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*「儚い羊たちの祝宴」 米澤穂信《古典部シリーズ》、《小市民シリーズ》といった日常にある謎を解くのとはまったく趣向が異なるこのブラックな風味、嫌いじゃない。 いつもは始めになんとはなしにパラ見するのだけど(内容を読むのではなく項を埋める文章の視覚的感覚を確認するために)、帯にある「ラスト一行の衝撃」が万が一にも損なわれるのを惜しんで、真面目に一頁の一行目から順を追って読んだ。 ミステリの醍醐味と言えば、終盤のどんでん返し。中でも、「最後の一撃」と呼ばれる、ラストで鮮やかに真相を引っ繰り返す技は、短編の華であり至芸でもある。本書は、更にその上をいく、「ラスト一行の衝撃」に徹底的にこだわった連作集。古今東西、短編集は数あれど、収録作すべてがラスト一行で落ちるミステリは本書だけ。 *映画「パフューム」
悪臭に満ちた18世紀のパリ。類まれなる嗅覚を持つ孤児グルヌイユは香水調合師となるが、究極の香りを捉えたいという激しい欲求は彼を恐ろしい行動へと駆り立てていく。 香りに魅せられ、香りに囚われ、香りに生きた男の数奇な運命。 食前食中食後の服用、もとい、観賞はお薦めできない。 映像に匂いや香りが満ちている。嗅覚を視覚的にどう表現するのだろうと思っていたがなかなか上手い。赤ん坊の指キャッチが何気に怖いワンカット。この映画はゾクゾクと背後から迫る怖さが至るところに潜んでいる。グルヌイユの偏執的なまでの香りへの拘りは、狂気という以上は哀しく禍々しい。 ひとつ疑問に思ったのは彼にとって人の匂い、体臭がその人間の存在証明であるということ。そればかりではないだろうに、香りを追い求めることでしか自己の存在を見い出せなかった男の絶望感はひしひしと伝わってきた。だからといって肯定できるものでもないのだけど。 広場の群集シーンは凄かったなぁ。 もの凄い数の肉団子状態でしたよ。これが噂のか!究極の香水の魔力、もうファンファジーといってもいいかも。怖いおとぎ話を観ているような、奇妙な錯覚を覚える映画だった。 なんだかとっても鼻がピクピクする。 2009年6月26日観る DVD *「神去なあなあ日常」 三浦しをん林業っておもしれ〜!by勇気 主人公勇気が夢中になっていく気持ちがすごくわかる。林業って奥深く面白い!それにもまして神去村の暮らしとそこに住む人たち、もう最高ですよ。 前作『光』のいいようのない重苦しさとは一転、のどかで朗らかな神去村に憩う楽しさ。
*「厭魅の如き憑くもの」 三津田信三ひと口に“怖い”といってもその“怖い”に含まれるコワサの意味合いは千差万別。対象となるものがはっきりしていて、わかったうえでの怖さもあれば、なにか定かでないものの存在に怯える怖さもあろう。
たまねぎさんちのブログ「今更なんですが本の話」で見かけて手にしたこの本は、気配に潜む怖さ、見えないはずのものを目にしてしまう怖さをぞんぶんに味わうことができるホラーミステリーだ。
*映画「めがね」
タエコはどうしてここへやってきたのだろう。 サクラはどうして春になるとかき氷屋を開きにやってくるのだろう。 宿の主・ユージ、高校教師・ハルナ、タエコを先生と呼ぶ青年・ヨモギ。 関係も過去もほとんどみえてこない。 そもそもどうして「めがね」というタイトルなのだろう。 みんなめがねをかけているからなのか。 南の島で黄昏ながら、ゆるゆると過ごす日々。 その日の難逃れには梅、白いご飯、お味噌汁、玉子焼き、鮭。夜空の下のバーベキュー、大きな海老にかぶりつき、サクラさんのかき氷を食べ、青い青い海を前にしてビールを呑む。 何のことはない食事のシーンだけど満ち足りた気分になる。 不思議なのは朝のメルシー体操。なんだか振りがユーモラスで笑ってしまう。 戸惑いから反発。反目から融和。 まどろむようなのんびりした黄昏は永遠には続かない。 旅には終わりがやってくる。 ちょっぴり寂しいけれど、また会える。 思いがあれば、また会える。 ただそれだけといえばそれだけの映画なんだけど、たまには黄昏てみたくもなるもんだ。 脚本・監督:荻上直子 キャスト・小林聡美 市川実日子 加瀬亮 光石 研 もたいまさこ 日本 2007年9月 2009年6月12日観る・DVD *「恋文の技術」 森見登美彦最後に手紙を書いたのはいつだろう。誰に宛てて書いた手紙だったか。 手紙を書くのは好きだった。夥しい数の手紙を書いた。一度に何枚も書いた。時に便箋も封筒も手作り、素材に趣向を凝らしイラストも入れる。熱狂的な手紙の時代だ。“白ヤギさんではないのですから、読まずに書くのはやめてください”、文通武者修行に励む本書の主人公守田の森見氏を叱る言葉が耳に痛い。 どうしてあんなに夢中になったのだろう。 忘れていた手紙の楽しさを思い出させてくれた1冊だ。 そこかしこに炸裂するモリミーワールド的オモチロさも堪能できます。 京都の大学から、遠く離れた実験所に飛ばされた男子大学院生が一人。無聊を慰めるべく、文通武者修行と称して京都に住むかつての仲間たちに手紙を書きまくる。手紙のうえで、友人の恋の相談に乗り、妹に説教を垂れ―。 *「プリンセス・トヨトミ」 万城目 学このことは誰も知らない。五月末日の木曜日、午後四時のことである。大阪が全停止した。長く閉ざされた扉を開ける“鍵”となったのは、東京から来た会計検査院の三人の調査官と、大阪の商店街に生まれ育った二人の少年少女だった―。前代未聞、驚天動地のエンターテインメント、始動。 大阪全停止。ありえないことが起こってしまうのが小説の面白さ。ドミノ倒しのように『合図』が大阪の街を駆け巡る。時代は顔を変え現代に移り変わろうと、脈々と受け継がれてきた意志がある。守ろうとする者たち、隠された事実に真っ向から挑む者たち。赤く燃える大阪城夜の決戦へ向け、新幹線は動き出す。 | 1/1PAGES |
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