野玲二。彼は黒川に誘われて参加したわけだが、健全で感じの良い青年小野は泉に恋心を抱くようになる。
感じのよい青年の像を背負っていた小野は、泉との付き合いの過程で変貌していく。人を愛することで表に出てくる嫉妬だったり、束縛だったり。不安によって無防備に内面が露出する。それが恋愛の一面であることを思えば、これから先小野君にもよい恋が訪れるといいのにね、とおっせかいなことを考えてしまった。

葉山先生ずるいよ、と思う。
もうしょうもない男だな。誰よりも泉を気にかけて、何もしてあげられないと言いながらふいに一歩踏み込んでくる。気づけば頼りたくなる相手であるのに、子供のように無邪気で心もとないと感じることもあったり。でも、眼鏡を掛けた男は好きだしなぁ、とか思ったりしながら葉山先生のずるさにもちょっと甘くなる。
後半、病院で互いに振り返った泉と葉山先生が一瞬視線を交わす場面がある。
二、三秒の間。それだけで充分だった。何度も押し止めようとした気持ちは、押さえようもなく動き出す。
どうしてこうも惹かれてしまうのか、この描写を読んだ時、理性とは別のところで納得できた。もう止められない。
ここから最後の一行までは、ただただ夢中で読んだ。
離れようとして何度も引き合う魂。
最後に泉が感じた幸福感と呼び起こされる記憶が生み出す痛みに、本を閉じた後もじんわりと心が揺さぶられるようだった。

島本理生はまだとても若い作家で作品の数も余り多くないが、残りの作品も全部読んでみたい。これからどんな小説を書いていくのか注目の作家だと思った。
| 島本理生 | 01:17 | comments(13) | trackbacks(6) | | |

*スポンサーサイト

| - | 01:17 | - | - | | |

♯ コメント

雪芽さん、こんばんわ。
雪芽さんの記事を読んで、あの世界を再び思い出してじーんとしてしまいました。
小野くんの変貌は、痛々しかったですよね。ほんと彼の幸せを祈りたくなります。
そして私も眼鏡をかけた男の人って好きなんです・・。葉山先生のずるさは許せないんだけど、そういう人にどうしてもひかれてしまうっていうのもわかって、読みながら思い切り揺さぶられました。
| june | 2006/03/12 9:09 PM |
juneさん、こんばんは。
久々に切なさと幸福感の交錯する恋愛小説を読んで、たまにはこういうのもいいかも、って思ってしまいましたよ〜
物語の視点は泉だけど、葉山先生になったり、小野君になったり、泉の婚約者になったり、いろんな登場人物の視点で読んでました。
そういえばこいつだけは理解出来ないと思った人がいなかったなぁ。
一緒に人生を歩いてはいけないけど、心がどうしようもなく相手を求めてしまう葉山先生の気持ち、あることですよね。
だからこそ切なくて、二人の愛が。

juneさんも眼鏡かけた男の人好きですか、ああ、一緒だ!
昔ある人に言ったら、そんな不健康な人が好きなのって返されましたが、そういう問題じゃなくてねぇ^^;
juneさんの感想も読ませて頂きに伺いますね。
| 雪芽 | 2006/03/13 9:06 PM |
雪芽さん、こんばんは。
σ(^^)、めがねかけてます。(^^ゞ
でも会社で周りを見渡すと、眼鏡かけている人間ばかりなんですよ。
一日中パソコンに向かって仕事してますので、皆一様に目が悪い。
好きになってもらえるには、眼鏡も薄くないとなぁ。

「ナラタージュ」、切ないところが何といっても本作品の魅力ですし、読後に後をひく点ですね。
でもストーリィとしては、あまりあって欲しくない恋愛パターンなんですよねぇ。
葉山先生、男性の側からみるともうひとつ男らしくないというか。(^^ゞ
 
| 信兵衛 | 2006/03/13 10:56 PM |
信兵衛さんのお名前の響きが時代小説の登場人物みたいで好きなんです。
最近のお気に入りが退屈姫君やしゃばけなので、なおのことそんなふうに思うのかも。
眼鏡だけではなく、人ってふとしたことに惹かれるものですからね、分厚い眼鏡に惹かれる人だっていますよねきっと(^.^)

小説として読むから切ないな〜で済むけど、こんな恋をしてたら切ないどころじゃないですね。読み手の側でよかったということでしょうか(笑)
男の方からみると葉山先生男らしくないですか、そうでしょうね、女の側からみてもはっきりしないというか。
でもほっておけないと思わせるところが葉山先生なんです。
けっこう危険な男です^^;、危ない危ない。
| 雪芽 | 2006/03/14 11:00 PM |
雪芽さん

こんにちは。ベストブックde幸せ読書!!のやぎっちょです。
今回初めてTBしただけなのに、わざわざコメントまで残しに来てくださってありがとうございました。
雪芽さんは文芸がお好きなんですね。そして「歴史」。歴史は私も好きです。(ただ、昔の本がないのでUPしてないんですけども)

ナラタージュは男の子視点だったので、つかみきれないところもありました。むしろ「なんでこんなハッキリしない男を好きになるんだろー」って?マークが残った。
女心理解できず、、、でした。

ところで、最近の読本はブロガーの人にオススメを聞いて読んでいるのですが、もしよければ雪芽さんの好きな本を2.3冊教えていただけないでしょうか?
それから、リンクをブログの左下に貼らせていただきました。もし不都合があればはずしますのでおっしゃってください。

それでは、これからもちょくちょく遊びに来ます。
では。
| やぎっちょ | 2006/04/02 11:38 PM |
やぎっちょさん、こんばんは!
お越し頂いて嬉しいです。

本はですね、文芸も娯楽物も実用書も学術書も漫画もなんでも読みます。特にこれ!というのはなく、その時の自分の興味の方向に従っての読書です。
自分でもどこへ飛んでいくかわからなくて困ってます^^;
歴史は日本ならば古代、中世、戦国時代。
中国だと古代、三国志の頃とか。
イタリアルネッサンスも一時期ハマってました。
やぎっちょさんのブログでは漫画もたくさん取り上げていらっしゃいましたが、漫画も好きですよ〜

「ナラタージュ」、女心理解できず、、、ですか?
葉山先生は絶対引っ掛かってはいけないタイプだと思いますが、確かにはっきりしないし、どっちなんだよ〜って思うんですが、それでも好きが止められないって気持ちわかります。
ただ女の子視点でも葉山先生は許容外という人もいるとは思います。読者としては自分が痛みを伴わない恋だから、安心して泉の気持ちに乗っかっていけるところもあるのかも。

私の好きな本2,3冊ですか。む、難しい(悩)
少しお時間下さい。たくさんあり過ぎて。

リンクありがとうございます!
私も本好きさんのLinksに入れさせて頂きますね。
| 雪芽 | 2006/04/04 12:37 AM |
雪芽さん

リンクありがとうございます!!
いやー、節操なく何でも読むところが(?!)いいですね!
歴史本とか雪芽さんと同じで、日本史、中国古典、ルネッサンスとむっちゃくちゃはまったんですが、全部2000年以前に読んだので(ちょっと事情がありまして)ブログにUPできないんですよね。(・・・無念)
塩野七生はほとんど全部、中国の古代から三国が終わることまでもほとんど全部読んでるんですけどね〜〜。
日本史なんか、楠木正成の足跡追ってお城とか見に行ったなぁ。
って、そういうのはどうでもいいですよね。まぁ、アレです、アレ。マニア。

>読者としては自分が痛みを伴わない恋だから、
>安心して泉の気持ちに乗っかっていけるところもあるのかも。
な、なるほど。
確かにそういうのはありますね。
映画だって、小説だってよく考えたらみんなそうですもんね。

なにか思い当たるいい本があったら、また教えてくださいね。
それでは!!
| やぎっちょ | 2006/04/04 2:12 PM |
ナラタージュ・・・・・岐阜にあるオカマバー
初めて行ったオカマバーの名前がナラタージュだった。一緒に行った友達にこの本のことを紹介されて
それなりに関係があるのかと思い、そんな感じでこの本を読み始めた。
しかし、内容はまったくの別物。あまり本を読まない私のなかで、こんな熱い恋愛小説は読んでるうちに
恥ずかしさや、恋愛のすばらしさを始めて感じることができた。
かなり印象に残り、オカマバーとの関係は全くないことに気がついた。
この本をいろんな人に紹介したいと思う
| ニシムラマサヒコ | 2006/08/13 2:51 AM |
ニシムラさん、こんにちは。
本との出会いはいろいろおりますが、
名前が取り持つ縁(?)がオカマバーだったとは!
きっかけはなんであれ、印象深い本に出合えるというのは嬉しいですね。
私もこの本はとても印象深く残っています。
| 雪芽 | 2006/08/13 2:33 PM |
雪芽さん

こんにちは。ご無沙汰しています。

ずっと手元にあって、気になっていた作品ですが、今年になってようやく読み終えました。

まだ自分が若くて、恋をしている頃、何に触れても好きな人のことを考えてしまうという知覚過敏のような気持ちを久し振りに味わいました。

ラストの一文が心に残ります。
主人公のモノローグの後、雨の廊下で向き合う二人の姿が、少しずつ遠景となって消えていく。
そんな映画のラストシーンを勝手に想像してしまいました。
| touch3442 | 2008/01/27 12:19 PM |
touch3442 さん、こんばんは。
ご無沙汰しています〜、汗

ずっと手元にあって、気にはなっているけど読まない。
そんな本てあります。
時が来たんですね。

>知覚過敏のような気持ち
ああ、そうですね、感情の揺れが大きくてすべてが一大事なこともありましたねぇ。
どこに忘れてきたんでしょう^^;

ラストがよかったですね。
touch3442 さんが想像された映画のシーン、目に浮ぶようです。
| 雪芽 | 2008/01/28 9:56 PM |
雪芽さん、こんばんは。
人から勧められて、ようやくこの本を読みました。
痛い恋愛の経験が遠のくまで、なかなか手に取りづらくって。
葉山先生はずるいけど、こんな風に誰かを自分の運命に刻み込んでしまったら、仕方がないなぁと思いました。
たった一度の思い出にできてしまう泉の潔さに若さを感じました。
| 香桑 | 2008/09/01 12:05 AM |
香桑さん、こんばんは。
ずるずると引きずってしまうような恋。
周りの時間は動いているのに、心の中では恋しい想いを反芻している。
失った恋の吸引力に、何度も後戻りする。
この物語にはそんな遠い思い出も甦り、かなり揺す振られました。

>誰かを自分の運命に刻み込んでしまったら、仕方がないなぁ
心に刻みたくなる言葉です、いいなぁ。

未来の人生のほうが絶対的に長いと信じられる若さ故の強さ潔さ、途中あんなに苦しい物語を読んだ結末としては、余韻の残るラストが良かったです。
| 雪芽 | 2008/09/02 9:48 PM |

♯ コメントする









コメントをプレビューする?
ご利用のブラウザ、設定ではご利用になれません。


♯ この記事のトラックバックURL

♯ トラックバック

ナラタージュ
ナラタージュ 島本理生 痛かった。読み終わって何だか脱力してしまった。恋愛体質になってしまったような感じすらしてしまう。 帯にある「魂を焼き尽くすほどの恋。封印したはずのあの痛みを、よみがえらせてしまう小説」という小川洋子さんの言葉そのものです。
| 本のある生活 | 2006/03/12 9:04 PM |
ナラタージュ
島本 理生 ナラタージュ 人生タイミングが重要ですねぇ…。 [要旨] 壊れるまでに張りつめた気持ち。ごまかすことも、そらすこともできない―二十歳の恋。これからもずっと同じ痛みを繰り返し、その苦しさと引き換えに帰ることができるのだろう。あの薄
| 乱読日記 | 2006/03/12 9:53 PM |
ナラタージュ 島本理生
ナラタージュ ■やぎっちょ評価コメント 先にblogランキングクリックしてしまってね! 中盤の柚子の話と、クライマックスはとってもうまいです。 が、前半から中盤にかけてが最悪。前と後ろで同じ人が書いたようには思えません。 クライマックスに至るまでの主人公
| "やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書!! | 2006/04/01 6:12 PM |
島本理生の「ナラタージュ」を読んだ!
亡くなった知人のベットの横に置いてあった、購入したばかりの本を譲り受けたのは、昨年の8月の暑い日でした。その本は島本理生の「ナラタージュ」です。どういう気持ちでこの本を購入したのかその理由がわからず、早いうちに読まなくちゃと思いましたが、なかなか読む
| とんとん・にっき | 2007/09/15 8:29 PM |
『ナラタージュ』島本理生著(角川書店)
ナラタージュ  島本理生さんの『リトル・バイ・リトル』を読んで、間もない頃、一昨年の春先にBOOK OFFで見つけて買いました。手元にあって、いつでも読めると思うと逆になかなか読み始められなくて、今頃になって、ようやく読み終えました。  この作品は『
| 生きることにも心急き、感ずることも急がるる… | 2008/01/27 12:11 PM |
ナラタージュ
 島本理生 2008 角川文庫 心の中に聖堂がある。最初に刻み込まれた人を祀る聖
| 香桑の読書室 | 2008/08/31 11:53 PM |
ABOUT
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
TRACKBACK
ありがとうございます
COMMENTS
ありがとうございます
LINKS
MOBILE
qrcode
OTHERS